見出し画像

イギリス【パーラムハウス&ガーデン】お花と絵画を愉しむ

今年のイースターは、気持ちのいい晴天。3月31日の日曜日でした。こんな日は、野外で過ごそう!
と、わくわくして向かった先は、

パーラムハウス&ガーデンです!


屋敷の中には、ウォールドガーデンから摘んできた花々が活けられている。

このお屋敷とガーデンは、冬の間は閉館。2024年は、イースターサンデーが開館初日でした。今回の記事は、2021年と2023年の夏、2024年イースターに行った時の写真をまじえて美しいガーデンとお屋敷の様子をご紹介します。私のパーラムへの情熱?を感じていただければ、幸いです!


パーラム家により代々受け継がれてきたエリザベス朝の屋敷

茶色の小屋でチケットを買ってから、お屋敷とガーデンのある敷地に入ります。

パーラム・ハウスは、ウェスト・サセックス州の自然豊かな丘陵地帯に位置する。国道から見えるパーラムへの入り口は、よくよく見ていないと気が付かない・・・くらい控えめな小さなサインなのだが、そこから私道に入ってしばらく車で行くと、広大な敷地が出現する。(ダービーシャーのチャッツワースハウスもこんな感じ。)お屋敷とお庭は、イースターから秋ぐらいまで一般公開されている。

屋敷の方から見た景色。私道に入ってから運転してきた敷地の広さがわかるでしょうか?

パーラムの地には、もともとウェストミンスター寺院が管理する修道院があった。ヘンリー8世の宗教改革の時に修道院は解散され、王の家臣であるロバート・パルマーに与えられた。それ以降、パルマー家を含め3つの家系にによって代々受け継がれてきたのが、パーラム・ハウスである。

古くより、イングランドで広大な敷地を持つ領主達は、自分の敷地内に鹿を放し飼いにして狩猟を楽しんでいた。その名残なのか、今でもパーラム・ハウスの周りには1.2km²のディアパークがあり、350頭の暗褐色の鹿(Fallow Dear)の群れが放し飼いにされている。夕方になってひとけがなくなると芝生の広がる丘陵地帯に鹿が出現する。私も今回の訪問で5時の閉館までいて帰る際に、10頭ぐらいの鹿をみかけた。

まずは、お庭を歩いてみましょう。


プレジャー・グラウンドを歩く

さくらんぼの木の下で。2024年4月7日
満開を過ぎた水仙の花が少しだけ咲いています。2024年3月31日 
ブルーベルと水仙の花が咲く。春の訪れ。2024年4月7日

屋敷の入り口から左側に位置するプレジャー・グラウンドのあるエリアは、18世紀に整えられた。自然を生かし、木々や花々が植えられている。

「ヴェロニカの迷路」Veronica's Maze 1991年「Year of the Maze」に整備された。

1900年代初頭にパーラムを購入し、美しい屋敷に再生させた両親の遺志を継ぎ、この屋敷を相続したのは、長女のヴェロニカ。屋敷内が1948年から一般公開されようになると、館内のツアーガイドとして晩年まで活躍。この迷路は、ヴェロニカ・トリットンにちなんで「ヴェロニカの迷路」と名付けられた。

左手にある建物が、カフェとイーティングエリア。右手にある芝生の広がるスペースにもテーブルがありピクニックを楽しめる。
2021年の風景。パイなど軽食が少ない日もあるので、お弁当持参をおすすめします!
カフェに併設されているイーティングエリア。雨の日でも安心してランチが楽しめる。
プレジャー・グラウンドから見たカフェとテーブル席。

池の近くにはテーブル席もあるピクニックエリアがあり、お天気のいい日にはお弁当を持っていこう。(併設のカフェには、サンドイッチ、スコーン、ケーキとコーヒやジュースなどある。)

お庭の一番奥手にあるローマ風の建物、サマーハウス。


ウォールド・ガーデンの中へ行こう

ウォールド・ガーデンの中には、木々もありベンチでくつろげる。

壁に囲まれたお庭の中には、サマーハウスや美しい花々が咲く花壇、果樹園と野菜農園がある。よく手入れがされている素晴らしいガーデンで、季節ごとに違う景色を楽しめる。

1920年代に子供たちのために建てられたウェンディーズハウス。
チューリップの花が満開。2024年3月31日
カラフルなチューリップの花が春の到来を知らせる。2024年3月31日


名画の数々が飾られるエリザベス朝様式の屋敷内

グレイトホールにはチューダ朝の絵画が飾られている。
ガーデンから摘んできた花々のフラワーアレンジメントも必見!


パーラム・ハウスにゆかりのある人々

エリザベス・バーニーの肖像画

この肖像画は、サマセット州フェアフィールド出身のエリザベス・バーニー。ゴッドマザー(洗礼親、代理親)はエリザベス1世という高貴な女性。

ウィリアム・パルマー(ロバート・パルマーの孫)と結婚して、パーラムに住み始めた。当時の建物の様子は不明だが、今とは全く違う建築だったと考えられている。ウィリアムの父トーマスは、その時までにはナイトの栄誉を受けており、1577年代後半に家名にふさわしい新しい家「パーラム・ハウス」の建設に着手。

1577年1月28日、ウィリアムとエリザベスの息子トーマスが2歳半になった時に縁起が良いをされる古い伝統に従って、礎石(そせき)を置いた。残念ながら、エリザベスの義理父トーマスは1582年、新築の家が完成してから4年後の1586年にエリザベスの夫ウィリアム・パルマーは死去。エリザベスは幼い子供と残され未亡人となった。1592年に再婚するが、その後もパーラム・ハウスに住み続けた。


エリザベス1世の肖像画

パーラム・ハウスで代々「エリザベス1世の肖像画」として飾られている絵画。

豪華絢爛な衣装を身にまとう女性。

その華やかさにぱっと目を引くかなり大きな肖像画。

この肖像画の女性は、エリザベス朝の豪華なアクセサリーやドレスからエリザベス1世。または、ジェームズ1世の妻アン・オブ・デンマーク。もしくは、かなり高貴な地位の女性ではないかと言われている。パールでできた王冠、何重にもあるパールのネックレス、黒のダイヤモンドとルビー、パールのついた前見頃(みごろ)など、ここまで豪華な服装ができたのは特別な女性だけと考えられている。袖にある模様は、シルクワーム(お蚕)。

この絵については、近年になってエリザベス1世ではない女性の肖像画の可能性がある。という研究家も現れていて真相ははっきりとしていない。グレイト・ホールにいた学芸員さんとお話しによると、この肖像画は「エリザベス1世の肖像画」として、パーラム・ハウスでは言い伝えられてきた。その理由は、豪華な装飾品とドレス。袖の部分にあるシルクワーム(お蚕)の模様は、エリザベス一世がイングランドで初めてシルクのストッキングを身に着けたとされることにちなんで描かれたのではないか。(当時シルク自体が高級品だった。)手に持つ羽(羽毛でできた扇子)は、処女、純血を意味する。

エリザベス1世は、先述のエリザベス・バーニーのゴッドマザーであり、1593年にこの屋敷から23kmほど離れた場所にあるカウダリーパークに向かう途中、この屋敷に立ち寄り食事をしたとされる。

この絵画は、近くで見るとその衣装の豪華さが改めてよくわかる。パーラムの中で、お気に入りの絵画のひとつ。


ロング・ギャラリーで芸術品を楽しむ

天井のイラストは1960年代に取り付けられたもの。

最上階に位置する「ロング・ギャラリー」は、イングランドにある個人の邸宅の中で3番目に長い部屋といわれる。

その長さは、48メートル!

ジェームズ1世の時代(1603-25年)のオリジナルのオーク材の床と木のパネルが素晴らしい。木のパネルには、長い間ペイントが施されていたそうなのだが、この家を大修復としたときにオリジナルの木目が見えるようにすべてのペイントをはがして今のような状態になっている。ロング・ギャラリーでは、ご婦人たちがおしゃべりしながらプロムナード(運動がてら歩き回ること)したり、美術品を鑑賞して楽しむ場所だった。また、1920年代には部屋の一角をナーサリー(子供たちの部屋)として使っていた時期もあった。

天井のデザインにも注目

四角く区切って別々にペイントされたものを天井に張り付けている。


葉っぱと花、鳥などがデザインされた天井は、1960年代に今のように改装された。もともと天井は、屋根まで吹き抜けになっており今のような楕円形の天井が取り付けられたのは現代になってから。さらに、パーラム・ハウスの大改修をして屋敷をよみがえらせたペアソン(Pearson)夫婦は、真っ白だった天井に、この家への贈り物(コントリビューション)として、20世紀の美しいデザインを天井に施したそう。

ジャコビアン時代と現代アートが融合し調和した美しい内装となっている。


ビクトリア女王の肖像画


ウィリアム3世とメアリー2世の紋章。

室内には、ロイヤルファミリーの肖像画やパーナム・ハウスにゆかりのある芸術品を展示。この建物が作られた時期と同時代のスチュアート時代の王族の絵画や美術品が多い印象。

ウォールド・ガーデンで摘んできた花でつくるフラワーアレンジメントが屋敷に飾られている。

追記
ちなみに、イングランドで個人邸宅において最も長い部屋を持つ建物。
1番目はナショナルトラストが管理するケント州のノール(Knole)

二番目は、ダービーシャーのハードウィック・ホール

【まとめ】
パーラムの領地は、ヘンリー8世の宗教改革によって修道院が解散されたことにより、王の家臣のロバート・パルマーに与えらえた。そしてパルマー家により現在の建物の基礎となるパーラム・ハウスの建設がされ、屋敷の歴史がはじまる。エリザベス1世が訪れたグレイト・ホールには、チューダ時代にゆかりのある人々の肖像画や調度品が飾られている。
ここでは取り上げていないが、上階にはスチュアート時代の王族の肖像画やゆかりの品が多くあり、また違う雰囲気の芸術作品を楽しめる。最上階のロングギャラリーの広さと美しさも圧巻。現代アートと中世の建築、美術品が融合し、素晴らしい空間を楽しめる。

さらに、1800~1900年代に入ってから今のように整えられたガーデンも美しい。自然の景観を生かしたプレジャー・ガーデンと壁に囲まれたウォールド・ガーデンには、季節の花々が咲き、訪れる人々を楽しませている。

最後までお読みいただきありがとうございます。
楽しんでいただけたら、♡マークをクリックしていただけると嬉しいです。

この記事が参加している募集

みんなでつくる春アルバム

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?