【絵本野山草】(4) 小苑草/桔梗/しもつけ/芙蓉/山藤
小苑草
宿根より春生ず。葉は、しをんより短く、よこへ少しひろく、初生、地に数莖出て、五六尺迄にのび立、花、しをんのごとくにて白し。又、小しをんと云草あり。花 極めて小りんにして白し。草立、葉とも、しをんのごとくにて、小草也。二尺ばかりのび立花なり。七八月はなさく。
※ 「しをん」は、キク科シオン属の多年草。紫菀。
※ 「小りん」は、小輪。花などの輪の小さなもののこと。
※ 「草立」は、ここでは、草が生え始めるという意味と思われます。
桔梗
花数 多し。るりの 一重、るり八重、白一重、白八重、紅ひとへ、紅八重、南京さらさは、白にるりのしぼり入、大りん南京、さらさ咲といふは、つねの花よりひらたく咲。扇桔梗といふは、さらさ咲より 葩 たくましく咲也。咲分有。黄の桔梗有。せんだい桔梗、車桔梗有。六七月花有。和名、ありのひふき。
※ 「咲分」は、ひとつの株の草や木に、色の違う花が咲くこと。
※ 「ありのひふき」は、蟻の火吹き。桔梗の古名。
下野・線繍菊
花のかたち、さくら川草のごとく本紅色。葉、もみぢに似て莖ほそし。白花有。うすいろあり。白花の木は、葉あつく、きれあさし。草下つけといふあり。日光しもつけともいふ。はな葉共に、紅の木にをなじ。くさだちのひず、小草なり。鳳凰草といふも、はな 葉ともに同じ。はのきれこみ、しもつけの葉よりは丸し。三種ともに同じものなり。五六月はなあり。
※ 「さくら川草」は、鹿の子草(カノコソウ)の別名。桜川草。
※ 「くさだち」は、草立。ここでは、草が生え始めるという意味と思われます。
※ 「ひず」は、「穂い出」の音変化、ひずでしょうか。穂が出る、穂を出すという意味。
芙蓉花
一名は木蓮、芙蓉の名二つ有。水に 生 るを草芙蓉といふ。荷花也。陸に生るを木芙蓉といふ。
葉は桐に似たれども、のこぎり有て、葉うすし。葉、両木へ一對付。大さ、くさぎのごとく、又、花はむくげに似たれども、大く一重あり。八重有。千重有。色、大白有。大紅有。薄紅あり。しの立高さ一丈斗有もあり。又、一尺斗有も。花咲一尺斗有ときは、草立一丈 斗 有は、木立に成也。古枝よりわかばへ出て、牡丹に同じ。
※ 「くさぎ」は、シソ科クサギ属の落葉低木。臭木(クサギ)。
※ 「むくげ」は、アオイ科フヨウ属の落葉樹。木槿(ムクゲ)。
※ 「わかばへ」は、若生え。新しく出た芽、若芽のこと。
芙蓉八九月内開 拒霜之名一名木蓮一名木芙渠 楚詞搴夫容於木末 有大紅粉紅白三色 又有醉芙蓉 一日之内花容三變 由白而薄紅桃紅丸子 芙蓉一枝土開花幾色一本上有九色 魏文帝有芙蓉園 括異志有芙蓉舘主芙蓉城
芙蓉、八九月の内、開く。拒霜 の名あり。一名は 木蓮、一名は 木芙渠。『楚詞』に夫容を 木末に搴ぐ。大紅、粉紅、白の三色あり。又、醉芙蓉あり。一日の内、花の 容、三たび 変ず。白より而 薄紅、桃紅。丸き子あり。芙蓉、一枝 土より開く。花、幾色ぞ 一本の上に九色あり。魏の文帝、芙蓉園あり。『括異志』、芙蓉 舘主 芙蓉城 あり。
※ 「楚詞」は、戦国時代の楚の屈原の作品と、その作風にならった作品を集めた歌謡集。
※ 「魏文帝」は、魏の初代皇帝。文帝は、曹丕の諡号。
山藤
花の形、豆の花に似たり。色紫、そとびらの色うすし。内びら、いろ こいむらさき也。葉はぬるでに似たり。一じくに葉十一二三まい斗有。莖に連なりさがる。咲じくの長さ三尺余有。是は 野田藤、又、山藤は莖みじかく、花も少し赤し。白藤は花大くして莖短し。しの立 蔓にして、木にまとふ。白藤は花 ● し。紫は はな遅し。三月咲なり。
※ 「ぬるで」は、ウルシ科ヌルデ属の落葉小高木。白膠木(ヌルデ)。
※ 「じく」は、軸。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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