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不動 浮遊 UFO


えー、「雀百まで踊り忘れず」なんて言いますが、どうでもいい事を憶えていて、最近人の名前や顔を憶えてないなんてことが多々あります。


ーーーーー



珍しくカーさんから連絡があった。タカシがいなくなったと言う。

タカシはオレのアニキで何年も家から出ていない、いわゆる引きこもりだった。そのアニキが昨日から部屋にも家の中にも居ないと言う。

そして部屋には訳の分からないメモが置いてあったと言うのだ。何か事件にでも巻き込まれたんじゃないかと、カーさんに脅かされ急いで実家に帰った。引きこもりのアニキが事件に巻き込まれる訳がないと思っていた。

実家に着くとすぐにカーさんにアニキの部屋に連れて行かれた。
引きこもりの部屋は足の踏み場もないのかと思っていたが、意外と片付いていた。
問題のメモは机の上に置いてあった。

「ぶどふゆほ だれきべべで びぼまえもけ しのび」

「しのびに連れて行かれたんじゃない?」とカーさんは言ったが、しのびならメモを置かないんじゃないかと話すと納得したが、メモの意味はわからなかった。

ぶどふゆほ?不動浮遊UFO?

まさか宇宙人に?じゃあ、しのびは?

考えても訳がわからなかった。

たまたま明日は仕事が休みだったので、今夜は実家に泊まる事にした。
やはりアニキは帰ってこなかった。

翌日、オレが知ってる唯一のアニキと友達と会う約束を取り付けた。事情を話すと
「タカシって引きこもってなかったっけ?」
「外に出て行ったんならよかったじゃん」
そんなお気楽な事を言った。

そしてあのメモを見せると
「コレ、復活の呪文?」
「ドラクエの1じゃないの?」

お礼を言って、実家でファミコンを探した。
アニキの部屋のタンスの奥に、ご丁寧にファミコンとドラクエのカセットがあった。
更にファミコンをつなぐテレビもちゃんとあった。ファミコンを接続しスイッチオン。懐かしいドラクエの画面が表示された。

早速あの復活の呪文を入力。

「ぶどふゆほ だれきべべでび ぼまえもけ しのび」

王様が勇者にむかい
Ӿ「おお たかし! よくぞもどってきてくれた……」

ああ、アニキは大好きなドラクエの世界に行ったのだと悟った。

おもわずオレはⅡコンのボリュームを上げ、
「アニキー!!」と叫んでいた。


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