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24/4/1(月) 桜の季節になると虚しくなる

上京したとき街には桜が咲き誇っていた。
初めての一人暮らしということで、
両親もわざわざ東京の新居まで付いてきた。
引越し業者に荷物を運び入れてもらったあと、
コンビニで昼食を買ってきた。
テーブルをまだ購入してなかったため、
床にレンチンしたパスタなどを広げて食べた。
高校は一応進学校だったため、
高校時代は勉強しろばかり言われていた。
大人になったら苦労するぞと、
何度も説教されたものだ。
結局、映画の専門学校に通うことにした。
進路については1年半くらい父親と言い争い
ばかりしていた気がする。
僕は当時、映画監督になることしか考えてなかったが、
親からすれば、そんな得体の知れない職業に
つくことすら反対だっただろう。
しかし結局はうちの両親はめちゃくちゃ子供に甘いので、
専門学校に入ることも許してくれたし、
学費まで出してくれた。

僕は自分の生まれ育った田舎が大嫌いだったし、
両親のように普通の人生を送ることに
嫌悪感すら抱いていた。
仕送りを貰う立場のくせに、
上京したことで、全てのしがらみから開放され、
自由を手に入れたと思っていた。
自分は何者かに成れると本気で信じていた。
あのまま大人になるまで田舎にいて、
就職なんてしようもんなら、
おそらく精神を病んでいたと思う。
それくらい海と森と畑しかない地元に絶望していた。
PCもインターネットも普及してなかったし、
もちろんスマホなんてなかったから、
まだテレビや雑誌などで情報を集めていた時代だった。
携帯電話もサイトを見すぎると、
パケット代がかかってしまって、
親から怒られるというような時代だった。
お小遣いはDVDのレンタルに費やした。
年150本くらい映画を見ていた。
本は図書室で無料で借りられるので、
目に止まった作品を片っ端から読んだ。
親の言うことも先生の言うことも、
何も信じていなかったため、
映画と本の世界が僕の救いで真実だと
思いこんでいた。
こうやって書き出してみると、
根暗で痛い少年だったなと思う。
大人になった今、
あの頃の自分を思い返すと、
恥ずかしいばかりだ。
もっと人生を気楽に楽しめばよかったなとも
思うし、あんな意固地になって現実の
全てを否定することもなかった。
でもちゃんと運動部に入っていたし、
友達付き合いもちゃんとしてたし、
反抗期的なのも、進路に関してくらいで、
それ以外は素直で良い子だったはずだ。
本当に、映画監督になることしか考えてなかったので、
勉強は高校から一切しなくなった。
夜は映画と読書に時間を割いて、
夜ふかしばかりしていた。
東京に来て、これからもっと自分の好きなことに
打ち込めるという期待もあったし、
これからの新しい出会いにもワクワクしていた。
日本中から映画好きな同年代の人たちが集まってきて、
好きなことを勉強できる。
その環境が嬉しすぎて、まさに人生のピークだった。
専門学生時代のことはまた改めて書いてみたい。


一通り引越作業が終わり、
両親が東京から地元に戻る日。
新宿駅で見送った。
母親が泣いていた。
何度も振り返りながら、
手を振っていた。
その後一人で新居に戻る道すがら、
桜が咲いていた。
地元で桜が咲くのは4月の終わりぐらいだ。
東京ではこんなに早く咲くんだなと、
これからはこの世界で一人で生きていくんだなと、
改めて実感した記憶がある。

その後10数年なんやかんやあって、
今は映画の世界はあきらめ、
一会社員として小さな会社に努めている。
数年前までは4月に街にあふれる新入社員たちや、
上京したての大学生たちを見るのが
つらかった。
僕にもこんな時代があったな。
もう少しうまくいく予定だったけどな。
桜を見るのもつらかった。
あの時上京した時のときめきは
もう味わうことは無いのだろうな。
あの時見ていた夢が叶うことはもうないんだろうな。
あの時の友達はみんなうまくやってるかな、
あの時好きだった人は、何してるのかな。
そんな気持ちを思い出してしまい、
悲しくなってしまう。
両親にもっとしっかり恩返しがしたいけど、
どうすれば良いんだろうな。
孫も見せれなそうだし。

でもここ数年はそういう気持ちすらなくなりつつある。
あきらめることに慣れすぎて、
つらい悲しい感情すらわかなくなってきた。
ただただ虚しいだけだ。
そしてその虚しさをごまかすように
頑張れ若者みたいなおじいちゃんみたいな
気持ちになったりする。

だからエレファントカシマシの
「桜の花、舞い上がる道を」
を聞いてなんとか気力を出すようにしてる。

あれ、今聴きながらこれを書いていて、
なんかすごい勇気とやる気が出てきた!
暗いこと書きすぎて、
気持ちまで暗くなるとこだった。
よっしゃ人生でもう一発くらい
かましてみるか!

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