[report]『ライトアップ木島櫻谷』泉屋博古館東京
※タイトル画像:木島櫻谷《燕子花図》(部分)泉屋博古館東京
開催情報
『ライトアップ木島櫻谷 四季連作大屏風と沁みる「生写し』
場所:泉屋博古館 東京(東京都港区)
開催日:2024.3.16.sat-5.12.sun
入館料:1000円(一般)ぐるっとパスで入場可
内容:木島櫻谷「四季連作屏風」全点公開。
円山四条派の画家とともに「生写し」表現の動物画などを展示。
同時開催企画:住友財団助成による文化財修復成果 ー 文化財よ、永遠に
※写真撮影はホールと「燕子花図」のみOK
↓「泉屋博古館東京」公式サイト内 当展覧会ページ
主な登場人物
木島櫻谷(1877-1938)
画家。「技巧派」「大正の呉春」「最後の四条派」住友友純(1865-1926)
住友家 第15代当主住友吉左衞門友純(春翠)
大阪・茶臼山の住友家本邸の障壁画を当時新進の木島櫻谷に依頼。鶴好き。今尾景年(1845-1924)
画家。四条派。京都画壇の重鎮。木島櫻谷の師。鈴木百年(1828-1891)
絵師。鈴木派の祖。今尾景年の師。四条派・南画風+狩野派円山応挙(1733-1795)
絵師。円山派の始祖。写生を重視。円山王瑞(?)
絵師。円山応挙長男。白井直賢(?)
絵師。応挙門下。古参の弟子。鼠の絵が得意。(加筆系)岸駒(1756?-1839)
絵師。岸派の祖。岸連山(1804-1859)
絵師。岸駒の門人、のち養子となる。(減筆系)呉春(1752-1811)
絵師。四条派の始祖。(=松村月渓)松村景文(1779-1843)
絵師。呉春の異母弟。(減筆系)森徹山(1775-1841)
絵師。森派、四条派。応挙の弟子(応門十哲の一人)。(加筆系)森一鳳(1798-1872)
絵師。森派。円山派。森徹山に婿入り。望月玉泉(1834-1913)
日本画家。四条派。望月派4代。亀岡規礼(1770-1835)
日本画家。円山応挙門人の山本守礼の養子。野地耕一郎(1958-)
泉屋博古館館長(2013-)。当展担当。
単語
【生写し】写生。目の前のものを見ながら描く。…「いきうつし」と読むか「しょううつし」と読むか悩みますが、「しょううつし」…と、思う…たぶん…
【付立】筆全体に淡墨、先端に濃墨を含ませ、一筆で濃淡を表現する技法
【応門十哲】応挙の門人のうち、優れた10人。(駒井源琦・長沢蘆雪・山跡鶴嶺・森徹山・吉村孝敬・山口素絢・奥文鳴・月僊・西村楠亭・渡辺南岳)
章構成覚書
1章 四季連作屏風のパノラマ空間へ、ようこそ。
「四季連作大屏風」(雪中梅花・柳桜図・燕子花図・菊花図)180×720cm
…大阪・茶臼山の住友家本邸のため制作された金屏風
屏風×琳派×油絵2章 「写生派」先人絵師たちと櫻谷
円山派(加筆系):筆数を増やした緻密な描写
四条派(減筆系):俳諧味を意識
後に両者融合もあり→「円山四条派」
櫻谷との影響関係3章 櫻谷の動物たち、どこかヒューマンな。
日本画にリアリティと色彩を
櫻谷の動物画、写生帖(動物)
【第4展示室】同時開催企画:住友財団助成による文化財修復成果-文化財よ、永遠に
文化財の修復レポート
《毘沙門天立像》…修理施工者「公益財団法人美術院」
呉春・亀岡規礼《松・牡丹孔雀図衝立》…修理施行者「(株)岡墨光堂」
関連サイト
↓「美術手帖」の開幕レポート(詳しい)
↓「櫻谷文庫」公式サイト
櫻谷写生帖データベースへのリンクあり(右側のお知らせ やや下)
↓住友グループ広報委員会内 泉屋博古館 特別対談(その2で木島櫻谷についてちょっと触れている)
感想
1室目が華やかな「四季連作大屏風」、2〜3室はかわいい動物画がメインなので、楽しく観覧できます。(キャプション上の一言コメントも楽しい)
写真撮影は「燕子花図」のみOKなので、写真ほぼありません。
上記サイト内など、ご覧ください。
木島櫻谷の「四季連作大屏風」は初めて観たのですが、「あれ?!なんか変わってる」というのが最初の印象。
最初の絵は金屏風の中に赤い花咲く梅の木に雪の積もった「雪中梅花」なんですが、ぽてっと乗っかった雪が「アイシング」みたい。
…シナモンロールの上にかかってる線状の白いお砂糖のあれです。
梅の木の生え方も「ん?これどうやって生えてるの?」
次の「柳桜図」も一瞬、俯瞰図かなって思うのですが、なんか違う。
花びらは地面に落ちているように見えるけど、そうすると位置がよくわからない。
これは、着物の柄みたいな配置と思って見るものなのかなー、だから「光琳風」って言うのかなーと思いながら「燕子花図」へ。
この作品だけ写真撮影可。
遠目で見ると一見、尾形光琳の《燕子花図》似なんだけれど…
近くで見ると、ぽてっとしてる。
クッキーのアイシングみたい。(さっきも言った)
全体のリズム感も(当然ですが)光琳のとは違います。
最後の「菊花図」は一番びっくりしてしまいました。
菊の花が木になって枝垂れ菊になってるのかと思いました。これ、茎だったんですね。着物の柄っぽい?
普通に下に書いたら《燕子花図》と似た雰囲気になりそうですしね。
全体的に、金屏風なこともあり、とても豪華でハイカラな印象。
これが広間に飾ってあったところを見てみたい。
展示室の真ん中の椅子に座ってぐるり、この4つの屏風と《竹林白鶴》を鑑賞できます。パノラマ空間。
2章は、円山四条派と木島櫻谷の動物画ですが、
木島櫻谷《狗児図》と、森一鳳の《猫蝙蝠図》がめちゃめちゃかわいかった!
私はネコ派ですが、この犬はかわいい!
3章は櫻谷の動物画メイン。写生帖が嬉しい。
今回の写生帖は動物画メインです。
そして「同時開催企画 文化財よ、永遠に」…映画の同時上映みたいですが…
虫食いの仏像と破れた衝立の修復展示です。
施工者の修理解説書からの資料が添えてあり興味深かったです。
このボロボロ虫食いの仏像がどんな魔法でこの展示物になるんだかサッパリわかりませんが、修理解説書も私にとっては魔法の呪文状態でサッパリ理解できません。
「メチルセルロース二%溶液にアクリル樹脂エマルションを一%混ぜたもので剥離止めを行った。」とか。
しかし、全く理解できないからといって、眺めて楽しくないわけではありません。
理解できない魔法書だって、なんとなく楽しいものです。
…いつかちょっとは分かったらいいな…
この修理解説書抜粋は展示室内に1枚のパンフレットになったものがあるので、とりあえず持って帰って家でゆっくり眺めることにします。
余談(泉屋博古館東京と櫻谷さんと私)
泉屋博古館って、木島櫻谷推しですよね。
私はちょっと前まで「木島櫻谷さん」存じ上げなかったのですが、何年か前に泉屋博古館がSNSで紹介していた「櫻谷文庫」の洋館修復のクラウドファンディングで知りました。
色々魅力的なリターンはあったんですが、櫻谷文庫は京都。
関東在住の私はそうそう行けないので、一番お安いコースにしたのでした。
そうすると、美術展で「木島櫻谷」の名を見かけると親近感を感じるようになり、「あ、櫻谷さん、関東くるんだ、行こうかなー」と思うようになり、まんまと泉屋博古館の布教にはまったというか…櫻谷さんを紹介してくれてありがとうというべきか…
泉屋博古館東京は入り口でビクセンの単眼鏡をレンタルしてまして(無料ですが、身分証明か保証金が必要だった)、これがきっかけで単眼鏡を購入したという…泉屋博古館には…大変お世話になっております…?
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