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都市の緑化は命を救う

今日のニュースは、Forbesより。医学ジャーナルに掲載されたある研究結果について。

都市の緑を増やせば夏の高温で死亡する人が減る。
具体的には都市面積の3割が樹木に覆われれば、欧州における暑さによる死者(6,700人ほど)が4割減る、という試算が出たとのこと。

この話、都市問題でお馴染み。
そう、「ヒートアイランド現象」ですね。
ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周囲よりも高くなる現象のことです。気温の分布図を見ると、都市部だけが島のように高温になることから、その名が付きました。

ちなみに、エアコンの排熱などにより影響は二次的なもので、主な要因は都市の構造です。

第一に、都市に用いられるコンクリートやアスファルトは色が暗く、そもそもの特性として熱をため込みやすい事。

第二に、植生が少ないことは蒸発散量が少なくなり、そのことによる冷却が小さくなります。木陰が少ないことも、気温上昇に拍車をかけるでしょう。

第三に、都市の高層建築そのものが日光を受ける表面積を拡大しており、熱の吸収をより大きなものにしています。
さらに高層建築は風の通り道を塞ぎ、対流による排熱を阻害してしまいます。

このように、植生が少なく、高層建築が多い都市部は、熱をため込みやすく、逃がしにくい構造であると言えます。

エアコンの室外機による排熱も「逃しにくい」特性により都市に閉じ込められ、気温上昇に一役買っていますが、根本的な要因はそこではないことがわかります。

この記事では、都市緑化こそがヒートアイランドの影響を和らげる、としていますが、要因と照らし合わせると実に理にかなっていると言えます。

緑化=コンクリート等の被覆面積を減らし、蓄熱量を減らして蒸散量を増やす
樹木を増やす=高層建築を密集させず、風の通り道を作るという効果を期待している
のでしょう。

ちなみに、現在の都市計画でもヒートアイランド対策は強く意識されており、例えば丸の内の再開発では明らかにビルの間が空いています。

これは「風の道」を考慮したものです。
さらに、近年の大規模再開発では、緑地が確保されるようになっており、六本木ヒルズはその好例です。

逆に、表面が「ガラス張り」の近年のビル建築は太陽光を反射しやすくマイナスの影響を与えやすいことから、上空に反射するフィルムなどを施工して工夫をするケースが増えているのだそうです。

なお、表面がガラス張りのビルはコンクリート外壁に比べて圧倒的に重量が軽くて済み、コストも安いので近年は多用される傾向があります。
おしゃれで明るいですしね…。

また、「ビル緑化」もよく耳にするようになりました。

屋上を緑化することで、ヒートアイランドの低減効果を狙っています。

いずれにせよ、ヒートアイランドは熱が溜まることが問題なので、温暖化の観点から見ても夏がより厳しくなる現象であることは確か。
都市の居住環境を改善するためにも、その対策は急務であると言えます。
都市を再開発する機会などそうそうありませんから、現在の再開発でいかに対策を講じられるかが、今後四半世紀、半世紀と影響していくでしょう。

というわけで、今回はヒートアイランドに関するお話でした。
都市の再開発の際にも、この問題が意識されているので、再開発地域に足を踏み入れた際には意識して見回してみては如何でしょうか。
今回はこれくらいで。

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