夢の話ですが

ゆらゆらミルコさん
めぐみティコさん
AsaAsaさん

お慕いするnoterさんがじわりハマるハッシュタグ、胸をお借りするつもりで書いてみた、実話フィクションです。


繰り返し見る夢があるんです。
自分でも前回見たのがいつだか忘れてしまった頃に。
一度忘れて、もう自然には意識に上らなくなった頃になると、現れる夢が。

その夢には、私の指が出てきます。
だいたいモメてます。

よくイザコザするのは、親指と、薬指。
私は彼らの仲裁をするのですが、まぁ展開が昼ドラで。

その夢は、手足のある親指と薬指と、同サイズの私が、テーブルを囲んでいるあたりから始まります。
2本の親子は無言ですが、一触即発のピリついた空気。
家を(右手を)出たいという薬指を親父さんが認めないという、いかにもありそうな話し合いの最中です。

私は、どうにか仲裁を試みます。

まずは薬指の説得です。

「いや、出ていくとしてもね、一人で生活していくって大変よ?」
「右がイヤになったから左、みたいなことではね、そのうち詰むんだから。もう少し右で踏ん張ってみたら。小指も薬指がいなくなったら泣いちゃうよ。」

もちろん、これは建前です。
私は私で、薬指の事情なんて酌んでいられません。右手から薬指に出て行かれては不便です。大変困ります。

薬指は第一関節と第二関節の間から生えた腕を組み、そっぽを向いています。
聞けよ人のはなし。
お前が壊死しないのは、私の拍動あってのことぞ。

親指は一応父親という立場もあってか、第三者?の私の手前、声を荒げたりはせず、冷静に議論するスタンスをとっています。

「お父さん、薬指のことが心配なんだ。なにも出ていかなくたって、ここから大学でも仕事でも行けばいいじゃないか?ん?」

親指はたまに、思春期の少女の扱いにくさについて、同意を求めるような苦笑いをよこしますが、私は知っています。

薬指が出て行こうとするのは、この右親指の不貞のせいなのです。

薬指は、以前に父親である右親指と左手の人差し指の逢瀬を目撃しました。

そこから薬指は仕事終わりの親指のあとをつけ、PCの履歴を調べ、どうやら自分は左手の人差し指との子ではないか?と疑いを持ったのです。

履歴には、ダブル不倫がバレて一旦は別れていた2本が、最近になって再び密会を繰り返している様子が生々しく残っていました。

いずらい。それは同じ手にはいずらいです。
位置的に、ペンや箸を持つときなんて、エロだぬきの股間辺りに薬指の顔がくるわけです。思春期の娘さんに耐えられる仕打ちではありません。

過去の事情を知っており、最近の夫の行動から何かを察しているであろう右の人差し指が、最近薬指に対してやけによそよそしい理由もこれではっきりしました。

今まで慕ってきた父が、兄に偉そうに説教垂れている裏で左の人差し指とよろしくやっていたなんて。
また、ここまで赤の他人である自分を育ててくれた右の人差し指のことを思うと、薬指は第二関節の張り裂ける思いでしょう。

出ていってもらっては困りますが、心情的には、薬指の自立を応援したい。

とはいえ私の立場上、単純に親指を責めるのも考えものです。
どうしようもないクズですが、追い詰めたことで激昂し、親指に出ていかれるのもまずい。

どうにかこの場を収めたいのですが、話を聞かない薬指にも、自分の罪が娘にバレているとも知らず紳士な父親ヅラをするエロだぬきにも腹が立ってきます。

だいたい、指が勝手に出ていくとか許されません。
宿主である私の意志を無視して家出とか、、、いかん、宿主の強権を発動してはエロだぬきと同じ土俵です。
なんとか説得しなければ。

親を立てれば薬が立たず、薬を立てれば親が立たず。
いっそ中指を立てて放送禁止用語を叫びながら退場したい衝動に駆られますが、その瞬間私は1本ないし、議論の進行によっては2〜3本、指を失ってしまいます。

こうなったらもう、右の人差し指、左の親指と人差し指を交えて、5本で話し合えばいい。

左の親指と右の人差し指だって既成事実こそありませんが、お互い伴侶に愛想を尽かしている身として、まんざらでもない心持ちであるのを私は知っています。

また、右の薬指が出て行きたい(左に行きたい)理由も、父親の不貞だけでなく、左の中指に対する淡い恋慕が隠れているのも知っています。
近親相姦で指が増えるのは阻止しなければなりませんが、入れ替えようによっては、かなりハッピーな未来があるのではないでしょうか?

右の中指と左の薬指?彼らはそれぞれ、ソシャゲとアイドルに夢中で家族のイザコザに興味はありません。
長さが同じくらいなら、隣人が入れ替わっても気づきもしないでしょう。
むしろ親が入れ替われば、今まで財布からくすねたお金をチャラにできると喜ぶかもしれません。

これだけ拗れているのだからもう、左右のチェンジは構いません。
減ったり増えたり偏ったりしなければ、好きにしてください。

そう、言いたくて言えない。
各々の指が、どこまで情報を持っているかを私は知りません。
迂闊な一言で指を失うかもしれない焦り。

なんのはなしですか。
夢のはなしでした。

だいたい、ここで目が覚めるのです。
起きると汗びっしょりで、ちゃんと指はあるべきところにおさまっています。

どなた様か夢診断していただけませんでしょうか?
どうして物心ついた私の指には善人がいないのでしょう。

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