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エムデンの戦い(著:R・K・ロックネル)【♪名も知らぬ遠き島より 流れ伝う異国の歌が♪「南方から流れてきた読書紹介の小瓶より」】

南海の海でたった一隻。
敵はイギリス、フランス、ロシア、日本の合計200隻以上。
決して最新型ではない巡洋艦。
戦えばひとたまりもないが、

この時代は索敵兵装が原始的なので、
(人間の視力のみ)
移動し続けることによって、
ひたすらヒットアンドアウェイに徹する。

いわゆる海のゲリラ戦。
通商破壊戦。

第1次大戦期のドイツ軽巡エムデンのお話です。

残酷な戦争というより、
まだ海の冒険というノリが強かった初期の戦い。

もはや冒険映画の主役になりそうな実話エピソードです。

****

第1次大戦勃発とともに、
ドイツの中国にある東洋艦隊とその根拠地。
チンタオ要塞。
上の4大国を敵に回してしまった以上、
本国からの援軍到来はまったく絶望的であり、
早晩、陥落することが必定であるため、

艦隊司令官シュペー提督は艦隊だけでも脱出を決意。

その際に、一隻だけ、
インド太平洋方面に残して敵の戦力を引き付ける囮。
兼、通商破壊戦を仕掛けるように、エムデンを分派しました。

通商破壊戦というのは、相手国の商船を撃沈して、
あわよくば経済への打撃を期待し、

うまくいかなくても、
敵の有力艦を長期的にその海域に貼り付ける効果があり、

ドイツ本国艦隊の負担を少しでも軽くするために、
特にイギリス艦隊を世界各地になるだけ分散させるために、
そうやって嫌がらせ攻撃を行うものなのです。

シュペー艦隊主力は太平洋を横切り、
チリでイギリス艦隊と一戦を交え、
フォークランドで追加のイギリス艦隊についに倒されてしまうという、
こちらも超冒険を演じますが、それはまた別のお話。

分派されたエムデンは、自由に海を動き回り、
商船を次から次へと撃沈。
ただしこの頃は、商船の乗組員を殺してはいけないというルールが生きていたので、
拿捕した小型船でまとめて解放したりしています。
こういった騎士道的な戦い方も、またエムデンの評価を高めた一因だそうです。

後年の潜水艦を使った通商破壊戦では、
乗組員を生かしておく余裕はなく、船ごと撃沈してしまうという、
戦争の残酷面があらわになってしまいますが、
まだ水上艦を使えていた時代は、殺す必要がそれほどなかったので、
こういったことが出来ていました。

また港湾への奇襲で、
日露戦争で生き残った貴重なロシア巡洋艦を撃沈したりと、
はるかに格上の敵に対しても、善戦敢闘としか言いようのない大活躍。

しかしさしものエムデンにも最後の時が来て、
オーストラリアの巡洋艦シドニーに追い詰められ、
一騎打ちの果てに撃沈されます。

しかしその頃にカニがたくさんいる島に上陸していた陸戦隊は、
ボートを使って逃れ、インド洋をボートで渡りぬき、
同盟国トルコが支配していたイエメンまでたどり着き、
そこからはるばるドイツ本国まで帰国するという、
これまた冒険としか言えない実話を作っております。

***

さすがにココまで来ると、ドイツでは映像化されてるみたいですが、
日本では未放映です。
知名度が低すぎてしょうがないのですかね。
日本海軍では聞かないエピソードですよね。

こういうリアル大冒険を、20世紀にまだやっていたというのに、驚かされます。
せめて誰かマンガで描いて欲しいな。
黒井さんとかの本にありそう。
(シュペー艦隊の話は出てくるんだけどな)↓

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