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経済学の歴史(根井雅弘)(3)【燃え尽きたぜ、教科書がもう真っ白だ(え?)】(3/3)

では続きやります(ふへー)
今日はケインズから。
毎度のことながら私の理解力不足により説明がわからないようになってしまったら申し訳ありません。

1、 ケネー     フランス王国。   1760年ごろ。
2、 アダムスミス  イギリス      1790年ごろ。
3、 リカード    イギリス      1810年ごろ。
4、 ミル      イギリス      1840年ごろ。
5、 マルクス    ドイツ、イギリス  1860年ごろ。
6、 メンガー    ドイツ       1870年ごろ。
7、 ワルラス    フランス      1870年ごろ。
8、 マーシャル   イギリス      1890年ごろ。
   今日はここから↓
9、 ケインズ    イギリス      1930年ごろ。
10、シュンペーター ドイツ、アメリカ  1920年ごろ。
11、スラッファ   イタリア、イギリス 1960年ごろ。
12、ガルブレイス  アメリカ、     1970年ごろ。
     ここまで↑

9:ジョン・メイナード・ケインズ。


やっとここまできた・・・

マーシャルの弟子のひとりです。青は藍より出でてというやつです。

最初はインド省で勤務したそうですが、あれやこれやで大蔵省に入りなおしました。

結論:金本位制度はやめろ

まず通貨の発行量を増やすことを提案してます。そのためには金の保有量なんか気にしないほうがいいと。理由は後で書きます。

結論:ドイツへ賠償金を課すのはやめろ

「平和の経済的帰結」により「ドイツに賠償金を出すのは政策として間違っている」と述べました。これが原因で大蔵省を辞めます。

そろそろ大不況発生、そして。
「雇用・利子および貨幣の一般理論」が出てきます。

結論:乗数理論

要するに不況が終わらないのは、有効需要が足りないからだ。
緊縮ではなく財政出動をして需要を増やせ。と言ってます。

以下本文より引用。
「いま、投資によって一億円だけ増加したとしよう。それによって社会全体で一億円の所得が生み出されるだろう。しかしその追加所得を受け取った人々は、それを消費のために使おうとするので、話はここでは終わらない。
いま、社会の人々の限界消費性向が3分の2だとすると、一億円×3分の2だけの二次的な所得の上昇が起こるだろう。
ところが、その中からさらに3分の2が使われるため、一億円×3分の2×3分の2だけの三次的な所得の上昇が起こるだろう。
このような波及効果が無限に続いていくわけだが、(中略)
すなわち一億円の所得の増加は、その(1/(1-限界消費性向))倍の(この例では3倍の)所得の増加を生み出していることが分かるだろう」

しかし頭の固い人たちにより、
「そのころのイギリスでは、公共投資は利子率を引き上げ、民間投資を抑制するので公共投資によって雇用量増大にはつながらないとする大蔵省見解(今風にいうなら公共投資が民間投資をクラウドアウトする)」
と言われてましたが、

ケインズは
「もし大蔵省が古いツボに銀行券をつめて、地下深くうめて、自由競争の原理でその土地を買わせて掘り出させれば、もはや失業の存在する理由はなくなり、実質所得や社会インフラも向上する。もちろん住宅建設などに使った方がいいが、何もしないよりは上述のことをやったほうがいい」(一部略)
とまで言い切ってます。

要するにあーだこーだ言い訳するな。
国が金を使わないんだから不況なんだと。

結論:利子率を下げろ。

投資にも限界効用の法則が働く。
企業が投資をするとき、投資額が大きくなるほど利益率が小さくなる。
最終的に利子率を下回った段階で、投資は打ち切られる。
だから利子率を下げろ。
それだけで投資が多くなり経済は活性化される。
・・・ということを言ってます。

結論:投機は危険だ。

実質経済が健在ならある程度の投機は問題ないが、これが逆転して投機の方が大きくなると問題だ。
【*バブル経済やリーマンショックの批判がつながりますね】

結論:流動性選好

貨幣量を多くすれば利子率は下がる。
貨幣をもっと供給せよ。
利子率を下げれば、
投資が積極的に行われ経済が復活する。(上と同じ)

【*これはもう、アベノミクスで使われた理論なので、日本人には馴染みですね】

「ケインズの有効需要の論理を支える二つの柱が、乗数理論と流動性選好である」

さらにこの本ではケインズ以後の追加研究まで書かれていますが。
IS曲線とLM曲線の話・・・・なんのことを言ってるかわかりませんが、
流動性選好の話から「大量失業の原因は人々の貨幣愛である」と結論しています。

失業が発生すると、人々が現金を欲しがる。
人々が現金を欲しがると、貨幣供給量が減る、
貨幣供給量が減ると、利子率が上がる、
利子率が上がると、投資が中止される、
投資が中止されると、失業率が上がる。

このように悪い方向性においても乗数理論と同じような効果が働きます。
【*これも日本人はデフレスパイラルという言葉でお馴染みですね】

(個人的には、現代日本の問題は、貨幣供給量を相当に増やしたはずなのに、さっぱり市中では増えていないというパラドックスが発生しているせいだと思います)
失礼、余計でした。

以下、本文よりまた引用。
「ケインズは大量失業の原因を明確にしたばかりではく、それにたいする明確な処方箋についても書いている。まず流動性選好が強くてかなり高い利子率が成立している場合、貨幣供給量を増やして利子率を引き下げることを考えなければならない。具体的には中央銀行が金融市場から債券を積極的に買い入れることによって貨幣を金融市場に供給することだが、これは債券の時価を引き下げることによって利回りで表現された利子率を引き下げることも意味しています」

【*これはもうアベノミクスの説明そのもの。この「経済学の歴史」は2005年発行の本です。ケインズはもう90年前の人です。そしてなぜ一部の人がアベノミクスに反対していたのかも、ここで説明されてますね。この政策で損をする人たちが明確に書かれています】

「だが利子率が下がっても、その効果が資本の限界効率表の下方シフトによって打ち消されてしまうならば、投資は期待したほど増えないかもしれない」

【*ケインズは90年前にアベノミクスが不発だった理由まで、すでに書いてくれているみたいです】

「その場合は政府自らが、たとえ財政を一時的に赤字にしてでも公共投資を行わなければならないだろう」

【*つまりこれをやらなかったからだということです。もっとも時すでに日本は財政赤字でしたが。なぜ90年代の公共出動が不発だったかは後述します】

「このようなケインズ政策を実行に移すには、第一に中央銀行が貨幣をいくらでも市場に供給することができること。第二に政府が赤字公債を発行してでも公共投資を行うことができることの二つの条件が満たされなければならない」

「しかし第一の条件は一国の貨幣量が中央銀行の持っている金の量で制限される金保有制度の下では満たされない」

【*これが金保有制度を否定する理由です】

「それゆえケインズは、政府が必要に応じて自由に貨幣を供給できるような管理通貨制度を早い時期から提唱した」

「また第二の要件は古典派の均衡財政主義に固執する限りやはり満たされない。それゆえケインズは厳格な均衡財政の原則からの脱却を主張したのである」

【*日本の増税論や、ギリシャの緊縮論、その他諸々をぶった切ってます。これが90年前の見識です。どうですか?】

結論:そしてケインズ経済学は衰退した。

しかしこの話にはまだ続きがあります。
第二次大戦後、ケインズは病死しましたが、サムエルスンという経済学者がケインズ経済学を引き継ぎさらに発展させます。古い古典派経済学と統合して、これを新古典派経済学としてまとめました。しかし・・・

また引用。
「だが現実にケインズ政策を採用して雇用量を増大していくと、忍び寄るインフレという新たな問題が浮上してきた。そこで登場したのがフィリップス曲線と呼ばれる分析装置である。
フィリップス曲線とは、貨幣賃金上昇率(物価上昇率)と失業率の間の逆比例の関係(つまり失業率が高いと物価上昇率が低くなり、失業率が高いと逆に高くなる)をグラフ化したものだが、結論として物価上昇率と失業率をともに低くすることはできないので、それを許容範囲内に収めるようにする政策(中略)を考案しなければならないということである。
その方法は新古典派経済学によれば、何らかの形の所得政策(例えば賃金上昇率を生産性上昇率内に収める)こそがもっとも有効な手段だというのである」

この政策はしばらくの間は有効でしたが、ベトナム戦争によりアメリカ政府の経費増大によりインフレ率が高くなってくると、ケインジアンたちは増税によるインフレ回避を提案、しかし長い好景気になれきっている政府はそれを拒否しました。

この結果、インフレは加速度的に進行、おりしも始まった石油ショックに伴い、スタグフレーションが発生したのです。

フリードマンの登場です。
ミルトン・フリードマンは新自由主義の旗頭として一部で嫌われてますが、デビューはフィリップス曲線の批判からです。
「フリードマンの批判の要旨は、いまやインフレの加速によって人々のインフレ期待が膨らんでしまったので、フィリップス曲線のような安定的な環境は崩壊した」

「それを実証する過程で彼が示したのは、有名な「自然失業率仮説」である」

詳細は省きますが、結論として、
「失業率を自然失業率以下に下げようとするどんな試みも、加速的なインフレを招くだけだということ」

これは「合理的期待形成仮説」に発展、ルーカスも登場します。
また詳細は省きますが、要するにケインズ政策は無効化された、ということです。
【*日本での90年代の公共出動が不発だった理由です】

何をやろうとも、それをすでに期待してしまった人たちにたいしては、失業率の改善も不況の改善もインフレの改善も、政策はまったく効果を出せない、ということになります。
それではどうしたらいいのでしょうか?

フリードマンの提案はこうです。
「彼の提案の要旨は、貨幣量を実質経済成長率と歩調を合わせて増加させることによってインフレを抑制するというものだが(これをk%ルールという)これは(中略)貨幣量の変化は長期的には常にすべて物価の変化として現れる」
彼の理論はマネタリズムと呼ばれ、その後に広がっていきました。

さらに新古典派経済学は、左派からも(本来のピュアなケインジアンからも)批判を受けて完全に崩壊。
今はケインジアンの名はケインズ経済学本来の可能性を追求するポストケインジアンと、マネタリズムの流れを受けたニューケインジアンに受け継がれてます。
ちなみにマンキュー先生はニューケインジアンの学者さんですね。

最後にケインズはひとつの思想という枠に収まりきらない部分が多く、結果として凡人にそれを継承することは不可能だったかもしれない。
ケインズはひとつの経済思想の枠から独立して、偉大な経済学上の革命を引き起こした最後のひとりではなるのではないか、とのべてこの章をまとめています。

10:ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター


シュンペーターと言えば「イノヴェーション」そして「創造的破壊」

シュンペーターは自身、ワルラスやマルクスに非常に引き付けられた人ですが、それをもって共産主義者というのは、やはり違うように思います。
むしろ経営者目線の経済学を考えた人のようです。

マルクスでは資本主義は競争によって、強者が弱者を打倒して、一握りの巨大資本が出来ていく過程を描写しましたが、シュンペーターは別の資本形成の仕組みを提示しました。
すなわち、技術革新(イノヴェーション)の登場です。

結論:技術革新により新しい企業が勝ち組になる。

技術革新はとりあえず下の5種類があります。
1、新商品(サービスも含む)
2、新技術(新生産方法)
3、新市場(新しい販売ルート)
4、新原料(新しい原材料)
5、新組織(コストの低い組織)

しかしこれだけではなく、

結論:起業家精神が必要。

要するにアントレプレナーです。今では言わずもがなですね。

さらにマーシャル経済学も批判します。
難解なので詳しくは省きますが、マーシャルが経済は段階的に進む、と主張したのに対してシュンペーターは、経済はある時に急激に進む、と言ってます。要するに、

結論:新技術によって時代は一挙に革新される。

また彼はいかにして資本主義社会が究極的に自壊するかについても、マルクスとは違うやり方で論証していますが、それについては、また別の機会にさせてください。難しい。

11:ピエロ・スラッファ


スラッファは孤高です。他の経済学など眼中になく、自分が関心をもった部分だけをひたすら研究し続けたイメージです。流行り廃りなど彼には関係ありません。間違ってたらごめんなさい。


代表作は「商品による商品の生産」

結論:標準価格(生産物の本当の価格がわかった)

これまで生産物の本当の価格、というのはリカードやマルクスが様々な案を提案したにも関わらず、いまひとつ不明だったのですが。
関係する関数が多すぎて良くわからなかったのですね。
ワルラスやマーシャルは需要と供給の関係性に基づいて価格が決定されるとしましたが。
そうではなく社会の構造から導き出される純粋な価格はどれくらいになるのか。

それに対してスラッファは理論上で、複雑な説明を丸くまとめた上でいうと、
「この材料を使ってこの商品を作るなら必ずこの価格になる」という「標準価格」を数式によって導き出しました。
ただ方程式にたいして項がひとつ多いので、もうひとつ外部から数字を入れてやらなければなりません。
どんな数字を入れるかというと、それは利潤率になりますが、スラッファは外部の利子率をそこに代入して良い、とだけ簡単に言い残しました。

しかしながら、
これ以降、研究者によって「利潤率をどうやって決めるんだぞい?」
という問題提起が行われ研究され続けています。

結論:希少財も値段が決まる。

他の経済学では、美術品のような希少性のある商品は価格を決定できませんでしたが、スラッファ理論によると、あらゆる価格は構造的に導き出せるため、希少財の価格も理論的に導き出せます。

ちなみに日本にはスラッファの研究者が多く、日本語の文献が豊富にあるそうです。
がんばろう!

12:ジョン・ケネス・ガルブレイス


異端の経済学者です。代表作は「豊かな社会」

結論:大企業は広告によって消費を誘導している。

当たり前ですが、それによって価格や消費行動は、理論的に計算できるものとは違ってきます。

結論:賃金や価格は話し合いで決めていい。

これまでの市場原理で決定されるという理論とは真逆です。政治的に決めるのはアリだ、ということです。これは批判されました。

結論:大企業は、投資、生産、販売、広告、消費、をすべてコントロールしている。

そもそもの話、
大企業はビジネスプランを立てる際に莫大な投資をするので、すべて計画的にやろうとします。
消費すらあらかじめ計算して「こんくらい売れるよ」と予想して初めて始まります。
そして予想を実現しようとします。
要するに大企業のビジネスモデルはすでに社会主義的じゃないか、と言っています。

結論:市場経済は大企業によってゆがめられる。

これを悪いことだとはガルブレイスは言ってません。良くも悪くもそうならざるを得ないものだと言っています。だから良く利用しようと言っています。まちがってたらごめんなさい。

*********
これで終わりです。ざっくりと各章をなんとか要点をまとめてみました。
もちろん間違って理解している個所も多いと思います。
間違ってたらごめんなさい。

特に後半はわからなくなりがちでした。
アベノミクスのおかげでケインズはなんとか理解できるようになりましたが。

ただ傾向としてこの本に取り上げられている経済学者は、
モラリストが多い、という点を感じました。

著者がそう選んだのか、それとも元からそういう性質が経済学者にはあるのか。

特に各経済学者の説明で、道徳的な観点から研究について説明をしていることが多く、

経済学とは、いかにして社会を豊かにするか、
いかにして貧しい人たちを救済し得るか、
という弱者救済の観点を欠かすことはできない。
経済学とはモラルなのだ、という信念が読み取れます。

以上となります。

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