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凍りのクジラ(著:辻村深月)【この読書紹介は、少しだけ・ファっとしてる「ファっとして桃源郷」それ「てーきゅう」じゃん】 

本棚で発掘した本。
うちの弟が昔に買っていたのだ。
私は広く浅くの人なので、ひとりの作家さんをたくさん読むタイプではない。
例外はいるけど。

なので、辻村先生の本をきっちり読んだのは、まだこれだけだったりする。
もうちょっと読んでみてもいいかな?とは思ってます。

主人公は、父を病気で無くし、
母を今まさに無くさんとする女子高生。
お金はどうにかなるし、進学もできるけど、
(成長したのちは他の辻村作品にゲストキャラとして登場する)

まあ恵まれているのかも言われちゃうかもだけど、
やはりこの状況で、何にも不安を感じてないはずがない。

そんな彼女の心のよりどころは、
亡き父が、藤子不二雄(F先生の方)の大ファンだったこと。
父は、どんなことでも藤子先生のお話になぞらえて娘と話していたのです。
父は夢を叶えられないまま亡くなってしまいましたが、
それでも父の希望は、娘の道しるべでもありました。

だから彼女は、自分の周囲のひとたちすべてに、
S・Fで説明を入れます。
S・F(少し・不安な)
S・F(少し・不幸)
S・F(少し・藤子先生)

そういう遊びなんですね。
さらに章ごとのタイトルがドラえもんの秘密道具の名前になっていますし。

元カレがいて、
彼のことを大きな夢を持っている人間と想っていたけど、
ふと見ると最低のクズ男になっており、
世間ニュース的には彼の引き起こす事件が話の中心になる。

まあしかし、作品は主人公の少女の青春が主題。
彼女は、元カレと分かれた後に、
とある写真家の青年に写真を撮らせて欲しいと頼まれるのだ。
しかし、彼は誰かに似ている・・・・

*****

つまり「不幸」な女の子が、妄想力で必死に自分を成立させている世界。
赤毛のアン的な世界なんですかね。
そういう世界がずっと描かれるわけです。

ただなんといっても、
彼女は「他の作品にゲストキャラ」として出演できるくらいには成功してしまいます。
つまりハッピーエンド・・・(といっていいのか)は予約されている。
でもだから安心ということでは、まったくありません。

それはどこまでも、先の話であって、
今の時間軸の話ではないのです。

あの夜の不安の中で、
彼女はいつ、本当に消えてしまってもおかしくなかった。

ただ、あらゆる幸運と奇跡と、何かの巡り合わせによって、
必死で自分を成立させていた小さな灯が、
やがて大きな陽射しとなって、
照らしてくれるようにはなったけど、

それはあの暗い夜の奇跡がなければ、ありえないことだったのだ。

というのが、主題です。
つまり、誰にでもそういうことはあるんだよ。
というお話なのです。

なんとなく、これを想い出しました。
怒られたら消します。

命は足りないまま生まれてくるんだね。
そうなんだね。

ハッピーエンドとバッドエンドとの間に、本質的な違いなんてないのさ。


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