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佐橋慶彦著 バラバラな教室につながりを創り出す「学級経営 戦略図鑑」

この時期は教師にとって色々な児童のあの時の顔や、あの時の言葉を思い浮かべながら一年の学級経営を振り返り、新しい年度に向けて思いを新たにする時期です。そんな時に是非、手に取って欲しい本を御本人の許可を得て御紹介します。教育の関係者でない方にも記事を読んで頂ければと思います。

教師の仕事は、うなぎ屋さん秘伝のタレや、拉麺屋さん秘伝のスープのように長い年月を掛けて熟成してこそうまくいくものだと思っていました。
この本に出会うまでは・・・・・・。

佐橋慶彦さんは、今三十代であろうかと思われますが教師として長い年月を経験して分かるコツを見事に言語化して私たちに届けて下さいました。
「すごい!」まさに、こういうことを職員で共通認識していきたいんですよねという内容の連続でした。

「先生の本棚」というオープンチャットのオンライン読書会では、著者を招いて下さるので直接、お話をお聞きしたり、質問をすることができます。
そこで、Amazonの本の概要欄と、お伺いしたお話からネタバレにならないように抜粋して御紹介させて頂きます。
詳しくは、本をお求め頂けたらと思います。

第1章の目次を御紹介させて頂きます。
第1章 対等・安全戦略 みんなが大切な教室の基盤をつくる
見るだけでつかむ!「対等・安全戦略」
分析01 関わりの違和感はどこからくるのか
戦略01 全員を大切にしたいと公言する
戦略02 対等性を強調するアクティビティを行う
戦略03 「みんなに話が聞いてもらえる」という安心感をもたせる
分析02 「コミュ力」を重視したキャラ付けが教室に与える影響
戦略04 みんなのために行動してくれる人に光を当てる
分析03 子ども達が一番恐れているのは「非公式な制裁」
戦略05 教室に飛び交う言葉を「安全」なものにする
戦略06 「失敗」をリフレーミングする

どんなことを目指しているかが伝わってきます。

【第1章から抜粋して御紹介】

分析02.「コミュ力」を重視したキャラ付けが教室に与える影響 

まずこのページの「静かな戦いの始まり」という言葉に実感が湧きました。
要約させて頂くと、「場の空気をよめて、笑いが取れる人気者」を中心に学級経営を進めてしまうと、利己的な「コミュ力」が重視されてしまう状況になってしまいます。そこで担任はコミュ力偏重主義との静かな戦いが始まるのです。

とあります。たしかに始業式当日から、静かに子供たちとの押し引きが始まる実感が自分にもあります。

戦略04.みんなのために行動してくれる人に光りを当てる

分析02に対する戦略です。
最初に清掃を始めた子、最後まで当番活動に取り組んでくれる子。そんなみんなのために行動してくれる人を価値付けていく。とあります。
「みんなのために働く子達に光を当てる」という言葉に共感しました。

教育は学力を育てるだけでなく、子供たちの表れに「光を当て」人間性や社会性を育むことだと自分も考えています。そして仲間づくりをしていくことが教室を安全・安心な場所にしていくことなのだと思います。


第4章・第5章・第6章の目次から抜粋して御紹介させて頂きます。

第4章 シェアのつながり戦略 つながりを教室全体に広げる
見るだけでつかむ!「シェアのつながり戦略」

分析04 学級全体に「つながり」をつくることはできるのか
戦略25「つながり」のイメージチェンジを図る
(中略)
分析06「シェアのつながり」にも深まりはある

第5章 個別のアプローチ戦略 この子もあの子もつながりの中へ
見るだけでつかむ!「個別のアプローチ戦略」

戦略31「静かな子」が活躍できる機会をつくる
分析07「一人でいたい子」は本当に一人でいたいのか
(中略)
第6章 共同体感覚戦略 つながれる子を育てる
見るだけでつかむ!「共同体感覚戦略」
分析09「つながれる人」はどんな感覚をもっている?
戦略38「WE」の感覚をもたせる
戦略39積み重なっていく掲示物で所属感を高める
戦略40 貢献感を得ることができるような仕掛けをつくる
分析10 共同体感覚を高めるために必要な共感能力とは
戦略41「自分の身になってくれる人」に教師がなる①
戦略42「自分の身になってくれる人」に教師がなる②

私自身も、子供時代に孤立したことがあります。
「一人でいたい子」が本当に一人でいたい訳ないんです。
そこから人とつながる方法について自分なりに
手探りで考え歩んできました。
だからこそ、何か力になりたいと思いながら
この仕事をしています。[松下]


上記の項目から文章を引用して御紹介させて頂きます。
第4章 シェアのつながり戦略 つながりを教室全体に広げる
見るだけでつかむ!「シェアのつながり戦略」

分析04 学級全体に「つながり」をつくることはできるのか
(前略)
臨床心理学者の東畑(2022)はこの曖昧なつながりを社会学の共同性と親密性の考えをもとに「ナイショのつながり」と「シェアのつながり」の2つに区分しました。
「ナイショのつながり」とは、家族や、恋人、一部の親友などに見られる親密なつながりを指します。本当に自分のことを大切にしているかどうか、そんな深入りした関係を求めます。
対して、「シェアのつながり」は「みんな」と時間や場所、問題やミッションを共有しているうちに生まれるつながりです。苦労や、愚痴もシェアし合うこのつながりには、相手が傷つかないようにする配慮が見られます。(後略)

この章を拝読して、自分が学級経営で目指してきたものは将にこれだったんだと「見事に言語化」されたものを見たように思いすっきりしました。
日頃の学級づくりにおいて「このクラスにいる全ての人が仲間だよ。だから友達でも友達でなくても、仲間だからできることがあるよね」という方向から子供たちに自分たちの言動を自ら考えて行動するように関わってきました。 
でもこうしたことを、職員全員で共通認識して進めることは、教師個人のタイプによるもので難しいのではないかと思っていたのですが、この本を頼りに進めていくと、どんなタイプの、どんな年齢の教師でも足並みを揃えて取り組むことができそうだという感触を掴みました。戦略25で分かりやすく図解がされていたからです。ちなみに、この本のイラストも全て佐橋慶彦さんが描かれたものなのだそうです。
戦略51より「仲間のその子らしさを喜べる学級」になったら、きっとどの子にとっても安心で楽しい学校生活を送ることができると感じます。
来年度の、自校の研修に役立てたいと思いました。

図をデータで頂くことができました。
(Xの方で検索して頂くと無料で利用できるものがあるそうです)

戦略25 「つながり」のイメージチェンジを図る

作 佐橋慶彦さん