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別れ話 第3話

いつもの喫茶店で、僕たちは
話し合っていた。
これからの二人の人生が
重なっていくのかどうか・・・

岐路に立たされていた。

彼女は、東京を離れ 
地方で或る仕事に就きたい
のだという。

別れ話を切り出した彼女に
プロポーズした僕・・・

彼女が地方に移住したい思いは
変わらなかった。

それなら僕が今の仕事を辞め
新しく仕事を見付けるより
他はなかった。

僕の年齢で
新しい仕事が見付かるのか?

一抹の不安と共に
僕は人生の大切な局面を
迎えていた。

後悔だけはしたくなかった。

「僕が、  君が行く新しい場所に
 一緒に付いていくよ。」
気付いたら、そう彼女に伝えていた。

「こうあるべき」という思考より、
「こうしたい」という感情が上回った。

別れ話を切り出した彼女は
突然の話の展開に
しばらく黙って考えていた。

そして
「人生って思わぬ方向に進むのね」
と言って微笑んだ。
それは、紛れもなく
僕も考えていた言葉だった。

彼女の瞳は、涙で溢れていた。

僕は、思わず彼女を
抱き寄せ、キスをした。

彼女のその微笑みは
いつもと何も変わらないようで
いつもと全く違うようでもあった。

彼女の微笑みと涙に
僕は、自分の決断が
間違いではなかったことを
確信した。

私は、彼の突然の結婚の申し出に、
驚きを隠せなかった。
彼の優しさと思慮深さが好きだった。

でも、優しさと慎重さ故に、自分の意思を
はっきりと示してくれないところが 
もどかしかった。

何度か彼に、結婚について切り出したけれど、
彼は、はっきりとした態度を
示すことはなかった。
30歳になるのをきっかけに、
私は、変わりたかった。

昔からの夢を実現させるため、
東京を離れ、彼からも離れようと
大きな決断をした矢先のことだった。

思いがけず「プロポーズ」をされた私は、
これまで、彼との関係の中で
ずっとずっと溜めてきた感情が、
溢れそうになるのを必死にこらえていた。

彼は心配そうに、
これからのことを考えている私を
黙って見守っていた。

そういえば、彼は昔から、
私が困っている時には、
じっくり待ったり、話を聞いてくれたり
私のことを変わらずに思い、
そっと寄り添ってくれる人だった。

私と一緒に地方へ移住することを
彼が申し出てくれた今、

この絶対的な安心感を手放して、
一人で進んでゆく気持ちには
なれなかった。

人生とは、思わぬ方向に進むものだと
知った。

こらえきれない涙が溢れてくると
彼は、私をそっと抱き寄せ、
優しいキスをした。
心が、自然に穏やかになるのを感じた。

彼と離れないで、
二人の関係を続けていく決意をした。
新しいこれからの私たちを
ピアノの調べ「CALLING  YOU」が、
祝福しているかのように、
やさしく背中を押してくれた。

そう、これまでの「行き先の見えない日々」に
別れを告げるため・・・



nekonosaraさんのステキなイラストを、
使わせて頂きました。ありがとうございます😊

「別れ話」を第3話までお読み下さってありがとうございました。
「別れ話」は、
「恋愛から結婚への経緯」となるドラマのひとつなのかもしれません。
(もちろん、全ての「別れ話」がそうとは限らないのですが)

エッセイや、好きな音楽と連動して、
作品を作ってみました。
🍀
感想をコメント欄にお寄せ頂けたら幸いです。
次の作品づくりに生かしていきたいと思います。