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別れ話 第1話 

その日、君はいつもの喫茶店で
少し元気なくたたずんでいた。
ぼくは、声を掛けるのを
少しためらった。

しばらくして 僕は
君の斜め前に座った。
君は少し顔を上げて
僕の方を見て
微笑んだ。

その微笑みは
いつもと何も変わらないようで
いつもと全く違うようでもあった。

そして君は言った。
「私たち、もうダメかもしれない」
「別れましょう」
その瞳は 
僕を真っ直ぐ見つめていた。

とっさのことで
僕は
その言葉に返す言葉を
何も
持ち合わせてはいなかった。

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