関屋記念&新潟2歳ステークスコース論

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関屋記念・新潟2歳ステークス(新潟・芝・1600m)

コースデータ

・左回り/外回り
・スタートから3コーナーまで 548m
・最終直線 659m
・高低差 2.2m
・直線坂 下り→上り→下り→平坦(最終直線区間の高低差1m未満)

 なお、新潟芝1600mは内回り・外回り両方あるが、今回は外回りのみ取り扱う。

特徴

・スタート地点は向こう正面の途中
・スタートして200mちょっと進んだあたりから約300mの上りに入り、3コーナーに入ってすぐにコースの一番高いところを迎える
・3コーナー途中から4コーナー途中まで上った分を約200mかけて下り
・4コーナー途中で下り終わった後、また少し上って下る
・下りの途中から直線に入り、僅かな上りと下りを経て最後は平坦
・急角度の左コーナーを有する(内・外・ダート全共通)

このコースを使用するOP以上の競争

G3
関屋記念(3上)
新潟2歳S(2歳)

リステッド
谷川岳S(4上)


コース考察

○開催の進み方に注意が必要

新潟芝1600m・補正込み枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
新潟芝1600m・補正込み枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)

 「補正込み」とは、当該コースが最大18頭立てで開催される、即ち7・8枠の出走頭数が1~6枠に比べて多くなることを踏まえ、1~6枠の出走頭数とほぼ同じになるように一定の係数を掛けた後の数字であることを意味する。
 今回の場合、7枠に78%、8枠に77%の補正をかけている。

 データの上では外枠の馬が優勢になっているが、このコース、或いは新潟芝を考える上で馬場の傷み方という要素は無視できない。
 新潟競馬は開催が進むにつれて露骨に馬場状態が変化していき、最終的に開幕直後の青々とした芝は内ラチ側を中心に消えてしまう。その結果、タフな内側を走らされる内枠の馬は開催が進むにつれ成績が悪化していく。

 上のグラフは開催時期・開催進度を共に考慮しないものであるため、平均的に外枠が有利と出ているが、開催が始まった直後はフラットで、開催が進むにつれて外有利に変化していくと考えたい。

○差して十分やれるが

新潟芝1600m・全頭脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
新潟芝1600m・馬券内脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・16頭以上)
内側の円が馬券内・外側の円が総数

 脚質別の傾向は概ねイメージ通りと思われ、圧倒的に差し馬が優勢。ただし、追い込みの成績が振るわないことから、ただ末脚を使える「だけ」ではダメということもこのデータから読み取れる。

 これに関しては理由は明白で、道中明確に緩みをもたらすポイントがあるため。
 新潟自体は平坦なコースと思われがちだが、外回りでは上がって下るポイントがコーナー付近に存在し、ここでは物理的に速度を上げることができずペースが落ちるため、結果的にここが溜めのポイントになり、直線を向いてから一斉に動き出すレース質になりやすい。
 後方から進める馬にとって、このよーいドンの勝負は上がりが似たり寄ったりになる、つまり末脚に差がつきづらくなるため望ましくない。

 逆に言えば、よーいドンの勝負になるということは逃げ・先行馬にも一定の勝ち筋が存在するということだが、そこに関してもやはり上がりを使えるかどうかにかかってくる部分が大きい。
 また、道中を楽に運びやすい小頭数では必然的に前目に位置付けられる馬が有利になるため、小頭数においてはこのデータは参考程度となる。

 能力に対して素直な結果の出やすいコースであり、出走馬間の比較が重要になる。


過去の関屋記念・新潟2歳ステークスラップ推移

関屋記念

 関屋記念はこのコースで行われる唯一の古馬重賞であり、それゆえにこのコースで行われるレースとしては最も格が高く、能力の高い馬が集う。
 ラップもそれを反映して道中の緩みが比較的小さくなっており、必ずしも上がり3Fに特化した勝負になっていないことが分かるだろう。
 22年のような序中盤の緩みが大きくなった結果先行馬が33秒前半~32秒台の末脚を繰り出せてしまうような展開が稀であって、全体の傾向としては寧ろ新潟の割には上がりが出ない決着になることが多い。

 もっとも、このコースで走るという時点で高いスピード能力を要求されていること自体は間違いなく、それが不足している馬は基本的に巻き返しが利かない。
 過去10年のこのレースの勝ち馬は全て関屋記念以外に最低1個以上の重賞を勝っており、その中でも17年マルターズアポジー、19年ミッキーグローリー、21年ロータスランドを除いた7頭はその重賞勝ちが東京または京都であることから、やはり高いスピードを持っていることが勝利への条件であることの裏付けになっている。
 なおこの3頭について、マルターズアポジーは生涯のほぼ全レースで逃げを通したため東京や京都では不利であったこと、ミッキーグローリーはマイルCS5着の経験があるもののこのレースの前後に骨折・屈腱炎があり結局このレースを最後に引退、ロータスランドは京都が改修中の時期に現役の大半を過ごした関西馬である(それでも中京の高松宮記念2着の実績はあり)と、それぞれ勘案しうる事情は抱えており、この3頭の評価を貶める意味はないことを記しておきたい。

新潟2歳ステークス

 こちらは夏の2歳戦らしく、道中にしっかりと溜めるポイントが存在し、完全な上がり勝負になる。
 ただし、方向性の違いはともかく最初からある程度の能力が保証されている古馬重賞の関屋記念と違い、こちらは新馬か未勝利を勝てばとりあえず出走すること自体はほぼできるということもあり、出走馬間での能力差が非常に大きくなりやすい。
 そのため、道中位置取りがどうであれ上がりを繰り出せればとりあえず馬券内に入れる可能性が極端に上がるという大味なレースとなっている。

 なお、過去10年の上がり最速馬の成績は【7-2-1-0】。もっとも前走上がり最速だったからといってここでも上がりを出せるわけではないのが難しいところなのだが。

 参考までに、過去10年このレースを1分33秒台で勝利した馬は3頭(14年ミュゼスルタン・15年ロードクエスト・21年セリフォス)おり、その全てがマイルG1で馬券内の実績がある。
 また、過去10年の上がり最速の中で最速である32.5を繰り出した13年ハープスターは、その後桜花賞勝利・阪神JFとオークスでも2着に好走する活躍をしている。
 純粋な能力比べができる舞台だからこそ、ここでハイパフォーマンスを発揮できた馬はその後にも繋がっていくという意味では、試金石として非常に分かりやすいレースであるといえる。


まとめ

 2重賞含むこのコース全てで言えることは、コースから与えられる干渉が強くない分出走馬間の能力比較に時間を割くべきだということ。特に根本的でありここで最も重要となるスピードの比較は丁寧に行わなければならない。

 逆に言えば、このコースだから特別に考えなければいけないという要素はほぼなく、あるとすれば新潟全般に言える馬場の傷みがどうかくらい。
 それによって枠差が生じてくることはあるので、それだけは頭の片隅に入れておいてもよいだろう。まあ忘れていたとしても午後のレースであれば午前中のレースを見ている時に芝の色で気づきそうだが。


 関屋記念は何度か買って全外しでした。
 新潟2歳Sは2歳戦なので買ってませんでした。

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