【短編】 雨音リノベーション
「鈴木、来週の打ち合わせ用の資料、大丈夫か」
今やってますって。ちょっと予定より遅れてますけど。
「はい、大丈夫でーす」
リノベーション専門の会社に勤める鈴木雨音は入社5年目。
任せてもらえる仕事も増え、忙しくも充実した日々を過ごしている。
「雨音、先上がるけど、ホントに手伝わなくていいの?遠慮しないでよ」
「大丈夫ですって。先輩には前回もガッツリ手伝ってもらっちゃったんで」
今回は絶対、自分の力でお客様を満足させるんだ。
「気合い入ってるなあ。もう遅いから、ほどほどにね。はい、コレ」
社長がコーヒーを買ってきてくれた。
「はい、ありがとうございます。頂きます」
「雨音さんっていうの。素敵なお名前ね」
「あ、ありがとうございます。それでは、こちらのリノベーション案をご覧下さい」
クライアントは、60代の夫婦、熊谷様。
娘の家族と3世帯で暮らす家の大掛かりなリノベーション。会社にとっても重要なこの受注、期待の若手である雨音が抜擢されたのだ。
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