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湯たんぽについて調べた話

はじめに

 この文章を書き始めた令和6年3月20日はめちゃめちゃ寒かった。私が住む地域の最低気温は0度。冷たい風に乗った雨が窓を叩く、春分を謳うにはあまりにも寒い一日。
私が夜な夜な参加しているソーシャルプラットフォーム「VRChat(以下VRC)」の中でも「寒い」「もう春のはずなのに」といった話題が上がっていた。
何人かのフレンドとそんな話をしている中で私が「こんな日はもう一度湯たんぽを引っ張り出してこないといけないね」と何の気無しに発言したところ、その場にいた約半数が湯たんぽを使ったことがないと答えた。
この時に受けた衝撃に今回の述懐は端を発する。

かわいい

湯たんぽを使ったことがない方が一定数存在したことにも正直驚いたがその中でも特に心に深く突き刺さったのは「資料館で見たことがある」というフレンドの言葉。この一言を浴びた私は、急に自分が旧世代の悲しき標本としてガラスケースに閉じ込められてしまったような隔世の感を禁じ得なかったのである。

すっ転ぶ本末

 湯たんぽを使ったことがないという意見を受けて驚いたと書いたものの、実は私も別に湯たんぽにこれと言った思い入れは無い。なんならここ数年湯たんぽを使った記憶も無い。「もう一度引っ張り出してくる」と述べた通り、今湯たんぽはたぶん押し入れの奥底に眠っている。『もう一度』とは『今冬使っていた湯たんぽをもう一度』ではなく『遥か追憶の彼方、少年時代に使っていた湯たんぽをもう一度』であることをここに告解させていただく。VRCで話していた皆様へ。ごめんなさい私そんなに湯たんぽめちゃめちゃ好きとかではないです。

湯たんぽについて調べてみる

 しかしながら、こんな文章を書き始めた以上物語には一定の区切りを付けなければならない。賽は投げられた。いや、お湯は注がれ始めたのである。
まずは湯たんぽについてもっと知っておこう。ということでウィキペディアを見てみる。


湯たんぽ(ゆたんぽ、湯湯婆[1])は、体を温めるために湯を入れて使用される容器。容器は金属陶器樹脂などで作られる。簡便な暖房器具の一種で[2]、温熱を用いたケアである温罨法(おんあんぽう)に用いる器具でもある[3] 

湯たんぽ - Wikipedia

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湯湯婆!!!!??????!?!?!?!?!?

一文字違いでほぼ湯婆婆!!!!???、マ!!!???これが元ネタなの???ていうか湯婆婆の時も思ったけどまた字重なっとる!!!!!!どの口が贅沢な名とか言ってるの???????取れ!!!!!湯婆になれ!!!!!!
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唐突に現れた千と千尋に取り乱したが、話を戻しましょう。
今回、「湯たんぽを使ったことの有る無し」は、世代間による影響が大きいと私は踏んでいる。VRCで話していたフレンドの方々も世代にそれなりの幅があったことから、私は『一定の時期を境に生活スタイルや睡眠環境における何らかのブレークスルーが起こり、湯たんぽがその姿を消したのではないか』というおおざっぱな仮説を立てている。それを立証するためにも、見るべきは時系列に沿った変遷、つまり日本における湯たんぽの歴史だ。

歴史
中国では「湯婆」(tangpo)と称されていた[1]。「婆」とは「妻」の意味であり、妻の代わりに抱いて暖を取ることを意味している。「湯婆」のみで湯たんぽを表すが、そのままでは意味が通じないために日本に入ってから「湯」が付け加えられ「湯湯婆」となったとされている[5][6]

湯たんぽ - Wikipedia

全然話を戻してくれない。「歴史」の項目でものっけから湯湯婆についてめちゃめちゃ教えてくれている。
しかし、湯たんぽは中国にルーツがあるらしいことはわかった。これだけでも大発見、大きなアドバンテージを得られたものだと思う。ついでに湯たんぽの話をする際、否応なく千と千尋が連想される呪いにもかかってしまったが、痛みなくして得るものはないのである。

日本には室町時代に中国から伝来した[1]。日本で最初の文献は1484年(文明16年)の『温故知新書』及び季弘大叔の『蔗軒日録』とされている[1]。また日本で現存する最古の湯たんぽは岐阜県多治見市小名田で出土した「黄瀬戸織部流し湯婆」である[1]。栃木県日光市輪王寺には徳川綱吉が使用したという型の湯たんぽが存在している[7]

湯たんぽ - Wikipedia

どうやら湯たんぽは今から500年以上前に日本にやってきたらしい。意外と歴史も深い。教科書の偉人達も湯たんぽを愛用していたのだろうか。「出土」という言葉にまたもや自分の意識が資料館に閉じ込められそうになるが、ここは耐えるしかない。
それと徳川綱吉が犬型の湯たんぽを使っていたのも可愛くて良い。でもどことなくキャラ付けというか、特定のニーズに向けた御仁の下心を感じてしまった。綱吉、媚びるな。

陶磁器製の湯たんぽは文政年間には存在したが、本格的に作られるようになったのは明治期からである[1]大正期になると波型のトタン製湯たんぽが普及[1]。しかし戦時中は金属が貴重となったため、陶器製のものが使われるようになった。現在ではプラスチック製やポリ塩化ビニル製のものが湯たんぽの主流となっているが~
~中略~
2007年(平成19年)からは原油価格の高騰によって省エネルギー性が注目され、商品数・売上が増加している[9]

湯たんぽ - Wikipedia

歴史はここで終わっている。肝心の最近についての情報が書かれていない。
陰謀か…?
「商品数・売上げが増加している」と結ばれているため、少なくともこの時点では湯たんぽが絶滅することなく布団の中で暮らしていたことは窺えるものの、先述の仮説を裏付けるような情報は得られなかった。残ったのは湯たんぽが500年前に中国から伝わり素材を変えてきたこと、湯婆婆、そして二次創作みたいな徳川綱吉だけだった。

アンケートを採ってみる

ご協力ありがとうございました。

 Xで1日間、アンケートを上記の通り行ってみた。投票してくれた皆様、ありがとうございます。
結果は約7割の人が湯たんぽを使ったことがあるというものだった。
…しかしこのアンケート、いったい何の意味があったのだろう。「なるほど40人中だいたい10人くらいは湯たんぽ使ったことないのか…」くらいのことしか得られる情報がない気がする。この選択項目だけでは使っている人の世代や属性が何もわからない。テレビやラジオでもアンケート先を『新橋のお父さん』に限定しているのだから、そういう絞り込みをすべきだったと反省している。このアンケートは、もふおはアンケートが下手という事実だけを如実に表したものになっている。

おわりに

前述した『一定の時期を境に生活スタイルや睡眠環境における何らかのブレークスルーが起こり、湯たんぽがその姿を消したのではないか』という仮定を立てたが、話を聞くにおそらく湯たんぽは姿を消しているわけではなさそうだ。
時代が進むにつれて電気毛布やエアコン、ヒーターなど暖房器具の充実により、湯たんぽがこれまで果たしてきた役割が少しずつ取って代わられるようになってきたのだろう。今これを書いている机の下でも、屏風のようなヒーターが足下を温めている。資料館で湯たんぽを見たというフレンドも、電気あんかは使っているとのことだった。
また、今回の有志の皆様から湯たんぽの派生グッズなどを教えていただき個人的なQOLが向上したことは一つの成果と言えるだろう。
ウィキペディアと拙いアンケートに終始したが、湯たんぽのことを少しでも知ろうとすることができたこと、そして今日もまた世界のどこかで湯たんぽが誰かの布団を温めていることに思いを馳せ、この怪文の括りとする。


おわり

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