信者ビジネスの強さと脆さ

「信者と書いて儲けると読む」といったネットスラングを一時期よく見たが、最近のネット配信者の隆盛などを見るに、まさに信者ビジネス時代になってるなと思う。「推し活」なども広く見れば信者ビジネスだと思うが、アニメやマンガのキャラクターが好きでそのグッズを買うのと、配信者そのものに課金していくのとではちょっと違う印象がある。

言ってしまえば、好きなアーティストの音楽を購入したりグッズを買うのもいわば信者ビジネスである。信者と言うと響きが悪いが要はファンに支えられる文化だ。そういうのは昔からあったのだが、楽曲自体の人気にも左右されるため必ずしも信者ばっかりともいえない側面がある。「●●の曲はヒットした1曲だけCD持ってる」ということもよくあるだろう。こうなると信者的ではない。信者というのは盲目的に愛してナンボだからである。

少し前に、Vtuberのイベントで出た弁当が高すぎる、みたいな話題があった。ピーマンの肉詰めメインであとプチトマトと卵焼きが入って1500円、みたいな。1500円。ほか弁で「スペシャル弁当だ、ぜいたく~」とやってて800円くらいの時代になかなかの強気設定である。しかも内容量的にはほか弁の1/2以下に見える。正直ファンでない人間から見ればただのぼったくりにしか見えない。が、ファンからは違うのだ。写真を見ただけではとても「なるほど1500円くらいしそうだね」とは思えなかったのだが、SNSで感想を見ていると「美味しかった!」「マジで満足!」みたいな感想がけっこうあった。提供する側もされる側も喜んでいるのであればWin-Winなのでそれはそれでいいのであろう。


POPが1000円くらいの価値なのかもしれぬ

誰も不幸になっていないので、ある意味これは商売として理想の形である。商売の基本は「三方よし」という言葉があるが、売り手・買い手・世間が全てよいのが理想だ。まあ世間にまでいい影響があるのかどうかまでは分からないが。

いずれにしてもファン層が厚いほど安定した商売ができるのは間違いない。プラダやグッチなどハイブランドがハイブランドたるのも、結局は「安定したファンがいる」からである。もちろんそのためにデザインとか品質とかに信頼がおけなくてはいけないので、それはそれでハードルの高い話だろうとは思うが。例えば「プラダの新作がカッコ悪い」みたいな悪評が立ってしまうと一気にファンが離れる恐れもあるわけだ。大変である。まあ実際には好き嫌いはあれど1作失敗したからといってそこまでの影響はないだろうが。よくブランドコラボ作品がネタにされるのを見るが、それでブランド人気急落とまではいっていない印象がある。

一時期物議を醸したらしいグッチのウォッチ



まあブランドがブランドたるには「歴史」もモノを言う。その点が昨今のVtuberやライバー人気とは一線を画すところだ。もちろんこの先長期に渡ってVtuber文化が根付いていけば何十年と活躍する配信者が出てくるかもしれないのだが、今のところはそういうイメージがわかない。昔からいた歌手が30周年とかやってるわけだから構造は一緒だろう、という考え方もできるのだが、今は本当に消費が早いので、ヒット曲を出してから5年くらい活動してるアーティストも既に懐かしいような扱いをされたりしている。

「5年くらいで大げさなことを言うな」と思われるだろうか。では「瑛人の『香水』のリリースが2019年です」と言われたら「ああ…」とならないだろうか。
ちなみにその後のヒット数が違うので印象は違うが、KingGnuの「白日」も2019年リリースだ。誰かがカラオケで歌ったら10年以上前のような感覚で「昔あったね~」と言いそうな曲なのに、実際はだいぶ新しい。

そういう意味では信者ビジネスというのは非常に移り変わりが激しいものと言えるだろう。ホロライブとか歌い手とか、今流行っている人たちが5年後どうなっているのか?そのころにはもうAIライバーとかが人気出てたりするかもしれない。逆に原点回帰してリアル人気に戻り配信が下火になってるかもしれない。まあ、とはいっても現在の爆発的な人気を見ると、今後飽きられたとしてもあれくらい稼げばもう充分だろうとは思うが。

ちなみに宗教は本当に信者ビジネスになってる場合があるが、そのへんの話はややこしいので触れない。
とか言いつつ「信者」で検索して出てきた画像をタイトルに使っているが。


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