縦読み漫画は日本式漫画を駆逐するか?
◉韓国発の、縦スクロール型の漫画が、世界標準になるかと言われれば、たぶんならないと思いますよ。別に自分が保守的だから、新しい文化を警戒したり排除してるわけでもなく。こういう、新しいモノが出てくると、それがすべてを席巻するかのように言うのは、日本人の悪いクセです。そういう人に限って、コマ割りとは何かが解っていない、一知半解の人が多いんですけどね。
【韓国発の「縦読み漫画」が業界を席捲…「日本式漫画が駆逐される」は本当か?】現代ビジネス
カカオジャパンが運営する電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」は、2020年7月にApple・Google各ストア上でのカテゴリのセールスNo.1となり、2020年は年間累計でも日本のマンガアプリのトップとなった。
その秘訣のひとつは、同社がSMARTOONと呼ぶフルカラー・縦スクロールマンガ(いわゆるWEBTOON)をアニメーションのように動かしたウェブ広告を大規模に投下し、7月の1か月だけで100万の新規ダウンロードを達成したことにあった(2021年5月までに累計2700万DL、月間閲覧者は約750万)。すでに成熟市場とみられていたマンガアプリだが、まだまだ大規模な新規ユーザー獲得ができると示したこの出来事は、業界に衝撃を与えた。2021年7月からアプリ内でのオーディオブック配信を始めるなど、常に新たな施策に挑戦し、ユーザーを拡大し続ける「ピッコマ」成長の牽引役となったSMARTOONに関する施策や読者の動向を中心にカカオジャパン ビジネス戦略室室長・杉山由紀子氏に訊いた。
大きな事を言うようですが(©春風亭柳昇)これでもコマ割りの文法学に関しては、自分は日本で五指に入るでしょう。そんなものを研究してるのが、五人ぐらいしかいないですけどね。
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■縦スクロールは先祖返り■
そもそも、縦スクロールをさも新しいように言う人がいますが。あれって、むしろ先祖返り。日本の巻物や、そのルーツである中国の竹簡を糸で繋いだ巻物も、あれは横スクロール。で、これが横書きの欧米では縦型の巻物だった訳で。日本の床の間の掛け軸みたいな感じで、イギリスのマグナカルタとか書かれたわけで。日本では、割と巻物の文化が長らく主流で、冊子の文化と並存しました。
なので、縦スクロールは別に新しくないです。四コマ漫画がそもそも縦スクロール型。だいたい、スマホでも普通に横スライドできるのに、そんなにことさら違いを強調するモノなんですか? 無知から来る過大評価に思えます。だいたい、世界的には石版や粘土板の文化、巻物の文化、冊子の文化が常に併存するモノですからね。iPadが発売前にiSlateという名前を予想されたように、むしろiPhoneやiPadは石版(slate)の文化の継承者でもあります。
どっちかがどっちかを駆逐するようなモノではなく、それぞれにメリットもデメリットもあり、併存するモノでしょう。だいたい、横書き左綴じが世界のスタンダードのイメージで語るのは、違和感があります。日本の縦書き右綴じの冊子文化は確かに少数派ですが、世界に10億人の信者がいるイスラームでは、アラビア語がコーラン(クルアーン)の正字ですから。アラビア語は横書き右綴じの文化ですから。
■重要なのは構成と息継ぎ■
で、石版と冊子の文化って、近しいのです。喩えて言えば、AdobeのillustratorとinDesignの関係に似ています。チラシやポスターなどの一枚物(ペラモノ)のデザインに優れたillustratorと、冊子を作るinDesignとでは、機能も70%ぐらい被ります。ある意味で、石版を綴じたモノが冊子ですから。で、文章でも、読みやすさってのは適度な区切りによってもたらされます。この区切りが下手っぴだと、読みづらいことこの上なし。
それは例えるなら、子供の「〜で、〜で、〜で……」と、いつまでも終わらない会話みたいなモノですね。大阪のオバチャンなら「ほんで、オチは?」と怒るレベル。こういう区切りって、楽譜における息継ぎ、ブレス位置みたいなモノ。その視点で見るとむしろ、縦スクロールでブレス位置ができていない・いい加減な人が多いなぁ……というのが、ピッコマ歴3年ちょいの自分の、正直な感想ですかね。
うちのMANZEMIのネーム講座は、最初にコマ割りの文法と演出を徹底的にやるので、縦スクロールだろうが横スライドだろうが、オールラウンドに対応できていますかね。そもそも、漫画のページは文字が縦書きで右綴じですが、手塚治虫先生の『新寶島』を読めば解りますが、三段割りの縦スクロールでも読みやすいモノが基本形です。日本の漫画はここから発展してるので、妙に凝ったコマ割りってのは、作家自身が勉強不足。神様に回帰すべし。
■機器は世に連れ、世は機器に連れ■
そもそも韓国のSamsung自体が、折り畳み液晶に力を入れていますので。言うまでもなく、折り畳み液晶ディスプレイは、冊子を模したインターフェイスです。AppleがMacでGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)を実現したとき、箱混の画面を机の上に擬人化することで、直感的な操作を実現しました。机に引き出しにファイルケースにゴミ箱。で、折り畳み液晶は冊子のインターフェイスに擬人化した方が、シックリくるでしょう。
欧米で石版と冊子が主流で、冊子状の図書装丁をコデックス(codex)、巻物状のモノをロトゥルス(rotulus)と呼びますが。自分は折り畳み液晶ディスプレイのコストと耐久度が問題なければ、使い慣れた冊子状の使い勝手に回帰すると思っています。スマホは片手で縦スクロールが主流ですが、ガッツリ本を読むならタブレット型を横置きにして見開き表示が、やはり自然ですしね。大相撲が世界進出や五輪競技でなくても、日本国内で盛況なように。
世界最大の市場は日本ですから、日本で受けていないのに世界を考えても。もっとも、自分は日本市場にも世界市場にも対応できるためには、むしろ縦スクロールだの横スライド云々より、デジタル作画の推進と、背景・人物・トーン・仕上げのレイヤー意外に、擬音と吹き出しの別レイヤー化と吹き出し下の背景の書き込みの方が、よほど国際化に対応できると思っています。理由は、業界人は自分の頭で考えてください。
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