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「自分のこどもの頃の記憶」をこれからのビジネスに持ち込まない

新しいビジネスを考えているときに、「自分が子供のころの記憶」や「自分が体験してきたこと」がベースになってしまっていることは少なくありません。

家族構成も顧客の価値観も変わっているのに、そこに適合できていないと痛い目を見てしまいますよね。

僕はここ最近、ずっと「これからのビジネスはどうあるべきか?」的な指針を考えていました。少しずつ言語化していく中で解像度が上がってきたので、ここでシェアしたいと思います!


「世帯」はあまりにも変わっている

あなたは、誰と住んでいますか?どんな家族構成になっていますか?

以前、大前研一さんのセミナーを受講した時に「世帯」が今と昔では大きく変化している、という話がありました。

1980年と2020年を比較したときに、

 ・20%いた「三世帯」世帯が、今は7%しかいない
 ・20%だった「単独」世帯が、今は38%でトップ
 ・42.1%で圧倒的トップだった「夫婦と子供」世帯は、25%で2位になっている

という変化が起きています。

画像:内閣府「男女共同参画白書 令和4年版(特-5図 家族の姿の変化)」
を一部加工(枠線の追加)

世帯の状況が変わっていっていることは知識としてはみんな知っていると思うんです。でも無意識に「自分のこどもの頃の記憶」をベースに考えてしまうことが結構あるので、気をつけないといけません。

僕は1986年生まれの、37歳です。自分の常識で考えないように日ごろから意識しているものの、どこかで「三世帯」や「ファミリー」を当たり前のものと考えがちです。

現場で感じるお客さまの傾向と、自分の頭がなんだかズレている気がすることがあり、改めて世帯の変化をデータで見て、とても腹落ちしました。

同世代の30代~40代の方々も、ここは気をつけておかないと新しい企画やビジネスを考えるときに、痛い目にあうんじゃないかと思います。

コロナで激変したお客さんの価値観

コロナでバタバタしていた3年間のうちに、お客様やビジネスの価値観は大きく変化しています。

・昭和や平成時代の「大量精算した安いものが良いもの」の見直し
・外出自粛で、一定のお籠り生活には慣れているので日常出費の節約
・サービス業や外食は、「価値」を感じるものにはお金を出す。

といった社会的な変化は、地域や業種に関わらず感じている部分だと思います。

さらに、

・水道光熱費の高単価化
・円安の進行

なども起きています・こちらは一時的なものではなく、国家産業の衰退と買負けなので、今後10年単位で続くと考えて対応することが必要です。

そのため、サービス業は、

・中間・中庸・中価格帯のサービス業はニーズが下がるため売上が下がる。 
・低価格化路線は一時はニーズが上がるものの、その後利益で行き詰まる。
・海外の売上(輸出)や、海外客の利用を促進する施策は強い。ただし観光地動線である必要がある。
・ストーリーに共感できたり、価値を感じるものへのリピートは高価格化する。
藤巻百貨店のように、マスターがキュレーションしてくれる、高単価な小売は生き残る。

といった、市場全体の方向性を予測した上で、これからのビジネスを考えていかなくてはいけません。

客数を追うのをやめ、リピート率と単価を意識する

僕はお風呂屋さんを運営していますので、前述したサービス業のビジネスシフトを温浴施設で考えてみました。

◎脱・客数!

・自店舗の「価値」を理解して「高単価」を払っていただける顧客を集客する。
・「価値」を理解してくださる顧客と、運営するスタッフで、共にお店を育てていく意識で運営する。
・顧客を会員で囲い込み、リピート率を高めて、エグゼクティブ会員を促進する仕組みを取り入れる。

ということが基本の方針になると考えています。

いかに顧客の数を増やすかを考えるのではなく、リピート率と単価を意識する比重を高めていきます。

そしてそのためには・・・

◎価値を正しく伝える

 自店舗の強みや価値を、顧客が理解しやすい形式や文脈で伝えていくことが重要になります。

・価値やストーリーが伝わる、イベント企画プレスリリースを増やす。
・価値やストーリーが伝わる、webサイトやSNSの運用に変える。
・共にお店を育てていく、アンケートやユーザーMTGなどのコミュニティを作る。
・会員と共に作るを実現する、顧客1人1人の誕生日施策、リピート数に応じたサービスの拡充
・スタッフや顧客を表彰したり、飾るイベントを実施する。(スタッフ誕生祭や、顧客表彰の場)

このようなことを行い、サービスの”価値”を顧客に伝え、それに共感していただく方から対価をいただくという考え方にシフトしていく必要があると考えています。

高単価化のポイントは?

さらに、上記を踏まえて高単価化していくためには次のようなポイントを押さえるようにしています。

①顧客が比較するサービスを変える
どんな業種・業態でも顧客は必ず何かしらの比較をしています。つい、同業他社と比較していると考えがちですが、比較対象を変えてみると新しいアイデアが浮かびます。

ぼくたちが運営する「おふろcafé」の場合、健康センターと比較すると価格が高くかんじられますが、「大衆演劇の芝居小屋・ステージ」と比較すると格安です。

②価値のポイントを変える
提供している物理的な品物や直接的なサービスではなく、そこから得らえるものに派生して考えてみます。

お風呂屋さんもただの「お風呂」を提供しているのではなく、そこから「健康・長生き」「ダイエット」などにポイントを置いて考えることができます。

③顧客に身近なインクルーシブの体験を提供する

インクルーシブとは直訳すると「包括・包含」という意味です。食事やドリンク、プールなどの価格が料金に含まれている「インクルーシブホテル」なんていうのも最近は増えてきましたね。

温浴施設の場合、wifiやコーヒー、お茶、ウォーターサーバーの水などをインクルーシブで提供することで、体験価値を上げることができます。

④単身者向けサービスの拡充

この記事の冒頭でも述べた通り、今は単身世帯の割合がトップです。特に僕らのようなサービス業では、つい家族や夫婦をターゲットにして単独世帯を疎外してしまいがちです。

飲食店やホテルでは2名からしか予約できない店舗もまだまだ多くあり、1人で動いていると困る場面も少なくありません。

1人でも予約できるようにしたり、ペット同伴可にするなど、おひとり様のサービス拡充も今後は重要になっていきます。

この点については、以前僕のnoteでも詳しく書いていますので、ぜひこちらも読んでください。

参考になれば幸いです!

このnoteは、ONDOグループ社内に向けて僕が配信しているコラムを基にしています。経営者として考えていることや、旬の情報、ビジネスのノウハウなどをシェアしています。
同じハコモノ事業者さんや、サービス業の方々にとってもお役に立てるものがあるのではないかと思い、内容を少しだけ編集して公開しています。


宮本昌樹@ONDOグループ CHRO

1986年生まれ、和歌山県出身。27才の時に地域活性を目指して株式会社温泉道場入社。支配人を2年間経験したあと、店舗リニューアル開発・コーポレートブランディング、フランチャイズ事業などを経て、HR部門に注力。2019年より、ONDOグループ1人目の社長として、三重県の株式会社旅する温泉道場の社長を兼任している。

Twitter:https://twitter.com/masakimiy

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