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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 …

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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全84話で完結。約55000字となりました。毎日朝夜7時頃に更新していきます。 街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目指して、真正面から書きました。 読んでいただけたら嬉しいです。

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  • 連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」

    土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全84話で完結。約55000字となりました。毎日朝夜7時頃に更新していきます。 街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目指して、真正面から書きました。 読んでいただけたら嬉しいです。

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ 戊辰鳥 後を濁さず ―つちのえたつとり あとをにごさず― 第一部「釜場」 三月十五日(金)  農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。  表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。  医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税として多額のキャッシュを用意しなければならない。そのため、ボロアパートを解体し、そ

    • 《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第71話

      七月一日(月)  市長選挙の候補者が出揃った。有力な順番に説明しよう。  一 現市長の後任として同じ派閥から出馬する    ペンギン現市議会議員(初出馬)  二 カピバラ市で一番有名な定食屋を営み、町おこしに尽力する    バイソン氏(初出馬)  三 既存の流れと真逆の方針を打ち出す    グリズリー氏(初出馬)  である。当選結果が私にとってどうなるかというと、これも先ほどの順番でお話ししよう。  一 排水処理施設の建設が行われる。    その後、北口のマンションに

      • 《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第70話

        6月22日(土) 「せっかく作った地盤だ。液状化の実験もしよう。」  そう言うとジンベエザメは、どこから持ってきたのか小型の電動マッサージ機を取り出した。  ここまではよかった。 「ちょっとトキさん重たいとは思うが、重くても10kgぐらいだ。コンテナボックスを持っててはくれないか。」と言う。何をするつもりだろう。  そうすると、ジンベエザメは今私が両手で持ち上げたコンテナボックスの底にマッサージ機を押し当てた。ブルブルと腕が震える。 「これが地震だ。」  何やら

        • 《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第69話

          六月二十二日(土)  今日は、プロフェッサージンベエザメによる土木の実験講義である。  まずは軟弱地盤についてだ。  用意されているのは、硅砂という砂と霧吹きとコンテナボックスだけだった。  ジンベエザメはコンテナボックスの中にパラパラと薄く砂を撒き、霧吹きで砂を湿らせ、という作業を何回も繰り返して、器用に水で満ちた砂の地盤を作り上げた。深さはコンテナボックスの半分くらいで、今見えてる表面が地面だ。と言っている。 「これが軟弱地盤だ。緩く結びつきあった砂たちの隙間に水が

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        《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

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        • 連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」
          71本

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          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第68話

          六月二十一日(金) 「トキさん、すみません。長々とこちらの考えるメリットの部分だけ話してしまって。  結論を申し上げていませんでした。  このターミナルを起点とした線路は、東海道新幹線とJR相模線の新駅である倉見駅を目指します。そして倉見駅を通過して湘南台駅へと接続します。湘南台駅はトラ急江ノ島線。相鉄いずみ野線、横浜市営地下鉄ブルーラインが接続する駅です。そのため、今日はこれだけの人数で伺っております。トキさんはトラ急線のみが関係しますので、今後は私のみが伺うことになると

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第68話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第67話

          六月二十一日(金)  トラ急電鉄の職員であるシマエナガに似た女性が続ける。 「トキさん、続けてよろしいですか。  新百合ヶ丘駅には、お越しになったことありますか。新百合ヶ丘駅はトラ急小田原線のほかにトラ急多摩線も接続しています。今回の新ターミナル駅の構想も新百合ヶ丘駅のような構造を目指していまして、そうです。  ホームが三つ必要になるんです。それに加えてホームにそれぞれ二本の線路が必要になり、最低でも六本の線路が並ぶスペースが必要になります。今のカピバラ駅にはそのような

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第67話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第66話

          六月二十一日(金)  市役所の人たちが来た。  そうだ。モグラの死を理由に追い返しておいて、自分から市役所に行ったんだ。市役所も私と話をしていい。そう判断したんだろう。と思ったら、カピバラ市ではなく横浜市だった。 「横浜市交通局のものです。こちらは、JR東日本、JR東海、相鉄線つまり相模鉄道の職員と、トラ急電鉄の職員です。」と、おっしゃった。  続けて、トラ急電鉄の職員が喋り出した。 「トキさん、この度の塩害による被害、大変でしたね。心身ともにお疲れでしょうが、私た

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第66話

          第一部は現場のお話。第二部は計画のお話。同じ土木といえど分野は大きく二つに分かれまして、その両面を紹介したいのですが、欲張りすぎですね。部の切り替えの展開がテーマに則しているのか要検討です。〆切一杯まで修正します。あと今日の投稿が30分くらい遅れたのも計画の内。計画的二度寝です。

          第一部は現場のお話。第二部は計画のお話。同じ土木といえど分野は大きく二つに分かれまして、その両面を紹介したいのですが、欲張りすぎですね。部の切り替えの展開がテーマに則しているのか要検討です。〆切一杯まで修正します。あと今日の投稿が30分くらい遅れたのも計画の内。計画的二度寝です。

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第65話

          六月十七日(月)  帰りに市役所の廊下でラクダと会った。心配そうに、申し訳なさそうに声をかけてきてくれた。 「トキさん。今回はご迷惑をおかけして申し訳なかったです。除塩作業をされた畑の所有者さんにも、先日謝罪をしてきました。良い方で良かった。」  ちょうどお昼のチャイムが鳴る。お昼を理由に会議が終わったその帰りだった。クロヒョウと別れの挨拶をし、ラクダに話しかける。 「県への助言、ありがとうございました。」  おかげで100万円で済みました。と、言ったら、嫌味になる

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第65話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第64話

          六月十七日(月)  土地所有者として、クロヒョウに同行し市役所へと行った。  クロヒョウにはあらかじめ、市はイグアナ地区に排水処理施設を建設する方針だと伝えておいたが、その方針の硬さというのは想像以上だった。クロヒョウのクールな情熱と、市役所の頑なな事なかれ主義が混ざり合うことはなく、一時間程度平行線が続き、結論としてはもっと詳細を詰めた資料をもとに次回話し合う。ということになった。  長い会議の間、壁に大きく貼られたカピバラ市の都市計画図を見ていた。  都市計画図と

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第64話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第63話

          六月十日(月)  どっかで見たことあるぞ。と、思ったら長崎の画像だった。  今日はクロヒョウがやってきて、「トキ、先日は同意してくれてありがとう。」と感謝を述べにきてくれた。  あれからクロヒョウは、アロワーナ内部で話を進め、市役所に概略の説明をしに行く段階となったことを伝えてくれた。その時、見せるつもりの資料がこちらで、これでよければ市役所に提出したいということだった。  画像参照元は、長崎スタジアムシティの画像である。これは、長崎を本拠地とするJ2クラブ、V・ファー

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第63話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第62話

          六月四日(火)  処理するだと!  処理するとは、なんだ!  お前たちは知らないだろうが、  このことに責任を感じて、人が一人死んだんだ!  残された人の気持ちもわからないで!  それを処理するだと!  といった気迫で、 「今日はお引き取りください。  トキさんも最近友人を亡くしまして、今はちょっと。  そのことも考えてあげてください。」  ジンベエザメは、冷静にそう言った。  市役所の職員たちは、そうとは知りませんでした。突然来て申し訳ありません。出直します。と言

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第62話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第61話

          六月四日(火)  法律に基づいて壁を作る人たちがスクラムを組んでやってきた。すごい人数だった。  確かに下水道の排水開始の時はありがたかった。しかし、年間1500万円以上の使用料は大きい。原資はたちまち尽きてしまう。不安だ。  その不安をわかっているのだろう。以前、イグアナ福祉館で市議会議員が言っていた解法に基づいて、カピバラ市役所の職員らが事業内容の説明にやってきた。   事業内容をもう一度整理すると、こうだ。  イグアナ地区の土地を寄付する。  そこに排水処理施設

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第61話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第60話

          五月三十一日(金)  ジンベエザメに頭を下げて、工事にまつわるお金の管理の方法を学ばせてもらった。 「積算を教えてください。」と、言った。  これからは、下水道の使用料が月に140万円近くかかる。この前の罰金の100万円。民泊の収益。何が何だかわからなくなっていた。  ジンベエザメは、あっという間に表を作ってくれて、小型のプリンターで印刷してくれた。 「これが今年の九月末での金額だ。」  金額は収支プラス100万円となっている。 「まず、これまでの民泊の収益が50万円

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第60話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第59話

          五月二十四日(金) 「なぁに泥遊びだよ。今は遊び疲れてしょうがない。」  除塩作業の慰労のため、今は街のスナックに来ている。  除塩作業といってもやってることは、泥遊びというかドブさらいみたいなもので、まず、ジンベエザメは田んぼの区画一週ぐるっと掘り返し、畔を作った。その後、ポンプで今は真水となったヒツジ川の水を吸い上げ、田んぼのように畑に水を張る。数日、時間をおき、水中に塩のナトリウム分を溶け込ませる。一旦排水する。塩素分はそれでもぬかるんだ土中に残っている。そのため

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第59話

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第58話

          五月十三日(月)  轟轟とあたり一面、水の流れる音を感じる。  用水の入水時期のイグアナ地区は、どこかひんやりとしている。  私は、この空気が好きだ。  これだけの量の清流があたりを流れるそのエネルギーを感じるし、この空気の張った感じが、身を引き締めてくれる気がする。  これだけの水量だ。塩分なんて洗い流してくれる。 「お! やっぱりトキだ。名前を調べてきたが、やっぱりトキだったんだな!」  クロヒョウだった。昨シーズンの試合前のイベントで見かけて、少し話したぶりだ。

          《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第58話