私に含まれるCは、

私をふと空を見上げだ。そこには青空とそこを雄大に滑る雲が散りばめられていた。雲は連結しては千切れたりを繰り返し、風の向くまま気の向くまま。果たしてそこに意思は介在しているのか?とは謎だが、そんな感じはする。残暑が残る空は澄んだ青がどことなく秋の面影を見せる。そんなことを感じていると、お腹が鳴った。12時を知らせるラッパのように。私はリュックから少し溶けかけのアルフォートを取り出し食べた。

美味しい。

少し溶けかけのチョコが割と私の口には合った。1つじゃ満足できず、もう一つ、もう一つと続けて食べた。手に溶けかけのチョコレートが付いていることを忘れ、リュックを触ったせいで汚れてしまった。

しまったなぁ。

と思って、リュックをハンカチで拭いた。不意に風が吹き、私は髪を撫でられた。

アルフォートはナオヤが好きだった。

ナオヤは私が高校生のときに同じ部活に所属していた。甘いものが大好きで、怒りっぽくて、お節介焼きー。いつも私に構ってくる。私は、彼が何故そんなに私に構ってくるのかが分からず、たまに疎ましく思う事もあったが、彼のセンスは私に近しいものを感じていた。例えば、シューズ。そのデザインは洗練されていて、そこらへんには売っていない、街まで行かないと買えないもの。ウエアに関しても、赤は赤でも少しマゼンダの弱い、小豆色とクリスタルレッドの間のような深みのある赤。好きなキャラクターはスヌーピー。こだわりの強さ、芯を彼は好いていた。いわゆる変わり者という同類項でくくって仕舞えば早い話であるが、私にはそんな単純なものではないと思っていた。軽率な簡素な比喩ではいけない。もっと複雑でニューロンがひしめき合う脳みそのような。。。
ある時、ナオヤがSNSでアルフォートの新作をレビューしていた。レビューというほど大層に感想を述べているわけでもなく、ただ上手いと写真付きで載せていたのだ。私はアルフォートをそれまで知らなかった。いや、知っていたかも知れない。ただ、意識の外であったのだ。チョコレートとビスケットから成り、船が描かれているお菓子があるとは知っていたが、それがアルフォートという名前で売られているとは知らなかった。私はこの時初めてアルフォートというほど単語をチョコレートとビスケットからなり、船が描かれたものであると認識した。そして、言葉と物が一致した瞬間、それに無性に興味が湧いた。枯れた井戸が水で満たされるように、好奇心が湧いたのだ。次の日、私は通学途中にあるコンビニに行き、アルフォートを買った。今まで気づかなかったがアルフォートには様々な種類がある。スタンダードなものや、ブラックチョコレートを使用したもの。ホワイトチョコレート、抹茶、バニラ、小豆など、その種類の多さに私は驚いた。商品開発部は相当ツワモノがいるのであるとブルボンに敬意を払いながら陳列棚に整列したアルフォート達を覗いていた。しかし、私の心は既に若草色のアルフォートに惹かれていた。抹茶ー。一眼見た瞬間から、これ一択だった。なぜなら私はこの時、抹茶にも興味が湧いていた。理由はいうまでもない。抹茶とアルフォートの二つの魅力に惹かれ、私はアルフォートの抹茶を買った。コンビニを出て、高校へと急いだ。

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