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思い出の曲を紹介してみた(新生活を始めるとき編)

幼い頃から、親の転勤で地方を転々としていた。そのせいなのか、引越しに対してさほど抵抗がない。加えて、環境を変えたいときは住処を移すのが手っ取り早いと考えていることから、実家を出た今も、転居を繰り返している。

新しい土地へ足を運びときは、必ずその時々の気持ちに合った曲を日記に記すようにしている。ふと昔を振り返りたくなったときに、出来事までは覚えていなくても、曲を聴くだけで当時の感情を呼び起こすことができるからだ。

ここからは、私の今までの経験に沿って、記録していた曲たちを紹介しよう。



生まれ故郷の街へー『バイバイサンキュー(BUMP OF CHICKEN)』

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高校卒業と同時に、生まれ故郷の街へと向かった。私はその土地で3歳まで過ごしたらしいが、幼かったこともあり、当時のことは記憶にない。ただ、寒い冬の夜に、家の前の公園で走り回りながら雪遊びをしていたことだけは、何となく覚えている。

生きているうちに一度は住みたいと思っていた。それには学生の方が都合が良いと考えた。進学先の候補にしたいと両親に相談したところ、あっさり承諾され、その後受験にも無事合格。賃貸アパートを決め、家具や家電を購入。何事もなく高校の卒業式を迎え、あっという間に引っ越し前日になった。

18年間、共に過ごした家族と離れる。心を揺さぶられた曲は『バイバイサンキュー(BUMP OF CHICKEN)』だった。

明日の朝 発って 丸一日かけて
夢に見た街まで行くよ
こんなにステキな事 他にはない だけど
ひとりぼっち みんないなくて
元気にやって いけるかな

初めての一人暮らし。新生活への期待が圧倒的に大きく、キラキラした未来しか想像していなかった。浮き立つ気持ちでWALKMANをシャッフルしていたのだが、この曲が流れた瞬間、荷造りをしていた手が止まった。色々な感情がぶわっと押し寄せ、涙で視界が霞んだ。

僕の場所は どこなんだ
遠くに行ったって 見つかるとは限んない
ろくに笑顔も作れないから
うつむいて こっそり何度も呟いてみる
ひとりぼっちは怖くない…

サビ終わりに繰り返される「ひとりぼっちは怖くない…」という歌詞が耳に残る。寂しさに負けないようにと、自分に言い聞かせていた言葉だ。非常に印象深い、思い入れのある曲である。


海の見える街へー『桜が咲く前に(きのこ帝国)』

次に訪れたのは、自分の人生とは全く縁のない街だった。本当は生まれ故郷の街に住み続ける予定だったのだが、色々と上手くいかないことが重なり、離れて気持ちを入れ替えたかった。大学を卒業するタイミング。どこに就職しようか悩んだとき、旅行で一度だけ訪れた、海の見えるこの街が思い浮かんだ。

初春の候。寒い地方からの引越し。そんなときに聴いていたのが『桜が咲く前に(きのこ帝国)』である。

桜が咲く前に 
ここを出てゆくことにしたよ
10年後の君は 
どこで誰と笑っているのだろうか

まだ、その年の桜を見ていなかった。開花前に旅立つ自分と、この歌詞が重なった。新しい街での暮らしには、不安しかなかった。でも、決めた道を後悔したくない。当時はただ必死に、前だけを向こうともがいていたように感じる。

ふわりふわりと舞う 
粉雪が頬を濡らした
守れない約束なんてしないよ

個人的にCメロのメロディが沁みた。鳴り響いていた楽器のサウンドがスッと静かになる瞬間が好き。「守れない約束なんてしないよ」というフレーズが痛い。今でも心をざわざわさせる、叙情的な曲である。


憧れの東京へー『電車の窓から(back number)』

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初めての仕事は辛いことばかりだった。自分で選んだとはいえ、周りに頼れる人がいない環境で悩みを抱え、日々に疲れていた。ある日から、少しずつ身体が壊れていくのを感じた。これ以上、この仕事を続けることはできないと思い、転職を決意した。

海の見える街には、一年ほどしか住んでいなかったが、自然豊かで本当に素敵なところだった。夏にはみかん畑が色づき、秋には金木犀の香りが舞う。どうしても苦しかった思い出の方が多かったが、それでもあの場所で暮らしてみて良かったと、数年経った今では懐かしめるようになった。

仕事を辞め、東京へ向かう電車に乗った。海岸沿いに続く線路を走っていく。その日はとても天気が良かった。海の水面に太陽が反射して、眩しく光る。どこまでも続く青を眺めながら、流した曲は『電車の窓から(back number)』だった。

すべてを投げ出す勇気もないのに
ただ愚痴をこぼしてた
あの頃から欲しくて欲しくて
やっと手にした切符だって
何の迷いも 僕にはないはずなのに

働きながら、東京に行きたい気持ちが強くなっていた。この引越しは、転職は、私にとっての憧れで「やっと手にした切符」だ。しかし、迷いがないわけではなかった。もっと頑張れたのではないか?他の人は続けられているのに、自分が弱いだけではないか?という問いが頭から離れず、長い期間悩み続けた。

あの日に電車を見ながら
憧れ夢に見てたような
場所までもうすぐなのに
なぜだろう涙が出るのは

このときの決断が正しかったかどうかは、今もまだわからない。全てを受け入れるにはもう少し時間がかかりそうだ。未練と後悔とやるせなさが詰まった曲である。


大好きな人と住む街へー『バトンロード(KANA-BOON)』

東京に住み、今お付き合いしている彼氏さんと出会った。素敵な魅力を持っている方で、何事も肯定的に捉えられる性格と、溢れるほどの優しさを与えてくれるところに惹かれた。

一緒に暮らし始めるまではあっという間だった。週末にいくつか不動産を巡り、とある駅に佇む賃貸マンションを訪れた。天気が良いとベランダから富士山が見える。窓から差し込む光が暖かかった。私たちはその部屋が気に入り、契約書に印を押した。

初めての同棲。二人で積み重ねていく時間を大切にしたい。この頃の日記を読み返してみても、とにかく明るくて前向きな音楽の話を綴っている。中でも『バトンロード(KANA-BOON)』を好んで聴いていた。

期待をいまに追い越して 錆色の日々を一心不乱に
バトンロード 雨天だろうと構いやしないのさ
どんな無様な種だって 咲かせれば偉大な伝承花
その根に宿せ 君の誓い

疾走感溢れるメロディと、次に進もうという強い意思を感じる歌詞に、ひたすら元気をもらった。普通、同棲となれば、もっと甘々とした歌を聴いて気持ちを高めるのだろう。しかし、当時作成したプレイリストを見ても、恋だの愛だのといった曲は全く入っていなかった。これからの生活に向けて、不釣り合いだったのだろう。


新しい生活を始める街へー『でんでん(ユニコーン)』

同棲して2年弱の月日が経った、今年の4月。彼氏さんが新しい職場で仕事を始めることになった。転職先は今の家から電車で通えなくはないが、少し距離があるところ。二人で話し合い、新しい部屋を探すことにした。幸いにも、すぐに互いの条件が揃った物件を見つけることができた。

住んでいた街が名残惜しい気持ちはあった。でも、気軽に行けなくなるほど遠く離れるわけではない。懐かしさを受け入れつつ、少しずつ環境に慣れていこう。そんなときに聴いていたのが『でんでん(ユニコーン)』だ。

春夏秋冬東西南北
ツノ出しヤリ出しでんでん進む
のんびりしている時間はないが
左の足出して右足出して

カタツムリにちなんだ楽曲名。AメロBメロでは季節を越えながら「左の足出して右足出して」と、着実に歩みを進めていく様子が伝わってくる。

目指すは新天地 何もないところ
見たことない花が咲いてるところ
声と足音が空に響き渡ってってるところ

「目指すは新天地 何もないところ」と繰り返される、このフレーズがとても気に入っている。のんびりとした曲調に、重く響く歌声が心地よい。シンプルに耳に残る名曲だ。


様々な経験を積みながら、きっと私は、新天地に向かうだろう。次はどこに進むのか。そしてどんな曲を思い出に記録するのか。まだまだ、先が楽しみである。

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