「その穴は僕が埋めるよ」
うちの学校は異動が多い。
私立の学校だからなのか。
「あの先生ここ数日見てないなあ」
そう思ったら辞めている。
新しい先生が来ては去り、来ては去り、それの繰り返し。
約1年前私が来てから、既に10人以上は迎え、そして送り出した。(知らぬうちにいなくなっていた)
特に子どもたちの前で挨拶したり、送別会をしたり、別れを惜しんだりすることはない。
本当に、しれっといなくなる。
特に仲のいい先生が二人いた。
一人は、私のインスタにはよく出てくる大悟。
千鳥の大悟に似ているからそう名付けた。
彼はアジアの国々に興味があるのでジャパニーズネームに喜んでいたが、
「大悟ってどういう意味?」と聞かれたとき、その由来がまさか日本のコメディアンに似てるからだとは言えず、とりあえず「心が広くて寛大という意味だ」と伝えた。
うちの学校の先生はいい人が多いと思う。
特にムカつくこともイライラすることもない。
以前こんなことはあったけど、なんやかんやでこの先生もいい人だ。
私が特に大悟が好きな理由は、
・積極的に話しかけてくれる
・アジアに興味がある
・地理や歴史の知識がある
・ひょうきん者
・笑いのツボが合う
・シンプルに楽しい
・適度な距離感(しつこい誘いや連絡がない)
大悟は私が来て間もない頃からよく話しかけてくれた。
異国の地で日本人が一人きり。
そんな状況の中で、愛想笑いじゃなくて本当に楽しくて笑える存在がいるのは救いだ。
私の任期が終わるまで、頼むから大悟だけは去らないでくれ。そう思っていた。
もう一人の仲良しはコンフィアンセ。
彼女は18歳。ナーサリーの先生としてうちの学校に来た。
教員養成学校を卒業してすぐということだ。
おしゃれで、写真とTikTokが大好きな彼女。
よく一緒に写真を撮ろうと言われ、その度にカメラロールはコンフィアンセで埋め尽くされた。
少々物理的距離感が近く、抱き合ったり顔が近すぎたりして若干の戸惑いはあったが、私は彼女が好きだった。
長い休みが終わり、9月末に新年度が始まった。
その二人ともがいない新年度が。
大悟は、新しくできた隣の私立中学に移った。
個人的にはとても残念で落胆したが、彼は中学校で働くことを希望していたので、彼のキャリアを考えると嬉しいことだ。
まあ、歩いてすぐ行ける距離だから簡単に会える。
コンフィアンセは、最初の1週間は学校に来たが、急にキガリで働くと言い出した。
なにか罰が悪そうに私のところへ来て、異動すると伝えてくれた。
学校を去る前に私に最後の挨拶をしにきてくれた先生は彼女が初めてだった。
最後に一緒に写真を撮って、彼女を見送った。
この二人がいなくなったのは自分にとって大きなダメージだった。
特に仲のよかった二人だったから。
他の先生に
「大悟もコンフィアンセも去ってしまった。私は悲しい。」
そう嘆いていると、エドワードが
「大丈夫、その穴は僕が埋めるよ。」
そう言ってくれた。
キザすぎて思わず笑ったが。
(こう見るとなんかちょっとアレだが、群れない一匹狼タイプ。少し日本人っぽい考えを持っている。)
新年度が始まり、ちょうど2ヶ月が経とうとしてる。
ここで朗報。
大悟が、隣の中学校とうちの小学校をかけもつことになった。
つまり、ほぼ毎日会えることになった。
また前のように笑わせてくれている。本当にありがたい。学校がより一層楽しくなる。
大悟がなぜかけもちすることになったのか?
それは、新年度早々先生が辞めたから。
「その穴は僕が埋めるよ」そう言ったエドワードが。
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