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    趣味小説の完結編です。

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    小説ですわよの番外編です

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    趣味で書いた小説をまとめました。

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『小説ですわよ』第1話

あらすじ 「ホラホラホラ、轢くぞ轢くぞ轢くぞ轢くぞ」  ショッキングピンクのハイエースが、逃げる男の背中に激突した。衝撃と鈍い音が腹の底まで響く。 「マジかよ……本当にやりやがった」  水原 舞はそう呟きたかったが、口が開いたまま塞がらず、助手席で全身を固めることしかできなかった。  男は3メートルほど吹っ飛び、地面に倒れ伏したまま動かない。血は出ていないようだ。 「よーし」  轢いた張本人――森川 イチコは運転席のドアを開け、男のもとまで歩み寄っていく。舞も震える手でシー

    • 小説ですわよ第3部ですわよ2-3

      ※↑のつづきです。  綾子は、後に森川イチコを名乗ることになる女を引き起こし、砂糖水が並なみなみと注がれたバケツにその顔を突っ込む。乾き切り、青ざめた肌が沈んでいく。 「んぐんぐ……」  女は本能的に、砂糖水を勢いよく喉に流しこみ始める。最初こそ『飲みこんで』いたが、徐々にバキュームカーのごとく『吸引』し始める。 「カポッ……ジュポポポポポポポポポポ!!」  下品な音を立てながら、1分も経たぬうちバケツの砂糖水は底をついた。イチコの目は生気で光っていたが、まだ肌の調子は悪そ

      • 【日記】仕事と創作

         新しい仕事に就いてから、約半年が経過しました。  おかげさまで今のところは順調です。  仕事をこなすための精神的な体力も、ちゃんと戻りました。  良い緊張感はあれど、嫌なピリピリ感はなし。  粛々と仕事ができています。  これから本格的に忙しさは増していきそうですが、創作をする心の余裕がやっと生まれ始め、趣味の小説執筆を再開することもできました。  今の仕事は小説とは比較的近い領域にあり、仕事で消耗した脳みそで趣味小説を書けるのか不安でした。というのも「仕事とは別の部分で

        • 小説ですわよ第3部ですわよ2-2

          ※↑の続きです。 「イチコの記憶と、真の名前を返す」  おっちゃんが提示した条件に、イチコは目を見開いたまま固まる。そしておそるおそる、おっちゃんに視線を移す。 「……マジでございますか?」なぜか敬語だ。 「俺がイチコちゃんに嘘ついたことあるかい? ブチ殺すぞ」 (今さっき、身分を偽造して依頼してきただろ! ブチ殺すぞ)  舞はツッコミを心の中に留めた。ここで余計なことを言えば、イチコの記憶と本名を知るチャンスが水の泡になる。  おっちゃんは、地面に落ちたイチコのタバコの灰

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        『小説ですわよ』第1話

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          小説ですわよ第3部ですわよ2-1

          ※↑の続きです。 「10年前までウラシマにいたって……」  舞は路肩にピンキーを止めて話を聞くためにハンドルを切ろうとするが、イチコに運転を続けるようにと手で制される。  以前、舞とイチコがウラシマに赴いた際、イチコは「王と10年前、一度だけ会った」と言っていた。嘘をついていたのか? ずっとウラシマにいた期間を「一度」と解釈するならば間違っていないが……  ここでピンキーがカーナビ越しに告げる。 「お話し中のところ、すみません。間もなく目的地に到着します」  ただのカーナビ

          小説ですわよ第3部ですわよ2-1

          小説ですわよ第3部ですわよ1-4

          ※↑の続きです。  『洋食 イエロー』から出ると、珊瑚は自転車で探偵社の事務所に向かっていった。舞とイチコはそのまま午後の仕事に移る。近くの駐車場からピンキーがひとりでにやってきて、舞たちは乗車した。  舞たちが所属するピンピンカートン探偵社の主な仕事は『返送者』の調査と対処だ。返送者とは、異世界に転生したが何らかの理由で、この世界に帰還した者のことである。彼らの大半は転生の際、魂が神々の腸なる異空間を通過した影響で超常的な能力を得ている。その能力を悪用し、この世界に害な

          小説ですわよ第3部ですわよ1-4

          小説ですわよ第3部ですわよ1-3

          ※↑の続きです。  舞は赤信号に差し掛かり、ピンキーを止めた。その深呼吸から真剣な話だと察知したのだろう。ピンキーは車内に流れる吉田拓郎の『落陽』のボリュームを自ら下げた。舞は短く息を吐き、意思を表明する。 「イチコさん。ギャルメイドの件、バックレちゃいましょうよ」 「う~ん」  うつむき、両手の指を絡めて弄びながら、肯定とも否定とも取れる応答を返してきた。カーナビのモニター横に立てかけられた舞のスマホ画面で、上羅綾子が椅子に深くもたれかかる。  舞たちは宇宙に優しいギャ

          小説ですわよ第3部ですわよ1-3

          小説ですわよ第3部ですわよ1-2

          ↑の続きです。  2023年 3月28日(火) 08:20。  水原 舞は、ショッキングピンクのハイエース『ピンキー』の助手席に乗りこんだ。今日の運転は相棒の森川 イチコだ。窓越しに早咲きの桜が花びらを散らしている。舞は春は特別好きでも嫌いでもなかったが、探偵社に入ってから――ピンク色の髪とジャージが正装のようになってから、桜に親近感を抱くようになっていた。  イチコは事務所の敷地からピンキーを発車させたが、すぐに急ブレーキを踏んだ。イチコの長い黒髪が、一瞬だけ重力から解

          小説ですわよ第3部ですわよ1-2

          小説ですわよ第3部ですわよ1-1

          第1部↓ 第2部↓  夜のちんたま自然公園。電灯の白色光を受けながら、銀髪の少年が言った。 「今夜、虎漢一家を潰すから」  やや鼻にかかった小さな声。150人以上の黒い特攻服たちが聞き耳を立てる。俺も不本意ながら、そのひとりだ。  俺が所属させられている暴走族、亜成會と虎漢一家は1年以上に渡って抗争状態にあった。当初は互いにせいぜい骨折で病院送りになる程度の戦いであったが、先週ついに亜成會から死者がでた。行き過ぎたリンチによるものだと聞いている。これから俺たちは、虎漢一

          小説ですわよ第3部ですわよ1-1

          ごあいさつ

          チン年あけましてオメコなめとうございます。 ことシコよろシコオナニーいたします。 2024 1/1 きゅんぽぽ

          【日記】イク年くるってる年2023

           ご無沙汰しております。きゅんぽぽでございます。  さきほど、無事に仕事を納めました。  酒を飲みながら、ダラダラと2023年の総括をします。  今年は仕事が決まったのが、とにかく大きかったです。  1年半ほど心身を休められたこと自体は悪くないのですが、休んでいるとストレスの代わりに虚無と焦燥ゲージが溜まっていくのです。すると別の形で精神が病み始めていきます。  何かしなきゃいけないのは理解しているのに、何もしたくない。良くない矛盾が生まれていました。なので心に鞭打って、

          【日記】イク年くるってる年2023

          【日記】仕事が決まりました

           ご無沙汰しております。きゅんぽぽでございます。  内容はタイトルの通りです。  どんな仕事かは諸事情で伏せます。    ここ1カ月、主に就職支援サービスを利用して就活していました。  ほとんど手あたり次第に応募してみましたが、大半は引っかからず。  前回の日記で「どうにでもなれ」と強気なことを書きましたが、  内心「どうにもならなかったら、どうしよう」と怯えておりました。  このまま自分は何もせず死んでいくのではとさえ思いました。  結果、奇妙なご縁があって、ひとまずお仕

          【日記】仕事が決まりました

          【日記】名前を変えました

           この度、私は『きゅんぽぽ』に改名いたしました。  身バレと、不要なトラブルを回避するためです。  名前に意味はありません。バカみたいな響きがいいなと思いました。  現在、仕事探しを進めております。  まだ結果は出ていません。  上手くいかなかったら、まあそのとき考えます。  人生どうにでもなれです。  肩の力を抜いて生きていきたいです。

          【日記】名前を変えました

          【日記】さすが! ブレイク・スナイダー様はすごかった!

           ご無沙汰しております。  最初に言っておくと、現在も無職です。  そろそろ職探しに本腰を入れます。  これについては、ある程度動きがあり次第まとめます。  今年に入ってから断続的に趣味で小説を書いておりました。  文庫本にして約2冊分の分量です。  長編小説を書くのは、仕事はおろか趣味でも初の体験でした。  力量不足を感じながらも、楽しく書けたと思っています。  その執筆活動を、サポートしてくれた本があります。  ブレイク・スナイダー著『SAVE THE CATの法則

          【日記】さすが! ブレイク・スナイダー様はすごかった!

          小説ですわよ第2部ですわよ6(完)

           2023年 3月28日(火) 08:15。  舞とイチコは岸田に見送られ、事務所の2階から外階段を降りる。桜は先週開花したが、まだ春の朝は冷える。手をさすりながら舞はイチコに訊ねた。 「ウィル・スミスのビンタ、見ました?」 「見た見た、すごいねぇ!」  階段を降り切ったところで、イチコがいたずらっぽく笑って振り向く。ふたりがピンキーへ近づくと、舞がキーレスを押さずとも自らの意思でドアが開いた。 「おはようございます。例のビンタの威力は、アントニオ猪木氏のものに匹敵すると推

          小説ですわよ第2部ですわよ6(完)

          小説ですわよ第2部ですわよ5-7

          ※↑の続きです。 「スカラースパーク……! 私たちは、なにをすれば?」 「汝らの心をひとつにし、世界の修復を念じるのだ。あとは我々がやる」  ピンキーとMMがメタンガスを噴射しながら上昇してきて、ぬーぼーと綾子の横に並ぶ。 「我々も心を得た者、手伝います。いいですね、MM?」 「ええ、もちろんです」 「それじゃあ始めるわよ。貴方たち、目を閉じて集中して!」  綾子の言葉に、舞たちは瞼を下ろした。舞は全員が本当に目を閉じているか確かめようと、細目でぬーぼーの内部を見渡す。同じ

          小説ですわよ第2部ですわよ5-7