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『読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?』とのお誘いだ。
 乗らせていただく。
 取り上げるのは山田風太郎・著『奇想小説集』(講談社大衆文学館、文庫コレクション)。
 奇想小説集というタイトル通り、奇想天外な作品を収録した短編集である。山田風太郎といえば奇想天外な忍術を駆使する忍者が数えきれないほど大量に出現する忍法帖シリーズが有名だ。その巨大にして峻峭な山脈の如き作品群から選び抜かれた奇想小説であるからして、物凄い。
 第一話のタイトルは『陰茎人』である。
 陰茎という言葉をご存じない読者がいるかもしれないので、説明する。
 いんけい、と読む。英語では「Penis」(ペニス)である。
 以下の文章は『陰茎』と題されたWikipediaの項目から引用したものだ。
 ↓
(前略)男性器の一部で、体内受精をする動物の雄にあり、尿道が通り立位排尿等が可能で身体から常時突出しているか、あるいは突出させることができる生殖器官及び泌尿器である。性交時等には勃起させ雌の生殖器等に挿入し、体内に精子を直接送りこむ際に用いられる性器(交接器)となる。(後略)
 ↑
 排尿を司る泌尿器と生殖を担当する生殖器の二つの働きを持つ臓器ということだ。一つで二つの働きをするから本当に働き者で、ご立派だ。ちなみにヒトの陰茎は一本きりだが爬虫類のヘビやトカゲは一対で二本あるとのことである。男性の夢あるあるの、一度に二人の女性と関係を持つことが、ヘビやトカゲは可能なのだ。実際、彼らはやってんだろうか? どうやってんだろ? 三位一体となるのか? それはこの際どうでも良い。先に行く。
 山田風太郎は書く。
 ↓(一ページ)
 ――これは、鼻のあるべきところに陰茎がぶらさがっている男の話である。そんな人間があるかって? ――あるかっていったってしかたがない。そのとおり、ここにちゃあんと花野大次郎クンという男の物語があるだから。……そんなことをいちいち詮索していたら、だいいち鼻が顔のドまんなかにあることだって納得がゆかんではないか。
 ↑
 最初、笑った。最後の行を読んで、真顔になった。その通りだからだ。
 発生学的には説明可能だろう。脊椎動物は、そのような形状となるように進化してきたのだ。嗅覚器官が魚の最先端にあるのは進行方向から発せられる匂いという情報を真っ先に把握するためだろう。合理的である。しかし、嗅覚器と生殖器がセットになっていたら、なお良い。生殖可能な雌の匂いをキャッチしたら、そこへ向かって突進する方が繁殖の競争では優位に働く。
 雌への性的アピールのためにも、目立つ場所に生殖器があった方が良い気がする。男性性の誇示にうってつけだろう。しかし現代を生きる女性たちは顔の真ん中に生殖器がある男性を――しかも、それが自分へ鋭く向かっていたら――あまり好ましく思わない気がする。そんな時代に生を受けた男が、この物語の主人公だ。これは陰茎のために苦悩する男の物語なのだ。
 今、私事を書こうか書くまいか、悩んでいる。
 悩み事があるのだ。
 陰茎の話ではない。それは既に解決済みだ。それでも若い頃は色々と悩んだ。だが、悩むまでのことではなかった。しかし、これから先、陰茎に関する悩みが復活するかもしれない。それは分からない。先のことは、何も。
 今現在もっと悩ましいことがある。
 他のサイトに投稿した記事の削除を求められている。要するに規約違反だ。『陰茎人』みたいな題名の話を投稿したためだ。
 消さねばならない。違反なのだから。そう思っていた。
 しかし、たまたま本棚にあった本書を手に取って、その気持ちが揺らいできた。一ページ目から『陰茎人』だ。ぶらさがっている、と山風は――山田風太郎のことだ――書いたが、私の目には雄々しく屹立しているように見えたのだ。天に向かってそそり立つバベルの塔かと見まごうばかりだ。または『2001年宇宙の旅』のモノリスか。いずれにせよ私には山風が私に送ってくれた――贈ってくれたにすべきかもしれぬ――メッセージあるいは天啓のように思えてきたのである……たかが陰茎なのに。
 削除の期限が迫ってきた。対応を決めなければならない。
 ここは冷静に考えるべきだ。興奮しすぎて頭が熱くなり、取り返しのつかない失敗をやらかすわけにはいかない。クールになるのだ。
 そんなわけで賢者モードに入るための運動を開始する。今日の書き物は、ここまでだ。

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