今日投稿すれば227日連続!偉業!とのこと

『ご自由にお書きください』とのこと。どうもありがとう。
 所用を済ませ駐車場へ戻り車を発進させる。徐行運転する車の先に歩道を歩く人の列が見えた。老若男女いる。私にとっての問題は、その数だ。二列くらいに並んで進む人の群れは、やけに多く、従って行列は長かったのだ。
 あの集団と交錯する前に車道へ出たいと強く思った。しかし駐車場で加速するわけにもいかない。これも運命だ。心の中で苦く笑いながら、徐行運転を続ける。車は駐車場の出口に着いた。行列の先頭を歩いている男性と目が合った。子供連れだった。私はニッコリ笑って片手を左右に振り、進むように促した。その男性は私に会釈すると子供の手を引いて歩道を渡った。親子の後を多くの人たちが続いた。私は笑顔で行列を見送った。昔やめた煙草を吸いたくなったのは事実だ。こういう状況になると必ずと言って良いほど、喫煙していた。かつて私は常にイラついていた気がする。そんな気分の時に吸う煙草は本当に旨かった……という話をするんじゃなかった。今日の話のお題は、別にある。
 フロントグラスの向こうを左から右へ動く人々の服装に一定の傾向があることに、私は気が付いた。バスケのユニフォームっぽいシャツを着ている人が多かったのだ。
 そう言えば今日、右手の方にある体育館でBリーグの試合があるんだった。この人たちは試合を見に来た観客なのだな、と合点がいく。そのとき、私の前をホームチームのユニフォームを着た女性が通りかかった。おしゃれに着こなしているな、というのが第一印象だった。上品なんだけどスポーツの応援に適したコーデとでも表現したらいいのか……と考えつつ、その女性の顔を見て、魂を奪われた。途轍もない美人だったのだ。
 ここで人生を振り返る。今まで生きてきて、一目で恋に落ちたことは二度しかない。最初の一回は、雪の降る街の交差点だった。大雪の日で昼なのに暗く、私の心も凍て付いていた。向こうから来る人の群れは、ただ単に針路を遮る障害物でしかない。そんな心理状態だったのが通り過ぎる女性の顔を見て、急に人間らしさを取り戻した。あまりにも美しくて、私は一目で恋してしまったのだ。振り返る。彼女の姿は雪の中に消えていた。凄く綺麗な人だった。雪女だったのかもしれないと、半分本気で思っている。
 Bリーグの試合があった日、私の車の前を歩いていた女性に対して私は、人生二回目の一目惚れをした。通り過ぎていく彼女を目で追い続けた。彼女が人の波に消えたところで、やっと頭が動く。追いかけろ。雪の中に消えた恋を取り戻せ! そんな風に思ったのだが、それは頭が理性的に働いた結果とは言いがたい。ただの本能だ。車、どうすんのって話になる。従って私はステアリングから手を放さず心の痛みに堪えた。そして思った。次は、次のホームの試合には、観戦に来よう。ホームチームのユニフォームを着て応援するんだ! 彼女に再び会えるかもしれない! また会えるかもしれない!
 そこで我に返った。俺キモくね? ストーカーみたいじゃね? バカか。
 いつのまにか歩道に人影は消えていた。ブレーキペダルから足を離す。車を車道に出しステアリングを左に切る。そしてアクセルを踏み込む。バックミラーを覗く。体育館が見えた。思う。彼女のために勝てよ、と。
 その日以来、Bリーグの試合結果が楽しみで仕方がない。

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