メイクなんて一生しないと思ってた

私は社会人になって少し経つまで、まったくメイクをしていませんでした。
高校生までは校則で眉を剃ったりメイクをしたりすることが禁止されていたし、大学では勉強やサークルで忙しくお金も時間もなかったのを、むしろ都合よく言い訳に使っていました。
就活もメイクなしで行っていたので、そのせいで早い段階で落とされたなと思ったことも何度かありました。

メイクをしていなかった理由

・もともと人の容姿への興味が薄く、自分が綺麗になることのメリットを感じていなかった
・シンプルに面倒
・時間もお金も、趣味や将来のためになる勉強などに使いたかった
・周りの人がメイクを勧めてくる理由が「かわいく・女性らしくなる」「恋愛」などが主な内容で、まったく魅力を感じられなかった

自分の容姿を磨くことにメリットを感じていなかっただけでなく、性別で分けられて違う役割を与えられることすべてを昔から嫌がっていたので、「女の子なんだから」と言われるほど、「絶対にやりたくない」という気持ちが強くなっていきました。
自分の能力や行動などに対して「女の子だから/女の子なのに」など言われるのも、アンケートで性別を答えるのも大嫌いでした。
「私が」「私のために」そうしたい・そうすべきと思ったから身につけたスキルも、「私が」こう思うという意見も、「女性だから」「女性の意見」というラベルを貼られて「女」というフィルター越しに見られると、自分の意思とまったく違う文脈で読み取られてしまうことが多いと感じていたため、そのフィルターを取っ払いたかったんだと思います。
小さい頃は気が弱く泣き虫だったのもあって、強くありたいという理想を持っていたので、おとなしくかわいらしくしていることを求められるのも嫌でした。
それはこの社会で女性が守られる側やサポート役などのサブ的な立場に置かれ主体性を認められにくい環境のせいであって、自分自身が女性であることを否定したいのでも、好きになった女性にそういう「女性らしさ」を求めているのでもないのですが、昔の私は女性らしい見た目などを避けることで、「女性であること」に付随する「女性への期待」から自分を守ろうとしていました。

メイクをしてみようと思うきっかけになったのは、社会人になったことと、ビアンバーへ通うようになったことでした。
社会人になって、都会に出てきたからか、会社ではコンプライアンス意識があるおかげか、「メイクしたら?」「スカート履かないの?」など容姿に口を出されたりすることがなくなり、学生時代より楽になったし、自分の好きな姿でいやすくなりました。
また、ビアンバーで自分と同じように女性が好きな女性と出会えるようになったことで容姿を磨くメリットが少し出てきたというのが少しと、一番影響が大きかったのは、メイクをしていない方もメイクをしている方も、いろんなタイプの方がいるのを間近で目にしたことでした。
それが、それまで押しつけられていた「女性らしく」「かわいらしく」のような多数が好みそうな方向にだけ寄せるものでも「男性受け」「就活用」のような不特定多数に評価される前提のものでもなく、自己表現として、なりたい姿になる一つの手段としてメイクをすることについて、どこか遠くの他人の話でなく自分事として受け入れられた瞬間でした。

もともと凝り性なので、メイクを始めてみてからはいろいろ調べながら試してみて、パーソナルカラー診断も受けてみたりして、少しずつ、自分に合ったアイテムを選べるようになったり、自分のなりたい雰囲気に近づけるようになったりしていきました。
メイクを始めてから2年ほど経ち、今では気分で使う色を変えてみたり、新しいコスメを試してみたりと、メイクを楽しめるようになりました。

私は今でも女性はメイクをしなければならないという押しつけには大反対だし、自分が結果的に楽しめるようになったからといって他の人もみんなそうなるとは思っていません。なる必要もないと思っています。
メイクをしてもしなくてもその人の自由なはずなのに、この社会では「メイクをすること」に余計な意味が付きすぎていて、それが、みんなが自分自身のなりたい姿になれる道を邪魔しているように感じました。

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