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恋愛 短編小説

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企画参加させて頂いた時に書いた、主に恋愛を題材にした作品を纏めています。
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記事一覧

帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

帰りたい場所… 1859文字#青ブラ文学部

「河瀬さん、今日飲みにいきませんか?」

………また来た。

冷たくて冷酷かもしれないけれど、私は声をかけられて直ぐにそう思った。

「今日は、両親と晩御飯を食べる約束をしているんです。」

何となく浮かんだ理由を伝える。勿論、絶対に信じてもらえないというのも分かって言っている。

けれど、心の中では思ってる。

この理由を聞いて、納得して欲しいって…。

「そうなんですか?……じゃあ、仕方ないで

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君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

「私は、上原みたいな人…絶対に好きにはならない」

「私は、私が1番大切だから…」

彼女に言われた言葉は、今でも俺の頭と心に残ってる……。

◈◈◈
「上原〜、お前また女の子振って泣かしたんだって〜?」

大学の近くにある居酒屋に高校時代からの友人、松下と飲みに来ている。

「ふってねーよ。俺が振られたんだよ」

「でも、そのお前を振ったっていう女の子、泣いてたって言ってぜ?」

「………とにか

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永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

永久欠番の恋 2390文字(永久欠番のあなたへ)#青ブラ文学部

女性は恋を上書きして、
男性はファイル別の保管をする。

よく、男女の恋愛においての記憶の仕方を、上の様に例える。

俺に限って言えば、その通りだな…なんて思う。

⚓⚓⚓
「はぁ〜、まだ先は長いな…」

俺はクルーズ船の船員をしている。

俺の乗るクルーズ船は半年で始発地から目的地へ行き帰ってくるクルーズ船で、その半年は休みなく働き、残りの半年は、ほぼ休暇になる。

だから、まあ、大変だけど、楽

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ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

僕は、いつも待っている。
静かに……
そっと……
ずっと………。

◈◈◈
彼女の邪魔にはなりたくない。

それに、彼女の事を一人で思う時間も嫌いではない自分が居る。
けれど、いつも待ってばかり居る僕の姿は、友人である政時(まさとき)の目に少し余るようだ。

「いつまでこんな半端な関係でいるつもりだ?」

「中途半端って?……彼女との関係の事?」

「他に何があるってんだよ!」

「…………ないね

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手放した恋心(セピア色の桜) 1307文字#青ブラ文学部

手放した恋心(セピア色の桜) 1307文字#青ブラ文学部

桜を撮った写真を現像して、何年も部屋に飾っておいていた。

そしたら太陽の光で写真は日焼けをし、綺麗で鮮やかなピンク色をしていた桜の写真は、『セピア色の桜』になった。

私は、その写真を飾ってあった写真立てを手に取り、スーッと表面を撫でる。

「………もう、そんなに経ったの……」

私が手に持っている写真立ての中のセピア色の桜には、ある人が写っている。

私の初恋で、初めての失恋した人。

この写

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記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

誰も知らない。
暗々裏に、今も昔も出来ている。

最後はきっと呆気なくて、破滅が待っている事はわかっているけれど、やめられないし別れられない。

不倫している訳じゃない。
だけど、両想いでもない。

私はただ、彼の好きな人が彼に振り向いてくれるまでの繋(つなぎ)で、私と彼の間に恋愛関係なんてない。

『好き』っていう感情は、彼には全くない。…………私には、あるけれど………。

私と彼は、高校の同級

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片思いの上司 (恋愛短編)

片思いの上司 (恋愛短編)

胸の鼓動を感じる。トキメいている。
……こんな風に男が思うのは可笑しい事なのだろうか?
でも、俺はトキメいている。

会社の上司でもある女性に。

「榊原ー、会議で使う資料出来た?」

「は、はいっ!出来ました!」

「それじゃあ、会議室行くよっ」

俺の名前は榊原 充(さかきばら みつる)上司の名前は田中 美麗(たなか みれい)さん。
俺は、美麗さんに恋をしている。

__________✤✤✤

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想いと恋心(短編小説)

想いと恋心(短編小説)

大事にしたい。
彼の心も体も。この2つがとても大切なものだから。

「神山選手。そろそろです」

私のいつものルーティン。私の仕事はレースクイーン。私はだいぶ特殊なレースクイーンで、レース直前になると、ドライバーを呼びに行くことを任されている。
私が任されている人は、レース前、とてもナイーブになる人だ。けれど、一度走り出せば有り余る才能を爆発させる。………そんな人。

「………神山選手?」
あら?

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一緒の帰り道 1561文字#シロクマ文芸部

一緒の帰り道 1561文字#シロクマ文芸部

桜吹雪の舞い上がる校庭で、運動部が活動している。

私は美春(みはる)高校2年生。
私がお付き合いをしている彼は善正(よしまさ)

彼は野球部に入っていて、月曜日の休み以外は、毎日朝早く学校に来て、授業を受けて、夜の7時までみっちり部活をしている。

正直言えば、なかなか一緒に遊んだりも出来ないし、月曜日の休みであっても、他の友達と予定を立ててあったりして、本当に中々遊べないし、一緒に居られない。

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駄目……、恋心 1585文字♯シロクマ文芸部

駄目……、恋心 1585文字♯シロクマ文芸部

朧月になった夜のこと。

私は、親友が片思いをしている男友達の『隼人(はやと)』とたまたま会い、荷物の多かった彼の荷物運びを手伝うことにした。

彼の家に荷物を置き終えて帰ろうとすると、彼に引き止められた。

昨日たまたま通りがかったケーキ屋さんで値引きされていたケーキを買ったが、自分は甘いものが得意ではないから変わりに食べて欲しいと言われたのだ。

この後、私に予定はないし、ケーキという消費期限

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今度、貴方に出会うのは… 2014文字#シロクマ文芸部

今度、貴方に出会うのは… 2014文字#シロクマ文芸部

『閏年』と言われる月の年に、貴方と出会った。

後に、女王となる、貴方に……

◈◈◈◈
「……ですから、嫌です。お断りします」

「何故なのっ!?私がこんなに頼んでいるというのに!」

「頼んでいるってわかっているなら、何でそんな偉そうなんです」

「……え、偉そうって何よっ!!」

彼女との出会いは最悪だった。

いきなり話しかけて来たかと思ったら、「どこでもいいから連れて行ってほしい。ここか

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夫婦梅(めおとうめ)1119文字#シロクマ文芸部

夫婦梅(めおとうめ)1119文字#シロクマ文芸部

梅の花が咲いたら、貴方と初めて会った時を思い出す。

✤✤✤
私は由緒ある家の三女として生まれた。
けれど、私は5人居る姉妹の中で一番鈍臭く、頭も良くなくて、おっちょこちょい。

父には、他の姉妹の欠点になりえたものを私が全部持って生まれてきたと言われる始末。

それでも、父と母は、私を愛してくれた。それは痛いほど分かる。
だからこそ、何もできない私が嫌なのだ。

そんな時、私の縁談が舞い込んでき

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移ろう恋慕 801文字#シロクマ文芸部

移ろう恋慕 801文字#シロクマ文芸部

『雪化粧をした山々は、綺麗ね。』

確かに雪で覆われた山は白くて、とても綺麗。

でも、そんな山の降り積もった雪も、いつかは溶ける。溶けて、また雪が降れば白く降り積もる。
その繰り返し。
その繰り返しはまるで……

まるで………

◈◈◈
恋多き人間。
私はきっと恋多き人間で、恋をしては別れ、恋をしては別れの繰り返し。
何でそんなに繰り返すの?
そんな事を聞かれたら、私は素直に、私はただ恋をしてい

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貴方の言葉で…。1344文字#シロクマ文芸部

貴方の言葉で…。1344文字#シロクマ文芸部

新しい靴を履いて友達に会ったら言われた一言。

『その靴、百合ちゃんに似合ってないね!』

……友達はきっと何も考えずに言ったんだと思う。思ったことが、そのまま飛び出した。そんな感じ。
けれど、私にとってのその靴は、母におねだりをして買ってもらった大切な新しい靴だった。

けれど、私はこの時以来、その靴を履くことはなくなった。母にどうして履かないの?と聞かれたから、大切すぎて履くのが勿体ないと、嘘

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