【第22回】日韓通貨スワップ協定再開 事実上のウォン救済となり韓国が利用 

 日本と韓国は12月1日、6月29日に開催された第8回日韓財務対話の合意に基づき、金融危機の際に通貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定を締結した。

 通貨スワップ協定とは、2国間あるいは多国間で自国通貨と外貨を交換する契約のことをいう。日韓の通貨スワップ協定によって、韓国はウォンを日本に渡し米ドルと日本円を受け取ることができる。

 通貨スワップ協定にはどのような効果があるのだろうか。為替レートは、平常時であれば、両国間の金融政策の差でだいたい決まるが、通貨危機時にはそうした理論は働かずに、一方的に自国通貨が安くなる。金融引き締めを行っても、自国経済を痛めるだけで、為替の安定化にはあまり効果がない。

 こうした際には直接的な自国通貨買い介入が有効だが、外貨準備が大きくないとそれもできなくなってしまう。その意味で、通貨危機の時には外貨準備がものを言う。通貨スワップは、緊急時に外貨が手に入ることで、外貨準備の増額と同じ効果になる。

 今回の協定では、融通枠を100億ドル(およそ1兆4800億円)とし、期間は3年と設定している。

 これまでの日韓通貨スワップに関する経緯を確認しておこう。1997~1998年のアジア通貨危機後の東アジアにおける金融協力の必要性に基づき、2000年5月の第2回ASEAN+3財務相会議(タイ・チェンマイで開催)で、外貨準備を使って短期的な外貨資金の融通を行う2国間の通貨スワップで合意した。

 この合意(チェンマイ・イニシアティブ)に基づき、2001年7月に日韓の通貨スワップ協定が締結された。しかし、2015年2月に反日姿勢を強めた当時の朴槿恵(パク・クネ)政権側から「協定延長は不要」との声が出て、打ち切られた。

 2016年8月にソウルで開催された日韓財務対話おいて、日韓通貨スワップ協定に関する議論を開始することで合意されたが、在釜山日本総領事館前に慰安婦像を設置したことに対する抗議措置として「日韓通貨スワップ協定に関する協議の無期限中断」を日本が発表した。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になってから韓国財界の意向もあり、再開機運が高まり、今回の協定締結に至った。その背景には、現在、韓国経済が低迷しているであり、いつ通貨危機に陥っても不思議ではないからだ。

 日韓通貨スワップは、建前として日韓両国間の双務契約であり、事実上ウォン救済であっても、外交的にはそうは言えない。だから、外交上の手段にもなっていて、それを韓国が利用している。

 韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊機へのレーダー照射問題などが未解決のままであるのに、韓国に譲歩するのはいかがなものか。岸田文雄政権の対韓外交に関しては、目に余るものがある。毅然とした対応が求められる。

 

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