シェイクスピア全集(松岡和子訳):㉓ トロイラスとクレシダ/㉗ヴェローナの二紳士/㉘尺には尺を/㉙アテネのタイモン/㉝終わりよければすべてよし
シェイクスピア全集を読もう!シリーズ第5弾。
今回も5冊まとめて。
1.『シェイクスピア全集23 トロイラスとクレシダ』
全然知らないタイトルだったけど、「トロイラス」という名前からしてトロイ戦争に関係するのかな?と思ったらやはりそうだった。
いつも通りたくさんの人が登場して確認するのに大変だけど、パリスとヘレネ、アガメムノンやアキレウスなど、うっすらと知っている名前が出てきてうれしくなる。
「トロイ戦争」と言えば、有名なのが木馬に潜む兵隊たち、あのシーンはいつ出てくるのかな?と期待したけど、そんなシーンはなく。
解説によると、「トロイラスとクレシダ」には、元ネタがあるそうで、およそ3世紀前に作られた話を、シェイクスピアの時代の社会コードにあてはめて演じられたようだ。
2.『シェイクスピア全集27 ヴェローナの二紳士』
バタバタしながら最後は丸く収まるいつものパターンなんだろうなあ、という予想通りだったが、ストーリー展開は、唐突すぎ。
いくら変装したって、自分の恋人の見分けくらいつくだろうに、というのはもう慣れたが(笑)、ここまでひどい裏切りをそう簡単に許せるものか。すべて結末ありきの強引なねじ込み。。
まあ、セリフが秀逸なのと、これを美男美女の俳優が演じれば、それなりに面白いんだろうか。
それにしても許せん!
3.『シェイクスピア全集28 尺には尺を』
タイトルだけ知っていたが、内容は全然知らなかった。
宗教的な話がやや出てくるところは異色といってもいいが、全体の展開としてはお決まりのパターンだ。
変装がなぜかばれないのは、またか、と思うが、もう慣れたので、そういうものだ、と思って安心して楽しめもする。
女性の気持ちを無視したような展開を差し引けば、無駄に血が流れることもないし、登場人物全員が、完全な悪人でも、完全にできた人間でもないところがむしろリアルに感じ、後味は悪くない。
4.『シェイクスピア全集29 アテネのタイモン』
今まで読んだシェイクスピア作品の中で、最もつまらなかった、といってもよい作品。
財産をばらまいて寄ってくる取り巻きを「友達」と思っているタイモン。いざ困ったときには誰も助けてくれない。数ページも読めば予測がつく展開をだらだらと続け、テンポは悪いし、設定は雑(タイモンの生い立ちとかもよくわからない)だし、伏線回収もなく尻切れトンボ気味に終わるし。
せめて内容に関係のないしゃれた会話だけでも楽しみたいところ、下品な下ネタが連発される。
「誰も助けてくれない」わけでもなかった。こんなどうしようもない主人を、召使たちは忠実に助けようと奔走する。それなのに、タイモンは彼らに冷たく当たり、進言も聞き入れようとしない。
どこかでそんな設定があったような?と考えて、「リア王」を思い出した。リア王は正直な娘の言うことを聞かずに邪悪な娘のほうを選んでひどい目に合うのだ。似ているじゃないか。
と思ったら、訳者あとがきにもあった!
「信じるべき人を信じず、信じてはいけない人を信じ、聞くべき言葉を聞かず、聞いてはいけない言葉にばかり耳を傾けた」代表は、オセロー、タイモン、リア王。
シーザー、トロイの王族、マクベス、アントニー、コレオレイナスなども、程度や質は違っても、同じ心的行動をとっている。ロミオとジュリエットやハムレットにはこれが当てはまらない。などなど。
訳者あとがきが一番面白かったか。
そういう意味では読んでよかった。
5.『シェイクスピア全集33 終わりよければすべてよし』
ストーリーとしては、さして面白いわけでも感動的でもないし、変装したり暗闇だと相手を勘違いする、またあのパターンかい、とあきれたりもする。
逃げる男性を女性が追いかけ、ものにしようとするパターンや、女性が手に職を持っているという設定はやや珍しいともいえるが、逆に好きでもない女性と結婚を強要されるバートラムもちょっとかわいそうになったりする。
「おわりよければすべてよし」と思っているのは、フランス王だけで、他の人々はどうなのか?
ただ、会話のリズムは十分楽しめた。
たくさん読んでリズムやパターンに慣れたせいもあるし、訳者の松岡氏もこれで最後、と思ってかなり気合を入れたんではないかという気もする。
これで、全集33巻のうち、悲劇、喜劇や問題劇はすべて読んだけど、長そうな歴史劇7冊は丸々残っているので、今度は年代順にでも読んでいこうと思っている。
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