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【連載小説】リセット 9

 東京へ戻った芳樹は幸子に連絡を入れた。
 その後何度か連絡を取り合い、お互い馴染んできた間柄になっていった。

 芳樹が故郷から戻って三カ月ほど経った頃、幸子が東京に来ると言い出した。ただ遊びに来るということではなく、引っ越してくるという。

 ある日、幸子から芳樹に電話があった。
「私、東京へ行くわ ! 」
「両親は了解しているの?」
「説得した。始めは反対したけど、しぶしぶ了解したわ」
「東京で教員するわけでもないよね」
「そう、お茶ノ水小学校の教員として勤めることになったの」
「それは良かった」
「いつから」
「今週にはそちらに行きます」
「叔父さんの松江教授に相談したの?」
「今回、叔父には住まいやら、何かとお世話になったわ」
 内心芳樹は喜んだ。幸子は四月から教員として、お茶ノ水小学校の一年生の一クラスを担当することになった。

 その後、芳樹は度々幸子と会った。幸子の明るい人柄に惚れた。それでいて実直な性格も芳樹は好んだ。
 二人は夫婦の在り方、人生の生き様、趣味、自分の嫌いな面や好きな面など、とことんオープンに裃を着ず、あからさまに相手にぶつけた。
 お互い結婚を考えるようになった。新庄に二人で行く前に、松江教授宅を芳樹が訪問し報告しようと考えた。
 しかし、麦酒会社の営業は毎晩遅い。ついつい間延びしてしまい、幸子に怒られてしまった。そして芳樹は報告がてらその日、松江教授宅を訪問したのであった。

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