見出し画像

【連載小説】リセット 1

   北島芳樹は、大学在学中、法学部の松江教授のゼミに参加し、教授のフレンドリーな性格に甘えた。教授も芳樹に対して親身に接した。
 芳樹は自分の悩みを気軽に教授に相談できた。その大学のゼミは二年生からで、各学部の専門分野等についてより深く学んでいくための授業で、その教室に十数人程度集まり、教授を中心に専門的な学習をした。
 芳樹は自分に合ったゼミの選択が、たまたま松江教授のゼミだったのである。
 
 芳樹は卒業後、大手ビール会社に就職した。仕事は外回りの営業である。
 新橋のあるスナックに取引先の担当者と行ったことがあった。何回か通っているうちに、そのお店の女性の一人に惚れた。彼女の名前は美代と言った。
 結婚式は挙げなかった。入籍後、気の合う仲間でささやかなパーティを大学の近くのホテルで催した。
 当初、二人は幸せだった。しかし、二人の結婚生活は徐々にチグハグになっていった。お互い相手に対する思いやりが薄れ、わがままな人間本来の良くない面が頭をもたげてきた。
 その溝を修正することなく別れた。表向きはそのような理由になろうか。
 結婚して二年後だった。あまりにも安易な離婚に至ったようにみえた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?