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【連載】しぶとく生きていますか?⑦
我が家に戻った茂三家族は、クジラの肉を食べた。美味しかった。
「母さん、うめえな」と茂三は妻の淑子に、焼酎をぐいと引掛けながら話すのであった。
「あんた、顔の傷にさわるから、あまり飲んだら駄目だべさ」と言いながら、調理したクジラの肉を眺めながら嬉しそうに茂三をたしなめた。
「おれも少しもらっていいか?」と一茂が箸をだす。
「ところであんた、明日は早くに庶野に行くんだべ」淑子がクジラの肉を頬張りな
【連載】しぶとく生きていますか?⑤
ほっとするまもなく、茂三は駐在所の田所とともに、庶野で一軒しかない神峰診療所にむかった。
診察の結果、左頬の傷口は、ヒグマの爪が意外と深く入り込み、一部肉が抉られていた。
傷口を消毒し軟膏を塗り包帯を巻いた茂三の顔は、痛ましい姿であった。しかし、茂三はこれくらいの傷には動揺した顔を見せず、平然としていた。診療に当たった神峰医師は、茂三の泰然とした態度に内心驚いた。
茂三は顔の怪我よりも、手
【連載】しぶとく生きていますか?②
「おーい、クジラがトンネルの向こうの岩場に流れ着いているぞ」
家に戻った茂三が、家に入ってくるなり大声で叫んだ。
茂三、妻の淑子と七歳になる息子の一茂の三人が、取る物も取り敢えず十分ほどの隧道に走った。
「クジラのほかに獰猛な動物を見掛けたら、直ぐ家に戻るぞ」と茂三は歩きながら二人に話した。
「父さん、その動物ってなに?」と息子の一茂が聞いた。
「ヒグマのようだ。多分そうだ」幾分緊張した様子で
最近、クジラ肉(ベーコンなど)食べていないですね。食べたいな--
クジラといえば、いま「白鯨」を読んでます。しんどい!
熊肉は昔食べました。 ゲテモノ喰いの私です。ジビエ料理ですね。
ジビエとはフランス語らしいです。
来週からまた、連載始めます。読んでいただければ、有難いです!
【連載】私たちは敵ではない(15)
その別れは突然やってきた。
我が家の裏庭の狸の家では、雌の子狸がそろそろ独立する時期になっていた。親元から旅立ち、自分で餌を探し、生きていくのだ。
その年の晩秋、子狸が出立の朝が来た。
夕べは皆で送別会を盛大に催した。お袋は別れたくないと駄々を捏ねた。
子狸はお袋に「おばあさん、立派な家族を引き連れて遊びに来るからね」といって、お袋に抱きつき、肩を震わせていた。
お母さん狸は「
【連載】私たちは敵ではない(14)
お袋は朝が早いので、夜は早めに床に付く。
両瞼が閉じだしたら既にスリープモードである。
裏庭の狸御殿から狸一家が遊びに来る時刻には、すでにお袋は寝ていることが多いのだ。もっぱら狸の話し相手は私に相場が決まっている。狸と様々なことを話し合う。
例えば、生物はどうして、人間や狸や馬や牛や他の動物、また小さな虫などに差別化されてこの世に生まれてくるのかとか、同じ人間に生まれてきても裕福な家庭に
【連載】私たちは敵ではない(13)
犬を飼っているお宅のご主人は、最近、会社を定年で辞めて毎日犬を連れて散歩していた。
それも多いときで一日六回も散歩するのだ。いい加減飽きがこないものか。
昔から知っているご主人であったので、道端で会うときは、挨拶するのだが、捕まったら長い。
三十分でも一時間でも話すので、適当な区切りを見つけて切り上げないと、そのあとの私の予定が狂ってしまうのだ。
柴犬二匹と秋田犬二匹それに土佐犬二匹飼