【連載】私たちは敵ではない(8)
年が明け、春風が吹く季節になったある日、
妹から連絡があった。
「兄貴にいい仕事があるらしいんだけど、どうする?」
「どういう仕事だい」
「なんでも、事務の仕事らしいよ」
「通勤時間は車で三十分足らずの所だとか」
「三十分なら丁度いいかもな」
「いいでしょう、兄貴」
「誰の紹介なの?」
「旦那が知り合いから、誰かいないかと、聞かれたらしいよ」
「う―ん?」
「急なんだけれど、明日面接に行かない?」
「明日か?」
「そうなのよ、どうする? 旦那が先方に返事をするといって会