安芸高田市石丸市長を応援する人たち・ポピュリズムの時代(5)石丸市長が成し遂げた仕事はあるのか・銀行の小さな体験に基づく「政策」

■私の石丸市長歴は長い
 私の石丸市長歴は、選挙に立候補したときからである。ブームになって、にわか石丸市長ファンになった人よりも、ずっと歴史が古い。
 銀行を辞めて地元に帰ってきて、地元のために働くという。応援しないでどうする。だから、石丸市長の政策は、最初から見ている。
 しかし、その期待は、どんどんと萎んでいき、今は、第1回目に書いた仮説になった(市長には向いてないと気がつき、ひろゆき的立場を目指す)。
 ずっと見てきて、その政策能力はどう贔屓目に見ても凡庸。実際は前の市長にも及ばないだろう。
■銀行における位置や仕事の内容が見えてくる
 石丸市長とは、職場の仲間でも友達でもないので、銀行における仕事ぶりはよく知らない。
 しかし、安芸高田市における仕事ぶりから見ると、銀行における位置や仕事の内容が見えてくる。
 日本の銀行は保守的で異質なものを毛嫌いする。組織内の行動原理は、「和」なので、そのなかで、それが苦手な、石丸市長は、苦しんだのではないか。
 その銀行で、多くのことを学べば、それが安芸高田市の市政に生きてきたのではないかと思うが、結局、学ぶことが少なかったように思う。
■都市マスタープランをつくった
 コメントに、石丸市長の成果として、都市マスタープランをつくったというのがあった。なるほどそう考えるのか。
 しかし、都市マスタープランは、都市計画区域がある市町村ならば、策定が義務づけられている。どこでも作っている。
 無理もないと思うが、こうした「基本的事実」を知らずに、評価している人が多いだと思う。もし都市マスタープランの策定が、市長の成果だとすると、全国の自治体の市長は、みな優れた成果を上げたことになってしまう。
■石丸市政の成果を見つけるのが難しい
 最初からの石丸市長歴で元応援団である私とすると、石丸市長の政策成果を見つけたいが、なかなか見つからない。
 ブログ「安芸高田市応援!市政刷新ネットワークの誤りを正す通信」に参加して応援団の人たちに、石丸市政の成果を聞いたが、応援団からは出て来ない。
 第2回で見たように、行政改革がかろうじてあがったが、その成果も怪しいし、何よりもカットして、どうするかのビジョン(政策)がない。
■実態がないのになぜ人は狂喜するのか
 「石丸市長が成し遂げた仕事はあるのか」は、何回か続いたが、地方自治の旗手と喧伝されているのに、まるで、その実態がない。
 しかし、実態がないのに高い評価をされている。石丸人気は一時のことだと思うが、実態がないのになぜ人は狂喜するのか。もしそこに、ナチス党が提示したような、それなりの実態が伴ったらどうなるのか。そこがポピュリズムを考えるポイントだと思う。
 
1.コストカット
■役所は生き残るが市民は疲弊する=銀行は生き残るが中小企業はつぶれる
 石丸市政のほとんど唯一と言ってよい政策は、コストカットである。これは第2回に見たように、委託や補助を減らし、お金を浮かしている。
 安芸高田市と言えば、地域活動や市民活動で有名だった町であるが、これらを担っていた市民は、予算をカットされ疲弊しているだろう。この人たちが担っていた、福祉や環境、まちづくりの活動が、低迷し、停滞し、市民生活に影響を与えているだろう。
 こうした町の人たちの活動は「無形の資産」で、日本全体で、人口減少がますます進むなか、支出をいくらかットしても追いつかない。考えるべきは、こうした無形の資産を掘り起こし、活用するのが、唯一の生き残り戦略なのに、それを壊している。
 カットで役所は生き残るが市民は疲弊する。ちょうど、融資の引き上げで銀行は生き残るが、中小企業はつぶれるという、いつか見た姿にかぶって見える。
■カットして何をするのか。これがない
 自治経営は、銀行と違って、お金を浮かして貯めればよいわけではない。余るということは税金の取りすぎなので、返さなくてはいけない。貯めるのならば、貯めて、そのお金を何に使うという計画を示さなければいけない。
 結局、政策がないので、カットして何をやるのか、そのビジョンがない。政治再建、産業振興、都市開発、そのどれも、浮かした金で、これをやるからという明確な提案もスケジュールもない。 
 それを示されずに削減では、安芸高田市民は、当惑するばかりだろう。

2.子どもの職場参観
■子どもの職場参観

 石丸市長の提案で、子どもの職場参観が行われている。職員の子どもに親の働く姿を見てもらうというものである。石丸市長にしてはアットホームな仕事である。
■銀行の体験から
 この事業は銀行で、こうした活動があったので、考えついたということである。公私を峻別し、私的なことに行政は関与しないという石丸市長の流儀からは、この事業は、その流儀に反するように思うが、そこまで体系的に考えてはいないのだろから、やってみて悪いということではない。
 ただ、今は職場旅行はなくなり、最近では、年末の飲み会なども成立しない時代のなかで、職員やその家族の受けとめはどうなのだろう。
■合意形成のいらない仕事
 この事業の特徴は、対象が職員なので、市民等との合意形成がいらない仕事ということである。合意形成が苦手でも、これは市長がやるぞと言えば、やれる。
 その分、職員や家族は、不本意でも参加することになるが、割り当てになっていないければいいと思う。

3.勤務時間は8時半からであるが、窓口の受付時間を9時からにする
■30分受付時間を遅らせる

 それまでは勤務開始時間と受付時間は同時だった(8時半)。制度を変えて、始業時間はそのまま8時半であるが、市民からの申請等の受付時間は9時からにして、30分遅らせた。
 それまでは始業時間開始前に、あるいは業務中の合間に、打ち合わせを行っていた。それが30分も時間があるので、職員は、その間、お茶を飲み、ゆっくり仕事の準備ができる。
■銀行の支店のやり方
 これは銀行の支店のやり方である。9時からの開店前の8時半から朝礼等を行う。そのやり方を市役所に導入したのだろう。
■他の町だと駅前のサービスコーナーを設置してサービス低下を防ぐ
 他の町でも、勤務開始時間と窓口受付時間を変える例はあるが、その場合、駅等にサービスコーナーを設置して、通勤途上で手続きができるようにして、その間のサービス低下を補う措置を講じるのが普通である。
 もちろん安芸高田市にはそうしたきめ細かな措置はない。いかにも安芸高田市らしい、単発の提案である。
■地方自治の旗手ならば。働き方改革として市内の企業に働きかける
 勤務時間前に集まって打ち合わせをするようなことは、「働き方改革」に反すると私も考える。だから、受付時間を遅らせる方式は、私は賛成である。
 しかし、これだけなら職員のメリットだけにとどまってしまう。
 次にすべきは、同じようなことをやっている、市内の企業や組織に働きかけて、「働き方改革」の趣旨を伝えて、町全体で、ゆとりある暮らしになるように、推し進めることである。
 この問題を働き方改革から考えていけば、このような政策になっていくが、銀行のやり方を持ってくるというだけでは、職員のメリットだけにとどまってしまう。 
 残念ながら、安芸高田市石丸市政には、そこまでの戦略性はない。

4.銀行の小さな体験を越えられない
■銀行の小さな体験

 このように石丸市長が提案する「政策」は、銀行(支店)における体験をベースとするものである。
 むろん、人は自分の体験や経験から発想することは自然のことであるが、そこにとどまらずに、発展させるのが政治である。
 自分でアイディアが出ないのならば、人から学び、発展させればよいと思うが、それが苦手なので、新しい政策を打ち出せない。
■企画やプロジェクトの体験がないのだろう
 石丸市長の年齢では、経営陣にはなれないが、30代という年齢は、経営陣をサポートする企画等を担当する年代である。しかし、この才気活発な時期に、石丸市長には企画づくりやプロジェクトを体験していないのだろう。
 企画というのは、究極には調整と合意形成であるから、もし、銀行時代に、その成功体験があれば、この3年半はずいぶん違っていただろう。第4回の「私が石丸市長だったら」のような提案をしていたかもしれない。 

 

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