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絶望のメリークリスマス

もう慣れて、「普通」になったが、まだクリスマスをキャピキャピしたい大学生の頃だったと思う。
それまでは、クリスマスは、ツリーがあって、電飾がキラキラピカピカしてて、カットケーキが人数分×2個色々あって、唐揚げやポテトサラダがあって、ポテチやポッキー、お菓子が菓子皿に盛られてて、スパークリングジュースがあった。
それらが突然、一切なくなった日を、鮮明に覚えている。

今年はご飯なんだろう。いそいそと帰った。
まだ、恋人なんていう存在は夢の中の時代だった。


家に帰ると、アレがテレビから流れているのが聞こえた。

「じ〜んせ〜いらっくっあ〜りゃ〜く〜もあ〜る〜さ〜🎵」

イヤな予感がしてパッとテーブルを見ると、ガスコンロに土鍋があるのである。
鍋だ。

わたしは近づいた。

しかも、寄せ鍋じゃない。

白身魚をブツ切りにしたのと大根とネギと刻み生姜に、味噌をといた自家製鍋だった。

「鍋か〜」
そんなようなことを言った気がする。
エキセントリックな母が高らかに言った。

「我が家は 無宗教です!」

意気消沈するわたしに、お姉ちゃんがぷっちんプリンを買ってきてくれて、それを食べながら、我が身のクリスマスを諦めたのだった。

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