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「できた!」を味わう瞬間***MTBでローラーコースター

私がマウンテンバイクに出会ったのが去年の9月。
それから1年ちょっとの間に自分の人生が本当に大きく変わったなあ、とつくづく思う。

乗り始めは、トレイルも全然知らず、とにかくグループライドを見つけては参加していたのだが、他のライダーのスピードに全く付いていけず、スタートするやいなや数秒でグループからはぐれる。少し行ったところでメンバーたちは待ってくれているけど、全員揃ったところで再スタートすると、また数秒でみんな見失うの繰り返し・・・(笑)。

それで、グループライドに参加するのにも少し気が引けて、それまで行ったトレイルの中で、最も初心者向けの乗りやすそうなトレイルに一人で出かけて、練習し始めた。マウンテンバイクのスリルや、トレイルで過ごす時間がとても新鮮で、一人でもライドに出かけるのはとても楽しかった。トレイルで出会う他のライダーたちと挨拶したり、新しい世界が広がっていく気がした。

しばらく一人で乗りに行く日が続き、そのあと、初心者向けの講習会へ行ってみたりして、再びグループライドにも挑戦するようになった。そこで出会う他のライダーにアドバイスをもらったり、一緒に乗れる友達ができてからは、自分より上手なライダーの乗り方を注意して見たりして、回数をこなしていくうちにだんだんと乗れるようになってきた。

マウンテンバイクの醍醐味のひとつは、テクニックが必要だということ。トレイルでのマウンテンバイクライドは、普通に「自転車に乗れる」と高をくくっていた私が面食らうほどに、全く別世界のものだった。木の根の張ったでこぼこの地面、岩でゴツゴツした地面、急斜面の上り下りなど、普通の自転車だったら、絶対に降りて自転車を引きながら歩くであろう道をゆくのだ。

だから、少しずつ慣れて、乗れるようになってきたのを感じれるときや、前はバイクから降りて、歩かなければならなかったセクションを乗りこなせるようになったりすると、声を上げてしまうほど本当に嬉しくなる。それから、ほんの少しの体の使い方で、前よりもずっと体が安定したり、自分の乗り方の質が上がったのを感じられると、とても大きな大きな達成感を味わえる。

先日、そういった大きな大きな達成感を味わえた瞬間があったので、それを記録しておきたい。


先週末、一番気に入っている、自宅から車で1時間のトレイルで友人と待ち合わせ、地元のライダーたちに人気の「ローラーコースター」と呼ばれるセクションで遊んできた。この「ローラーコースター」のコースを説明するとこんな感じだ。

まず、スタート地点から、傾斜60~70°はありそうな土でできた急斜面を高さ15mほどの高さからブレーキをかけずに駆け下りる。

ほんとにこれくらいの傾斜


下ってきた勢いだけで、そのまま登り斜面を高さ約5mほど登りきると、小さな丘の上でバイクごとジャンプできるようになっている。もちろん、ジャンプは初心者には難しいし、ジャンプしたくてもテクニックがなければ車体は宙へは浮かない。


こんな風に派手に飛んでみたい

そこを超えるとすぐに右へ急カーブがあり、バームと呼ばれる、すのこ状の板の壁が設置されている。壁と言っても地面と垂直ではなく、斜めに倒れた形状なのでそのバームの壁に勢いで乗り上げて渡っていく。

バームのイメージ

バームを降りた後は、ゆるいアップダウンをスピードを殺さないよう進んでいき、最後の難関の登りへ。最初に下った分と同じ15mほど高さのある、急な登り坂を勢いをつけて駆け上っておしまい。この登りに差し掛かる前にしっかりと加速しておかないと、登り切れずに急斜面でバイクを降りるはめになる。しかし、急斜面の途中でバイクを降りると、バイクの重みを支えながら立っているのも大変なほどだから、十分注意が必要。

スタート地点から時計回りにぐるりと1周回って、全行程がバスケットボールコート2つ分くらいに収まるくらいの大きさだ。

このローラーコースターのセクションには、いつも数人のライダーたちが集まり、仲間たちと順番に何回も繰り返し乗って、遊んでいるのだ。私は、このトレイルで乗り始めて今まで、スタートの急斜面をブレーキなしで下っていくのに精いっぱいだった。だから、皆がジャンプをする一番スリルのある小丘の天辺では、勢いで体だけが前に放り出されたりしないように、乗り越えるのがやっとだった。

中には下ってきた勢いで、バイクが宙に放り出され、意図していないジャンプをしてしまうひとも時々見かけたが、コントロールされていないジャンプは着地もコントロール出来るわけがなく、危なくて、見ているだけで冷や冷やする。

マウンテンバイクのテクニックについての説明などで良く使われる表現のひとつに、バイクがコントロールできている自分が「パイロット」である状態と、バイクに乗せられている「パッセンジャー(乗客)」の状態というのがある。どんな体制になっても、自分がバイクをコントロールできている「パイロット」である状態を保つことが、安全に、そして早く乗れるようになる条件となる。

だから、私がローラーコースターを乗るとき気をつけていたのは、小丘の天辺に来た時に、体だけが前に放り出されないように、両手でバイクのハンドルバーを前方に押し出すようなモーションを入れることで、前方方向へ動いている自分の体の重心の真下にバイクも持ってくるというイメージで、登りと下りが切り替わる丘の天辺で、両車輪を地面から浮かせることなく、かつバイクの上で体のバランスを失わないことだけを心掛けて乗るようにしていた。

ところがその日、3回目くらいになって、急斜面を駆け下りるときに、ペダルの上で体のバランスを保てている感覚があり、体のポジションが安定しているのを感じることができた。スピードは出ているが、ペダルに乗っている足から体まで安定しているので気持ちに余裕がある。バイクと体が一体になっている感じがした。登りに差し掛かかり、そのままバランスを保ってバイクと一緒に体の重心も自然に移動させたら、車輪が地面から離れてふわっとした!

ほんの少しだけど、たぶん0.5秒くらいだったけど、ジャンプした!

一瞬だけど、バイクと一緒に宙に浮いた!!

この感覚!!!

点と点がつながって線になったように
接触のよくなかった同線に電気が通って電球にピカっと明かりが灯ったときのように
何かが音を立ててカチッとはまったときのように

体が感覚をつかんだ瞬間!!!

これだ!


バームを通って、最後の登りを駆け上がって、仲間のいるところに戻ってきても、ずーっと上の前歯が全部見えるくらいに大きな口を開けてバカみたいな笑顔がとまらない。みんなが今の見てたのか、見てたとしてもたいした風に見えてなかったかもしれないけど、そんなの全然気にならない。だって、この感覚は私だけのものだから。

子供のとき、逆上がりができるようになったときや、初めて補助輪なしで自転車に乗れるようになったときや、鉄棒で初めて飛行機とびができるようになったときのような気持ち。自分より年上の子たちがやっていて、自分がうまくできなかったことができるようになったときの感覚。

他のライダーが次々にローラーコースターの坂を下っていき、気持ちよさそうにジャンプするのを見て、羨ましく思っていたけど、私にもできそうな気がする!遠くにあると思っていたものが、手の届きそうなところにやってきた感じがした。

顔はにんまりと大きな笑顔が止まらないまま、もう1回やってみる!といって繰り返し挑戦する。うんうん、イイ感じ。そんなに高くは飛んでいないけど、たぶん飛んでても10センチくらいかもしれないけど、飛んでる本人の爽快感といったら!!こんな高揚感、子供のころ以来、何十年ぶりにだろう?

忘れていた、子供のころの感覚を呼び覚ましてくれる。それがマウンテンバイクの魔法だ。今まで、難しいと思っていた「ローラーコースター」が、今日、一番楽しいセクションに変わった。こんな風に、大きな変化を味わえる日が来るなんて。

今日という日を境に、私のMTBライドはひとつ上のレベルへとあがったのだ。こういう嬉しさをもっともっと味わいたい。また次に「ローラーコースター」に乗りに来る日が楽しみだな。






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