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お金のために文章書いてるの?

金がなさすぎる。だって1ヶ月以も無職だから。原稿もほぼ書いてない。依頼してもらったものは書くけど、それ以外の仕事はしてない。

「ライターもう辞めたいんですよね」

去年いろんな人に相談したけどみんな口を揃えてもったいないと言った。そうかーもったいないかあ、と思いつつも、もう無理に原稿仕事しなくていいかなあとおもいながらも、なんだかんだで去年は仕事を続けていた。

仕事の原稿は依頼されたものや、取材してみたい人を編集者に相談したりしながら、閲覧者数0のだれもみていないブログやiPhoneのメモ帳にエッセイや短歌を書いてみたり小説の新人賞に2作ほど応募したりしていた。

このとき自分にとっての「書く」ことの楽しさ豊かさを再びおもいだし、鮮やかな気持ちが躰のなかに戻ってきた。わたしのやりたかったことってこれだったのかもしれない。

いつからか原稿仕事よりもバイトのほうが稼ぎがよくなった。なんなら、バイトのほうが楽しくなってきて。年末、明日グラビアアイドルの取材があるんですけどいけますか、と知人の編集者からLINEがきたとき、バイトなのでごめんなさいと断った。
今まで仕事を断ったことは一度もなくて、こんなわたしにも仕事を断る勇気があったんだとちょっとだけ感心したし、すこしだけギルティーを抱いた。過去の自分に対してごめんって。

ライターをやめたい気持ちと、でもこれしか食い扶持ないしどうすんの、という葛藤はずっとせめぎあっている。
フリーター生活、それはそれでつらい。高校辞めてからずっとそうだったからよくわかる。
でもライターの仕事を必死にしていると、使う脳が違いすぎて自分のための文章を好きなように書くことができなくなってしまう。(使い分ける器用さをもちあわせていない)

そんなわたしの悩んでいる姿をみかねた友人からある日飲みの誘いがきた。なにを言われるか怖かったけど、案の定生ビール片手に叱咤された。

「今のももちゃん、ぜんぶ中途半端でダサいよね。そうやって原稿仕事したくないって言ってるくせに自分のエッセイは商業的なタイトルのつけかたしてるし。かといって、落ちるところまで落ちる勇気もなければ、SNSとかそういうのは使いたくない。自分はSNSをつかってここまできた癖に?別に自分はもっとやれるし人とは違った変わった感性をもってるし、そこらへんのやつらと一緒にされたくないっておもってんでしょ。中途半端なくせにプライドだけ高い。自分の人生つぶしがきくとおもってんじゃん。自分の文章自分の文章っていうけど、なにが書きたいの、なにが伝えたいの、金のために文章書きたい?てか、そもそもなんで東京にきたわけ」

なんでか、なんでなんだろう。でもわたし帰る場所ないんで。こぼれるようにでた自分の言葉があまりにも情けなくて恥ずかしい。熱い涙が滲んで眼球が溶けそうになった。

深夜2時、近所の大衆居酒屋でわたしはなにをしているのだろうか。背後から聞こえる男たちのでかい笑い声でよけいに虚しい。でも彼の言ったことはぜんぶ図星で、自分が一番よくわかってる。ただそれを人から真っ直ぐ言われるのはほんとうにつらい時期だった。先が見えないけどとりあえず今を生きていくしかなかったから。

冬のあいだその言葉たちは何度もわたしのなかを反芻した。そして同じようなことをまた別の編集者からも言われて、わかる人にはわかるんだなってことに気づくと、どこか遠い世界に逃げたくなった。でもわたしは今日本にいて東京にいてどこにも逃げることはできない。帰るところも。

春を迎えて、これまで執着していたことをすこしずつ手離そうとおもった。お金のために文章を書くとか、仕事のためにSNSをやるとか。そういうのもうやめよって。
書きたいことを書いてたらお金がついてきて、人から評価されるっていうのが理想じゃん。周りと比べたって意味がないし、そもそも書くことって競争じゃなかった。

生きてると悔しいことがたくさんあるけど、たまに立ち止まりながら、ひとまず前だけ向いて進めればいい。まあ進めなくなってもいいけど、自分が選んだことだけは後悔しないようにしたい。

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