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全然、かわいそうじゃない

私は、バブルが崩壊した直後に生まれた。
言うまでもなく、生まれた時はバブルが崩壊したという事象を理解していない。

職場でたびたび勃発する昭和vs平成トーク。
「バブル崩壊後に生まれたのか〜かわいそうだね〜。俺たちが就職した頃はさぁ…」と言われることがある。

私は、上司の昔はこうだった物語を聞くことに対して、Adoさんの『うっせぇわ』の歌詞に共鳴するほど、攻撃的な気持ちにはならない。
テレビの電源を入れてたまたま流れていたバラエティ番組を、少し真剣に観ている時と同じ感覚で上司が話す物語を聞いている。
学びになるエピソードを聞かせていただいた時は、ありがたいと思っている。

ただひとつ気になることが、物語の内容より
「かわいそうだね〜」の言葉。



私ってかわいそうなの?


私の弟は、2020年4月に大学へ進学した。
つまり、コロナ禍で大学へ進学した学生の一人だ。

第一回目の緊急事態宣言が発表され、大学の入学式は中止になった。弟は授業も全てリモートで受講していた。
理系大学のため、実験の授業が必須科目のようだが、実験者は抽選で選ばれることになっていた。
当然、サークル勧誘のために配られている、大量のチラシを受け取る経験もしていない。

私は弟に言った。

「全部リモートになって、友だちも作れないし、サークル活動もできないし、かわいそうだね。」


弟は答えた。

「別に最初からリモートだし、コロナ禍前の大学生活を知らないから、これが俺にとって普通の大学生活だよ」


コロナ禍の新入生は、入学シーズンに一度も対面で集まったことがない。しかし、入学前にライングループが作成され、インスタをフォローし合っている。サークル活動の情報収集もインスタで行い、活動の参加申請はDMで送る。
対面で会えなくても、運動部だった弟と友人はZoom上で筋トレ会を開催し、オンラインゲーム上でコミュニケーションを取っている。
彼らはキャンパスライフを謳歌しているようにみえた。


全然、かわいそうじゃない。

私が大学生の頃のように、大学の教室で授業を受けて、勉強をして、サークルに入って、友だちをつくって、キャンパスライフを楽しむ時代ではないようだ。
足を動かさなくても、SNSにハッシュタグ(#)を付ければ、人と人が繋がれることが当たり前の時代になっている。

「俺たちが就職した頃」「私が大学生の頃」は、その瞬間を生きた人しか知らない。
自分が生きている「今」が人生の全てだから、昔のことなど知らない。

全然、かわいそうじゃない。

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