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コロナ禍だからこそ本で旅を①ー『世界を歩く、手工芸の旅』

■コロナで変わってしまった余暇の過ごし方

 今、世界中の誰もが -どこかの国の大統領でもコンビニでバイトしている人でも-みんなが同時に経験していること。

それはコロナウィルスの流行です。これによってかつて当たり前だったことが当たり前ではなくなりました。

その中であなたが最も影響を受けたことは何でしょうか?

学校教育や会社での働き方がオンラインになったり、友人や遠く離れた親戚と会いにくくなったり、、、。色々ありますね。

でも私にとって一番、影響が大きかったのは余暇の過ごし方です。もっと直接的に言えば、海外に行けないこと!

■本の世界ならどこにでも

 いうほど頻繁に旅行に出かけていたわけではないのですが、「赤ちゃんが小さいし〜」とか「お金がないし〜」などの環境や経済的理由による諦めと国家による「渡航の規制」では訳が違います!

絶対に絶対に行けない…と思えば思うほど行きたくなるものです。心の中では、ポーランドののどかな森だの、バンコクのうだるような暑さだの、マラケシュの市場だの、いつも世界中のどこかに思いを馳せています。

こんな時、どこかへ連れってってくれる古典的な手段は…読書です。なんだったら場所だけではなく時間も超えてしまいます。

でもね、今、ガチな小説を読むのはちょっと疲れるかも。きれいな写真や絵を見て癒されたい。そんな時に出会った気軽に楽しめる本を紹介します。

■手工芸で旅をする

 こちらの本はアジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカの国々の手工芸品(織物や刺繍、ニット製品など)を日本に紹介している18人の女性の物語です。どの女性もバックグラウンドは異なりますが、現地を訪れてその工芸品に魅せられたのは同じ。

面白いのは現地で作られた商品をそのまま販売するのではなく日本で売れるように企画して販売しているところです。

よく考えれば、当たり前のことかもしれません。私もマレーシアのペナン島で買った服は、旅行中にはよく着たものの帰国してからはほとんど着ることはありませんでした。(その一方で、アイスランドで買ったロピセーターは冬に大活躍していますが。)

やはり、本人の好みにもよりますが、特にアパレル製品をそのまま日本で着用するのは勇気がいるので日本人好みの今っぽいデザインに落とし込むっていうのは、現地感も今どき感も二度楽しめる美味しい方法ですね。

■色鮮やかな写真に魅せられる

 18人のエピソードを1冊にまとめている構成なので、一つの国が4〜10頁程度にまとめられています。ちょっと疲れている時でも短いので飽きずに読み進められるし、好きなページから読めるのもいいですね。

日本人女性が現地の人たちと仕事していく苦労やその国や工芸品と出会った経緯などはライフヒストリーになっていて楽しいです。そして、なんといっても写真が美しいこと。紙の関係なのか、そういう趣旨なのかは分かりませんが、ちょっとざらっとした暗めの写真になっていて、それがまた色鮮やかな工芸品の魅力を伝えてくれていると思います。

グアテマラの立体的で可愛らしい刺繍やルワンダの不思議なカゴバッグ、エストニアの細かい模様のミトン、エキゾチックなインドの布などなど。ずっと眺めていられそうです。また、制作している現地の人々や街の写真もあり、実際に自分が足を運んで旅をしている気分になれました。

■女性たちの活躍に期待

 この本に出てくる工芸品を作っているのはほとんど女性です。

織物、編み物、染色、縫い物などどの作業もほとんどが工場などを持たなくても家事の合間に家庭でできる仕事だからかもしれません。昨今の世界的な男女平等に対する取り組みを考慮すると、「男は外、女は家」というのは典型的な性別役割分担にあたり、女性側としては、家に閉じ込められているようで不自由なのでは?とも思います。

しかし、この本に出てくる女性たちは手しごとを通して社会と繋がり、収入を得、経済活動もできていて、そういう形での女性の社会進出もあるのかなと思いました。また、その村にだけ引き継がれている模様や民族の歴史を語る模様を、織ったり刺繍をしたりしている点は伝統工芸ならではでその地の唯一の工芸品としての価値もあると思います。

今は先進国の人の手を借りて工芸品の受注販売ができているわけですが後に女性たちが学校教育を確実に受けられるようになれば自分たちでビジネスができるようになるでしょう。本で紹介されていたカゴバッグをいつか購入してみたいと思っています。

次回も引き続き旅した気分になれる1冊を紹介する予定です。

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