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コロナ禍だからこそ本で旅を③石井好子のヨーロッパ家庭料理

 昨日と打って変わって晴天の大阪で記事を書いているモンブランです。晴れると気持ちが上がりますね〜朝から洗濯をたくさんしました。スッキリ〜

 今日はシャンソン歌手の石井好子さんの本について書こうと思います。石井さんといえば、『暮らしの手帖』での連載をまとめた『パリの空の下、オムレツのにおいは流れる』が有名です。50年代、パリで暮らした石井さんが下宿先の亡命ロシア人のおばさんにご馳走してもらったおいしいオムレツの話を中心に、写真もないのに美味しそうな料理のにおいがぷ〜んと漂う文章に多くの人が魅了されてきたはずです。未読の方がいらしたらぜひ、お読みになってみてください。お腹が空いておいしいバタ(バターと書かないところがポイント)たっぷりのオムレツを作りたくなりますから!

 今回は、フランスはもちろん、ポルトガル、イタリア、スペイン、北欧、イギリス、ベルギー、ドイツ、オーストリアなどの家庭にお邪魔した石井さんが一緒に料理をし食卓を囲んだエッセイとレシピで構成されています。先日、紹介した『世界の台所から』で取り上げられている食卓は現代風でカジュアルな雰囲気がありましたがこちらはよりエレガント。取材対象は石井さんのお友達の歌手のご家庭が多かったです。歌手は料理が上手で食いしん坊が多いらしい。

 石井さんは取材当時50歳前後。写真で見る限り、比較的がっちりした強そうな女性です。出身はいいとこの方ですが、海外経験が豊富でこの時代にはめずらしく自由に生きたかっこいい人!そんな石井さんの家庭訪問もとっても面白いのです。では、今日も行ってみましょ〜

古き良きヨーロッパの食卓

 この本の初めにあるのは取材先での食卓の写真。私が子供の頃、大好きでみていた日曜日夜に放送されていた世界名作劇場に出てくる食卓のイメージそのものです。どの食卓にも必ず敷いてあるテーブルセンターは青だったり真っ白だったりアイロンがしっかりかかってのりも効いていそう(に見える)。天井にはキラキラ輝くシャンデリアがあったりデンマークのコペンハーゲンではキャンドルが飾られていました。インテリアを見るのも面白く、壁にはお気に入りの絵画がかけてあったり、お花が飾られていたりピアノがあったり。この写真を見るだけでも買った価値がありました。家庭の食卓なので王様の食卓のようにまでは華やかではないけれど、自分の家にある一番とっておきのテーブルセンターを敷いてのおもてなしはきっとゲストにとっても忘れられないものになりそうだな〜と勝手に想像してしまいます。(トップの画像は私がレイキャビク(アイスランド)の友達を訪ねたときの写真です。やはり北欧の人はキャンドルが好きみたいですね!)

あなどれないざっくりレシピ

 もちろん、石井さんが実際に各家庭で教わったレシピも掲載されています。石井さんレシピは昨今の料理本のように詳しい解説や写真などはほとんどなくシンプルな文章のみ。この情報で素人の私がちゃんと作れるのだろうか?としばらくは見るのみで作っていませんでしたが、先日、ラタトゥイユを作ってみました!カンヌに住むジャン・サブロンさんという歌手のおじさんのレシピです。結果、めちゃくちゃ美味しく作れました。ブーケガルニがなくて初めは無しでそれはそれでおいしかったのですが、後日、阪急オアシスでパックに入ったものをゲットしたので再度作ってみると香草の風味がある「南仏っぽい」味に仕上がりました。もう、4回くらい作りましたが、たくさん作ってその後も冷蔵庫に入れ冷たくして2、3日はおかずに出しています。日が経つほど味がしみて美味しくなります。サブロンさんは庭で育てている香草を摘んできてブーケガルニを作っていて私もベランダでハーブ育てて真似しようかなと目論んでいます。。。

鋭い観察眼と人情あふれる著者の人柄

 『パリの空の下、オムレツのにおいは流れる』ファンにはたまらない石井さんの鋭い観察眼が発揮されたエッセイも魅力。印象に残ったのはパリの家庭訪問です。そこに住むのは、バツイチ女性同士の2人暮らし家庭。今回、そこに養子を迎えることになったとかで友人である石井さんは「あなたたちが思っているほど子育ては甘くないからやめたほうがいい」とガチで注意しています。(本文はもうちょっと柔らかいですが要約するとこんな感じ。)なかなか、ここまではっきりいえないものです。カッコ良すぎます。結局、マカオの孤児を養子に迎え、親である2人が甘やかしすぎているのを見てまた石井さんがまた注意していました。マカオの女の子はもう50歳くらいになっているかな。今頃、どうしているのだろう?そのほかにはイタリアでパスタ名人のうっすら髭が生えているおばあちゃんに出会ったり、ラクレットを喜ぶスイス人などここには書ききれないけれど面白いエピソードが満載です。

いつでも読める何度でも読める

 漫画でも小説でもそうですが、何度も何度も繰り返し読むものとはじめの1回でその後は一度も読まない本がありますよね。この本は間違いなく何度でも読める本。レシピ集というよりはエッセイ集、紀行文に近い感じですし、さまざまな国での体験がそれぞれタイトにまとめられているのですぐ読めるし、どこからでも読むことができます。石井さんってどんな人だったんだろう。パリにいる時はサガンの翻訳で知られいる朝吹登美子さんとルームシェアしていたらしいけれど共同生活したら喧嘩になりそうな気もします。というか、叱られそう…。ちょっと恐いけど品があって心の暖かい人なのかなというのが文章から伝わってきますね。石井さんのエッセイ、他にも未読のものがあるのでぜひ挑戦してみたいです。ではでは良い1日を〜

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