2024/5/11 サンダル

 靴下を履きたくない。そう思ったワタクシは、サンダルを買ったのだ。夏、履くやつ。
 買って、履いて、いつもの服を着て、玄関のドアノブに手をかけた瞬間。

「これ、大丈夫か?」

 外に出るのをやめる。全身を見る。お気に入りのティーシャツ、もはやグレードの観点でこだわらない事がこだわりとなってしまいこれしか履けなくなってしまったユニクロの黒スキニー。ここで違うのがサンダルなのだ。

 僕の普段着にイレギュラーなものを入れたことによる違和感。いつもの僕じゃない。そして、いつものじゃない不安から、「これはサンダルを取り入れたファッションとして正しいのか?」と思ったのだ。服の方を変えようにも、明日からは旅行なので、自由度が低い。じゃあサンダルか? いやいや、サンダルを変えちゃったら何のために買ったのよ。今でしょ、履くのは。

 こんなことになるなら、僕の周囲の「服なんてどうせ布」と言い張る人間たちのような態度で居たかったし、ファッションを気にするようならば中学生くらいから美意識高く持っていれば良かったのだ。中途半端過ぎるのだ。本当はわかっている。正しさなんてないことに。でも中途半端に服装を意識しているせいでこういうマインドに陥る。周りなんて気にし無ければいいのに、どうしてこう服に関しては気恥ずかしさとかが芽生えるのだろう。エレキギターは引き摺りながら歩くのに。

 似たような感覚があった。はじめて柄シャツを着たときのことだ。アレは友人と立川で飲む約束をしていたとき、彼が柄シャツを着てきたのだ。

「それ、イイねェ」

「イイでしょ」

 後日、僕も柄シャツを買って身にまとってみた。だが、なんとも言えない違和感。

「アタクシに似合っているのかしら これは」

 当時の僕はまだ彼女がいるリア充だったので、彼女にOKを貰えたことでその違和感を爆発させることができたのだ。

 その翌年は、短パンを初めて買ったのだ。涼しげなやつ。それはNERDという、ベーシストのナツメユウキさんがやってるブランドで、ポップアップストアで購入した。その際試着したら、「お〜!いいね!」と言ってくれてそのまま気を良くして購入した。

 では、今のサンダルはどうだ。もしかして、彼女みたいな存在が自分の身なりをチェックしてくれているから冒険できたのではないか。もしくは、ファッションに詳しい友達。友達は探しても見つからないので、僕はすぐさまマッチングアプリをインストールした。
 マッチングして彼女ができて、3、4回くらいのデートののち、「ねェ、サンダルどうよ」と訊いて、良かったら履こう。そんなことまで考えた。OKを貰える頃には夏が終わりそうだ。僕は「大丈夫、大丈夫、イケてる、きっと」と謎におまじないを3回唱えて出かけた。

 お出かけ先はショッピングモールの中の楽器屋。たまたま顔馴染みの店員さんが仕事をしていて、挨拶を交わした。すると店員さんはじっと僕の服装を見て、

「なんか、夏って感じすね!」

「夏」

「涼しげですね」

「まぁアチィので…靴下履きたくないんですよ(笑)」

 これはOKサインなのだろうか。ただ、サンダルの蒸れない感じや涼しさに感動したため、この夏はお世話になりそうだ。本当に大丈夫だったかなぁ。

牛丼を食べたいです。