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会心の一撃

 あれはなんだったっけな。……そう、ライブを見て涙したのだ。高校の文化祭だった気がする、僕はバンドなどロクに知らなかったし、ボーカルは画用紙に歌詞を書いて、めくりながら歌っていて、ズタボロだったのに、僕はそれで涙したのだ。ひとりだけ本当に一生懸命に弾いている人がいて、その人に心を打たれたのだと、思う。そう、あれはRADWIMPSの「会心の一撃」だった。

 大学で、貪欲に音楽を聴き漁り、勝手に心を

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小説 『めくる』

小説 『めくる』

 忙しない日々が続くと、家のカレンダーをめくることさえも忘れてしまう。どうにもここ最近は、仕事もその他の事も考えることが多すぎて、色んな事に気を回せなくなってくる。気を抜けば明日着る洋服が無かったり、皿がシンクに放置されたままになっていたりする。ようやく色々が片付き、今日は久々の何もない日。何もないとはいえ、家事という仕事は必ずやらなければならない。忙しさにかまけてツケを貯めている場合は特に。
 

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銀河鉄道の昼

銀河鉄道の昼

 銀河鉄道を見た。

 仕事のお昼休み、オフィスで食事を済ませた後、散歩に出かけるのが日課だ。いつものように会社を出て、周辺を歩く。川と民家に挟まれた小道を歩いていると、民家ではない空地のようなスペースにたどり着いた。
 ただの空き地かと思ったが、フェンスが設置されていて、真ん中が入り口になっている。フェンスには「銀河鉄道株式会社 バス運行事業部」という看板が設置されていた。
「銀河鉄道……?」

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長いやつ⑮

 ここで書くの飽きて終わりました。ここまで書いといて続きないとか面白いですね。ちなみに本当にないですので。期待しないでください。

 

 後輩・弓木絵里と機材を買いに行ったその夜。
 俺は買ってきた機材の音出しをしていた。

 「結構いい音するな……」

 ギターを鳴らしながら、ツマミを調節する。コーラスは普段使わないサウンドなので、揺らぎを伴った瑞々しい音が新鮮だ。コード弾きやアルペジオ、単音

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長いやつ⑭

「えーっと、桐島。俺のLINEのIDをこれに書いとくから、帰ったら連絡くれ! 華の高校生活を送るためにはどうしたらいいか、作戦会議だ!」

 俺のスマホで母親に連絡を取ることが出来た五十嵐は、スマホともに、ルーズリーフの切れ端を俺に渡してきた。そこにはアルファベットと数字で組み合わさった文字列が乱雑に記載されていた。

「お前、字が汚いな……」
「うるせえっ。じゃあな!」

 そう言うと、五十嵐は

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長いやつ⑬

 桜色が舞うのを見ていた。
 高校生最初の日、入学式。新入生の所属クラスが書いてある掲示板の前は、人でごった返していた。その様はまるで『無罪モラトリアム』。
 早くあの人混み、どうにかならねえかな……。なんて考えながら、桜の木の下に突っ立っていた。

 その時、俺の目の前を、ひとりの女子が通過する。
 春の陽気に今にも溶けてしまいそうな、長い髪。整った顔と、白磁のように白い肌。その歩く様は、颯爽の

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長いやつ⑫

7月20日

「で、なんで俺たちだけなんだ?」

 夏休み初日。蝉がけたたましく泣き喚き、太陽はアスファルトを焼き尽くそうとする勢いで大地を照らしている。俺たちが居る駅前の噴水広場だけ、噴水のおかげで若干涼しさを感じられるのだが、その程度では太陽の熱射を無効化したことにはならず、額に汗が滲み続ける。いかにも夏で、夏休みといった感じの気候。まったく、厄介なものだ。

 待ち合わせは午前10時。ここ、

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長いやつ⑪

 7月18日

「先輩、歌の入り早いです」

「祐介さん、もっと私の音聴いて」

「祐介ヘッタクソだな~~」

「フルボッコ過ぎやしませんかねぇ!?」

 臨海市の中心街にあるライブハウス『凪』。県内でも規模の大きいライブハウスで、毎月、そこそこ有名なアーティストがライブをしに来る。スタジオも完備していて、高校からのアクセスも良いため、臨海市に住むバンドマンはここを利用している。例に漏れず、臨海高

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長いやつ⑩

ごめん 本当にごめんなさい 本当に あの 悪気はなかったんです 悪気は

7月14日

「びえええええええええええええ!!!!」

 開口一番、女の子が号泣する様を見せつけられた経験はあるだろうか。俺はある。今がそれ。

 後輩の弓木絵里の泣き叫ぶ声が放課後の文芸部室に響き渡る。それを河合凛子があたふたしながら宥める光景。俺も動揺を隠せない。

「な、何!? どうした!?」

 絵里に駆け寄る。

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長いやつ⑨

 あのすいません 本当に長くて
 くそながライトノベルみたいなやつ書いてごめんなさい あと投稿欄をとても汚してしまって申し訳なく思っています 高校生の頃の僕をぶん殴ってください そしてこれを投稿しようと決心した数時間前の僕をぶん殴ってください TL汚しすまない 本当に すまない

「……なんか、余計なの付いてきてるな」

 放課後、ファミレスにて。窓際のボックス席で、ドリンクを飲んでいた誠也が遅れ

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長いやつ⑧

なげーよばか

2016年7月13日

『ウオアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 チャイムが鳴る。それと同時に、男たちは叫んだ。

 者共は勢いよく立ち上がり、それによって椅子が鈍い音をがなり立てて教室の床を擦った。その轟音が鳴り響いたかと思えば、クラスの男子は既に教室の外に駆け出していた。

「畜生! 乗り遅れた!」

 俺は焦った。これを逃すと、大変なことになる。

 大群に1歩遅ればせ

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長いやつ⑦

五ヶ谷と別れ、帰宅した後、夕飯や入浴などを済ませ、ベッドに寝転がって、天井を見つめてぼーっとしていた。

 過去に戻ってきた。

 どうやら本当にここは2016年の世界で、俺は高校生になっていた。17歳になっていた。

 そして、未来から来たくせに、これから何が起こるかなんて、一ミリもわからない。ただわからないわけではなく、限定的にわからない。これからの高校生活だけわからない。

 ややこしい事情

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長いやつ⑥

マジックアワーを知っているだろうか。

 写真撮影の用語で、日の出前や日の入り後の、空がうっすら明るい数十分ほどの薄明の時間帯のことを言う。一日の中で空の色が最も変化する時間帯だ。太陽の位置が水平線からプラス6度の時をゴールデンアワー、マイナス6度をブルーアワーと呼ぶ。放課後の今ならば日が没していき、赤やオレンジの空が、だんだんと夜のあおに変化していく過程が幻想的だ。

 部活がある日は、このよう

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長いやつ⑤

なんでこんなに放出しているのかというと、下書きに記事がたまりっぱなしが嫌だからです。スマホの通知の赤丸とか未読が苦手なので その延長です。あとこのギャグ会みたいなのほんとうに恥ずかしいです。おもんねえ

 BAR「第七次元」。この奇妙な店名のバーは、地方都市の歓楽街の路地裏にひっそりと佇んでいた。

 今日もこのバーに、様々なお客様が来店する。

 ―――おっと、紹介が遅れちまったな。俺の名前は桐

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