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映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』見たので1000文字で感想書く。


・湿度が高い

喉に纏わりつくような、飲み込みがたい感覚。これが一番最初の感想だった。

戦争、玉砕精神、貧富格差、夢と現実、そして「性」。如何にしても解決の難しい問題ばかりが立ち並び、報いと救いのなさが最後の最後までついてくる。

どれもこれも「現実でもどこかで見たことのあるような話ばかり」というリアルさもまた、心を震わせる。鬼太郎という題材を大切に扱いながらも、ここまで見事なヒューマンドラマに仕上げてくるとは思わなかった。

多分、鬼太郎の名作回をいくつも見てきた人でも、ここまで心に深く踏み入るストーリーを予想できた人はいなかったのでは?と思う。その意外性もまた、この映画を快作たらしめる要因だったのかも。

・主軸の2人の清涼感

だからこそ、水木と鬼太郎父の関係性は、映画の中でも唯一の「清涼感のある関係性」だった。

徐々に打ち解けていくまでの段階もさることながら、なんといっても嗜好品を共有するに至ったあの場面は観客側にとって「ほっと安心できる息継ぎ地帯」だったと思う。

映画を見る前から、ずいぶんとあの2人の「組み合わせ」に対して質量の高い意見を目にしていたが、今となってはものすごく納得できる。あの2人のやり取りは、あの映画の中において「ずっと見ていたいもの」に違いない。

・タバコの演出の妙

映画を通して一貫していた「タバコ」の扱い方も、物語の没入感を高めたポイントの一つだと思う。

「あの時代」のタバコの扱い方の表現に遠慮や躊躇がなかったため、「あの時代」の物語であるという没入感を、物語の冒頭でしっかりと作り上げることに成功している。

今はなにかと口うるさい時代なので、「電車内の喫煙」「タバコのポイ捨て」「寝たばこ」という描写は明後日の方向から批難が飛んでくることも十分に考えられる。

それでも遠慮せず、あそこまでタバコを丁寧に扱ったことも、作品のリアリティの高さを裏付けているような気がする。そして、その演出自体が、ある意味現代への風刺に繋がっているような気さえしてくる。

・墓場鬼太郎1話は必ず履修すべき

先人の方々のアドバイス通り「墓場鬼太郎1話」は履修しておいてよかったと思う。そして、全てがあの通りにならなかった部分もまた、この映画の良さを引き立てているように感じる。

長い長い歴史を持つ「鬼太郎」というコンテンツのエピソード0を飾る作品として、間違いのないふさわしい出来の作品だった。

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