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「息子を世界一の金持ちにする」実験から考えたこと

呪いの言葉

”息子が3歳のときから毎晩、呪いの言葉をかけているんです”
と彼は嬉しそうに話していた。
その言葉とは、「世界一のお金持ちになりなさい」。

この話を聞いたのは、先日、ゲスト出演したAbema Prime(アベプラ)でのこと。もう一人のゲストであるソーリムウーハーさんは、11歳になる息子さんを「世界一の金持ち」にするための“実験”をしていると語っていた。

子供を実験台にしていることや、世界一の金持ちを目指すことの是非にはさまざまな意見があるが、お金の教育についての議論のために僕は招かれたようだ。

ソーリムウーハーさんは息子さんに、自宅の敷地内にガチャガチャを設置し、ビジネスを体験させている。
「子供にお金儲けを教えるなんてけしからん」という批判もあるが、僕はこの方法を支持したい。
(念のためですが、お金の教育という点で支持しているのであって、子供を実験台にしていることや世界一の金持ちを目指すことについては別意見です)

お金がもらえる理由

このガチャガチャを通じて、息子さんはただ商品を売ることでお金がもらえるということでなく、誰かの役に立つことでお金がもらえるという重要な教訓を学んでいる。

人々が商品やサービスにお金を払うのは、それが自分にとって価値があると感じたとき。誰かを喜ばせることができれば、それに見合った報酬を得ることができる。
より多くの人々の幸せを考えることで、その対価としてより多くの収入を得られるということを自然と理解することになる。

一方で、典型的な「時間労働」の形式であるアルバイトでは、時間を使った対価としてお金を得るという考えが、基本になる。この方法だと、自分の労力がどのように社会に役立っているかを考える機会が生まれにくい。

家庭内でのお手伝いに対して、お金を払う方法もあるが、この方法は、家族や友人に対しても、損得勘定で行動する考え方を育てかねない。
それに対して、ガチャガチャのような小さなビジネスを通じて子どもたちに経済活動を体験させることは、アメリカで子どもたちがレモネードスタンドでビジネスの基本を学ぶのと同じく、実践的で価値のある学びになると思うのだ。

「投資=お金を増やすこと」ではない

最近、子どもたちへの金融教育が盛り上がっているが、そのほとんどが投資教育であり、99%の子どもが「投資=お金を増やすこと」と認識している。
しかし、金融とは、資金に余裕がある人から必要としている人へお金を融通する仕組みのことだ。
投資が社会を成長させるのは、みんなの役に立つアイデアを持っている人々にお金が流れて、産業が発達するからだ。

教える側でさえも「投資=お金を増やすこと」だと思っている現在の教育では、「投資される側になる」という発想は生まれない。
その意味でも、さきほどのガチャガチャのように、ビジネスを通じて経済の仕組みを理解することが重要になる。これにより、ビジネスを広げるために投資してもらおうという発想も生まれる。

無責任な銀行

「預金でお金を眠らせておくのはもったいないです。投資しましょう」

銀行で、こんなことを言われたことはないだろうか。僕はある。
グッとこらえたが、内心では「どの口が言うねん」と言いそうになった。

非常に無責任な発言だと思うのだ。
預かったお金を活用して融資を行うことが銀行の主な業務のはずだ。預金者のせいでお金が「眠っている」わけではない。銀行に貸出先がないのだ。
事実、銀行の預貸率(預金を貸出に回している割合)は過去20年で8割から6割にまで大きく下がっている。
世の中の資金需要が足りないから、銀行は投資商品を勧めているのだ。

資金需要がないわけだから、日本は金利が低い。預金者が投資にお金を回そうにも、国内は利回りが低いから、結果的に資金が海外に流出し、現在の円安も招いている。
国内で資金を有効に活用するためには、誰かの役に立とうと考える意欲的な子供たちを育てることが必要だ。

会社で働く際も、「自分の時間を売る」だけでなく、「誰かの役に立っている」という意識で仕事をすることが、自分にとっても社会にとってもより幸せにつながると思うのだ。


余談だが、最近ご著書を読ませてもらった龍崎翔子さんは、10代で起業したそうだ。龍崎さんが成功したのは、「どうすれば喜んでもらえるのか、役に立てるのか」を考えているからだと思う。

5月15日に誠品生活日本橋でトークイベントがあるので、ぜひ、そのお話をお聞きしたいと思っている。


(この先は有料部分。今週の活動記録やこぼれ話)

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