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これが運命じゃなくても



「運命かも、」


何かに出会うたびに、何度もそう思う。

これは私にとって、ある種のおまじないみたいなものなのかもしれない。

たとえば、何の変哲もない真っ白なブラウスを買ったとしても、こんなふうに考えるだけでそのブラウスは私にとって特別な一枚になる。これをなんども繰り返して、私はたくさんの特別を味方につけて無敵になった気持ちだった。



運命には、「なんかいいな」が付き物だ。

明確に、何がどう良かったとか説明できる必要はなくて。だって、運命ってきっと誰かにわかってもらわなくてもいいから。もっともっと感覚的で、自分の中にあるもの。



本屋さんに行っては、新しい本に出会う。たくさん並ぶ本の中で目に留まらないものだってあるはずなのに、なんとなく手に取る本が運命でないはずがない。

そうやって出会った本のうちいくつかは、まだ読まれないまま家にいる。もちろん、ずっと眠ったままなわけではなくて、あるとき最適なタイミングでまた運命的に読み始めたりもする。

でも、運命だと思ったものがそんな風にほったらかされていいのかなと思ったりもする。








運命だって思ってた。

運命だと信じて疑わなかった。


なんかいいな。

ドキドキする。

不思議とこの人には心をひらけた。

前より仲良くなれた。



運命と感じたそれを、もっと運命にしていく。

単純な私には簡単なことだった。





「運命かも!」と思うだけで何の変哲もない出会いはきらきらと輝いたし、「嬉しい」も特別なときめきに変わったし。明日が楽しみになって、いつかきっとって未来に夢を見てしまった。





「運命じゃないなんてやだよ」


現実から目を背けた。

きらきらしていたものが、
その輝きの分だけ私を苦しめた。


運命なんて思ってしまったけど、
最初からそんなのなかったのかな。












私だけのおまじないみたいなこの気持ち。
これからも大切にしたい。

何の変哲もない毎日を、
確実に輝かせてくれる。



でもそれを、自分の中で大切にすることと、
誰かに押しつけることとは違うと知った。


"運命"っていう特別は、
ただ、わたしの中にあるものだ。








最初から恋だと確信してた。

そうだと思い込んだ。

運命をぎゅっと掴んで離さずにいた。




けど。

もっと軽やかに。



大切で特別なものはどこにでも転がってるわけじゃない。でもそれは、ひとつじゃない。

この気持ちは恋で、この恋は運命で、
ここからここまでは別物で。

そんな線を引かなくてもいいかもしれない。


これが運命かどうかよりも、運命だと思えた奇跡みたいな気持ちを、もっとちゃんと大切にしたい。


ふうっと息をつく。


がんじがらめになった心をほどく。


ほんとに大切なものを、
やさしく軽やかに受け止める。



それが今のわたしには必要なのかもしれない。








「運命かも!」と心が動く。

そんな気持ちと、ふわりと向き合う。


好きだとか大切だとか思える相手のこと、
丸ごと抱きしめて、心の中で味方につけて。


自分の足で、好きな場所に行こうね。



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