宮城 座敷わらしのいる蔵
宮城県角田市にある業務食品・包材資材専門店マルセン。
ささいなことがきっかけで、ここにある蔵について知った。
座敷わらしのいる蔵
そのワードを聞いて心がときめいてしまった。
座敷わらしがいる家は栄えたり、幸運をもたらすなどと伝承がある。
日本の妖怪や精霊のひとつ。
ネット社会の現代で技術の進歩が加速するなか、座敷わらしはほんとうに存在するのか?
普段の生活にはないものを求め、不思議な体験をしたくなり宮城に行った。
座敷わらしの蔵
郵便局の向かいにある、昔なつかしい商店のようなたたずまいのマルセン。
辺りは子供時代が蘇えるような、ほっとする風景が広がっていた。
140年以上前に建てられた座敷わらしがいると言われる蔵は、店のなかにある。
1,000円以上の買い物をすると見学ができる。
かつてバックヤードとして利用していた蔵は、一般公開すると決めたあと、安全上の理由により補強工事を行った。
売り上げは蔵の維持費にあてられる。
買い物を済ませると、店主であるマルセンの高橋社長に案内していただいた。
メディアでも度々話題になっているようで、蔵の入り口には芸能人や著名人と撮った写真やサインが飾られていた。
駆け出しの芸人が訪問したのち人気になった話にはじまり、縁結びの話や現在は世界中から多くの人がここに訪問することを熱心に語ってくれた。
みんながこの蔵に興味津々。
「雑誌の編集長や先日も宝塚ジェンヌが来たんだよ」と教えてくれる社長は関西人のわたしよりもフレンドリーでサービス精神旺盛だった。
かわいい妖怪がすむところ
蔵の入り口をくぐり、見学のために設置された手すりをもち、勾配のある階段をあがる。
蔵の二階にあがると、大人のわたしでもはしゃぎたくなるようなオモチャがたくさん並んでいた。
お礼参りや訪問された人達からのわらしちゃんへのプレゼント。
こたろうくん、みちちゃん、さちちゃんという3人の座敷わらしがいるらしい。
なにか少しでも気配を感じれたらいいいなと思っていたが、わたしには霊感が全くなかった。
こっちの方向にライトを使ってスマホで撮影したら、オーブが映ることがあるからとアドバイスをいただき動画を撮影してみることに。
わたしが見学している最中も他の見学者はくる。
そして一緒に動画を撮影しながら、なごやかに会話が始まる。
オモチャに囲まれ、目には見えないけどわらしちゃんたちが居てたらいいな~と穏やかな気持ちになる。
何時間でも滞在したいと思わせてくれる場所だった。
しかし注目されている蔵だけにあり、見学者は常にあとを絶たなかった。
スペースも限られているので、後ろ髪ひかれる思いで蔵をあとにする。
類は友を呼ぶ
座敷わらしの次にマルセンで有名なのがコーヒーソフトクリーム。
甘すぎずコーヒー感が出すぎていないソフトクリームは、人気なだけあり納得できる美味しさだった。
蔵見学のあと、バニラとコーヒーのミックス味を頼み、長椅子に腰掛けながらゆっくり食べていると、社長の奥さまが過去に撮影したオーブの動画や、座敷わらしとのエピソードを語ってくれた。
じつは今回奥さまと会うのも楽しみにしていた。
書籍「座敷わらしのいる蔵」の著者である。
ネットで内容を少し拝読し、ぜひここにに訪問したいと思った。
エッセイ本を購入したくて数カ月前に書店を回ったが購入できず、しまいには「重版は未定です」と言われた。
しかしその話をすると、わたしが探しまわった後に第2版の刊行があり、マルセンにはすでにおいてあった。
もちろん購入。
よい訪問記念のお土産になった。
座敷わらしの話をしているはずだったのに、気がつけばわたしのプライベートの話にまで及んでいた。
親身になってアドバイスしてくれる奥さま。
蔵見学の対応でいったりきたりする社長も、時折顔をのぞかせ3人で談笑。
おふたりは丁度わたしの親世代だった。
そして社長が突然「わたしは専属のボディーガードです!」と言う。
なんのことかと不思議な顔をしていると、奥さま専属のボディーガードという意味だったらしい。
そういえば、数分前に空手をしていると言っていたな。
東北のイメージを払拭させられるほど、社長の軽快なコミュニケーション能力に親近感が沸いた。
そして言葉の節々からは、愛し合っているご夫婦なんだと思わずにはいられなかった。
どうして芸能人でも宝塚ジェンヌでも、なんでもない今日はじめて会ったわたしに、こんなに良くしてくれるの?
自分の常識を覆すような不思議な体験がしたくて宮城まできた。
座敷わらしを見たわけでも、感じたわけでもない。
だけど胸がいっぱいだった。
ソフトクリームを食べている間、蔵見学を終えた方たちが「ありがとうございました~」と挨拶をして帰っていく。
わたしも瞬発的に「ありがとうございました」と返す。
蔵の二階でちょこっとお話しただけ。
改めてありがとうって素敵なコミュニケーションの言葉だと思った。
奥さまは「お店のお客さまはすごく良い人が多いから」と話していた。
社長の部屋
社長が「ちょっと見て」と、蔵とは別にある隣の部屋を見せてくれた。
おじゃまさせてもらうと、その部屋の壁一面に、奥さまやご家族と海外旅行に行ったときの写真が隙間なく貼られていた。
これはどこどこに行ったときの写真で~、これは何年前で~と、写真を一枚ずつ指しながら嬉しそうに語ってくれた。
あまりにも素敵な光景で羨ましかった。
海外旅行にたくさん行っているから羨ましいのではない。
自分の幸せがなにかを理解し、ずっとしっかり握っているから。
当たり前にある日常は当たり前ではない。
だけとそれに慣れてくると、いつまでも当たり前のことがあるものだと思いこみ、大切にできなくなる人が多い。
きっと社長も奥さまも目の前にあることに日々感謝しながら、試練があるときも一つずつ乗り越え、そばにいる人たちを大切にしてきたんだろうなと感じた。
その積み重ねで成り立つ幸せ。
わたしもそんな風に年を重ねていけたらいいな。
営業時間中に長々と居座っていたことにふと気づき、我にかえる。
「出会えてよかったです」と握手して別れの挨拶を簡単にすませ、店をとびだした。
他にも来店者がいらっしゃっていたのに、ご迷惑じゃなかったかな~と反省しつつ、角田駅に向かう足取りは軽く心はあたたかかった。
きっと座敷わらしちゃんたちも、このご夫婦が大好きで、あの蔵にいるんじゃないかな。
やさしくしていただき、とても嬉しかったです。
今年も東北の冬がはじまりますが、お身体を大切にしてお過ごしください。
またいつか会える日を楽しみにしています。
本当にありがとうございました!!
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