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動画クリエイター養成科 #1自分を磨く

動画クリエイターと聞いて思い浮かぶこと。

SNSの普及により、YoutuberなどTV 映画とは異なるエンターテイメントを手掛ける職業を連想される人も多いはず。

しかし動画クリエイターとは動画制作に関わる人材をさす。

ネット環境の進化に伴ない、多くの人がネットを利用して情報収集をおこなうようになった昨今、動画コンテンツはこれからますます伸びていく市場に発展 。

動画でのPRやデジタルサイネージでの広告に力を入れる企業も増え、今まで紙媒体での制作を手掛けてきたわたしは、動画での制作スキルも身につけたいと思うようになる。


今後さらに、動画制作のスキルや知識が求められると考え、本格的に動画について学ぶことを決意し学校に通い始める。


***


クラスは30代前半の男性講師と、10人強の世代もバックグラウンドも異なる受講者たちで構成されていた。

授業のカリキュラムはプレミアプロ、アフターエフェクト、フォトショップの操作などの実技に加え、マーケティングや動画投稿サイト運用知識といった学科にまで及び、幅広く動画制作について学べる内容となっていた。

フォトショップは長く仕事で使用していたので、わたしには特に必要のない授業であったが、プレミアプロの操作や動画制作についての必要な知識は確実に習得したかった。


講師のあいさつが終わると卒業生の制作動画上映があった。

以前担当していた一部の受講者から、次の受講者にみせて欲しいと短い動画を集めた制作物を、講師は託されていた。

しかしそれを観終わったとき、正直戸惑った。
このクラスを卒業するときに身につくスキルは、このようなものなのかと。

プロモーションや広告というより、ジャンルはエンターテイメントや個人の趣味に近い動画だった。

わたしが目指している制作の方向性とは異なる。

だから落胆してしまった。

しかし、いろんなジャンルの動画が存在しており、学びにくる理由も人それぞれなことに、このときは気づいていなかった。

この動画集はこの後、在籍期間中なんども目にすることになる。

それは講師が卒業生からの贈り物に、相当な思い入れがあることをうかがえた。


***


授業中、ひとりずつ自己紹介の時間が設けられた。

今までしてきたことや特技など、受講者がそれぞれ自分について語る。

わたしは、特技はどんな凶暴な犬でも手なずけることができる、と言う男性の隣りの席にだった。

しかし正直人前で話すことは苦手。
目立ちたくない、何を言っていいかわからない。
そもそも最近出会ったよく知らない人たちに、自分のことを話したくないと思う気持ちが強かった。


みんなからすれば、ただの自己紹介。
クラスメイトのひとりとしてでしか認識されていないはずなのに、すごく抵抗があった。

人生に打ちのめされ、なにが正しいのかわからなくなり、このときは自尊心も極めて低かった。

わたしはアイデンティティ クライシスに陥っていた。

少しだけ自分のことを語ると、思ったよりも次々出てきた。

生きていれば、大なり小なり辛い経験はだれにでもあるもの。
間違ってもネガティブなことを話したりはしない。

だけど”印刷物の制作をしていて、動画のスキルも今後必要になると考えたのでここにきました!”と言って終わればいいものを、気づけば学生を終えてから現在に至るまでについて、長々と語ってしまっていた。

わたしは大丈夫だっただろうか?

きっと時間が経てば、みんなすぐに忘れてくれるよね?



毎回授業のはじめに、講師による検温が受講者全員に実施された。
マスクの着用義務はなかったが、毎日マスクをつけて登校した。

受講者同士がまだ他人行儀なクラスで、わたしはできるだけ目立たないように心がけた。


このとき頭のなかにあったこと。

必ず別れがくるメンバーと仲良くする必要はある?


ここにくる目的はひとつだけ。

動画制作のスキルを身につける。


そして先行きの見えない将来に、毎日とてつもない不安を抱えていたことを、今でも覚えている。

それでも、自分のことを磨き続ければ新しいステージにいける


ただそれだけを一心に信じ、目の前にあることに向き合った。


***


自宅マンションの目の前には、どこかの会社のビルが建っていた。
毎年、夏になると花火の大きな音だけ聞こえていたが、建物があり何も見ることができなかった。

しかしコロナの影響もあってか、そのビルが突然取り壊された。

わたしは数カ月間、解体の騒音に悩まされた。

跡地には低いアパートが建った。



入校式の日、4年間中止になっていた花火大会が開催された。


何年にもわたり住んでいた自宅のベランダから、初めて花火をみた。


新しいはじまりのパレードみたいだね



いつと比べてだろう。

毎日少しずつ変化していくから、全く気づけなかった。

だけど世の中も、わたしもこのとき既に随分変わっていた。



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