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14連敗したエンゼルスが復調すると自信をもって言える3つの理由

エンゼルスが5月25日から続いていた14連敗を6月9日にストップしました。しかしその期間にチームの勝率は.613(27勝17敗)から.465(27勝31敗)へと大幅に悪化してしまい、首位のアストロズとのゲーム差も拡大してしまいました。4月から5月序盤にかけて好調だっただけにこの失速は多くのファンにとってショックだったと思います。
 
ではエンゼルスは今後浮上できるのか、そしてプレーオフに出場できるのかが多くの人にとって関心事だと思います。そこで今回はエンゼルスの今後とキープレイヤーについて私なりの考えをいくつかの指標も交えつつ説明していきたいと思います(データは6月10日終了時点)。
 
結論から述べると、今後のエンゼルスは調子が上向きプレーオフに出場する可能性もかなりあるのではないかと思います。そう思う理由は3点あるので、1つずつ見ていきます。
 

理由①:先発投手が長いイニングを投げている


今季のエンゼルスは先発投手が長いイニングを投げています。過去5シーズンでは初めて先発投手が平均して5イニング以上を投げています。




近年はMLB全体の傾向として先発投手が投げるイニングは減っていますが、先発投手が長いイニングを投げればリリーフの負担を減らすことが出来ますしシーズンを通した成功には必要な要素でしょう。
 
エンゼルスの先発が長いイニングを投げられている理由としてはゴロアウト率の比率が高まっていることが挙げられます。こちらも過去5シーズンで最も高い水準になっており、MLB全体で見てもゴロ率45.6%は7位と上位に入ります。ゴロを打たせることで効率よくアウトを奪うのが今季のエンゼルス投手陣の1つの強みと言えます。


 特に新加入のマイケル・ロレンゼンやノア・シンダーガードはゴロ率が高くなっています。このうちロレンゼンは1試合あたりの平均イニング数でもチームを引っ張っています。先発投手が昨年までのように5回まで投げ切れずに降板する場合であれば、残りのイニングを1人1イニングずつカバーしても4人から5人投げる必要があります。一方でロレンゼンのように6イニング近く投げてくれればリリーフ投手は3人から4人で足ります。そうなればリリーフ投手1人に追加で休息を与えられるので、年間を通した投手の負担管理が楽になります。


また基本的にエンゼルスは先発投手が中5日以上で投げているので、従来の中4日に比べて先発投手の疲労回復が期待できます。その結果として各試合で長いイニングを投げるのに役立っているのかもしれません。
 

キープレイヤー:ノア・シンダーガード


先発投手ではロレンゼンが長いイニングを投げていることに触れましたが、逆に少し物足りなく感じるのはシンダーガードです。彼がもう少しイニングを消化してくれればチームにとっては大きな助けになることは間違いなく、今後の奮起に期待したいところです。
 

理由②:特定の個人に依存しない強力守備”陣”


理由①で紹介したように、今季のエンゼルス先発陣はゴロ率が高くなっています。ゴロ率が高いということは必然的に内野の守備の重要性も増します。そこでエンゼルスの守備指標(OAA)を見てみると、今季は2019年以来のプラスを記録しています。


 
しかし今季のプラスの内容は2018年や2019年のそれとは大きく異なります。2018年と2019年はそれぞれアンドレルトン・シモンズ(現カブス)が+15と+19を記録していました。つまりシモンズを除くとマイナスになっていたということになります。
 
実際2018年であれば、1Bのアルバート・プーホールス(現カージナルス)とザック・コザートがマイナスを記録しており、チームの中で守備指標がプラスになった選手は5人でした。さらに2019年にはプラスの選手が4人に、2021年に至っては3人になってしまいました。
 
つまりエンゼルスの守備はシモンズ個人に依存していた部分が強かったということになります。結果として2018年と2019年はチーム全体でプラスになっているのだから問題ないという考えもあるかもしれません。しかしこの状況では、シモンズが故障したり試合に出ない日にはチームの守備力が大きく悪化するという大きなリスクが発生します。
 
その不安が的中したのがシモンズがシーズンの半分を欠場した2020年とツインズに移籍した2021年です。エンゼルスの守備は崩壊し、2020年が-18を記録し30球団中下から2番目、2021年も-25で下から5番目となりました。
 
このような個人依存の体質から脱却しつつあるのが今季のエンゼルスです。チーム全体の+7は30球団中6位の高水準で、内訳を見てもブランドン・マーシュとアンドリュー・ベラスケスの+4を筆頭に6人の選手がプラスを記録するバランスの良い成績となっています。
 
内野手に限定してもベラスケスの+4に加えて、アンソニー・レンドン(3B)が+2、ジャレッド・ウォルシュ(1B)が+1を残し個人依存が解消されたと言えます。このような特定の個人に依存しない守備陣の存在も今後のエンゼルス復調に貢献するとみています。
 

理由③:四死球が少なく層が厚いブルペン


これが最後の理由です。以前私が公開した記事で、強豪チームのリリーフ投手が四死球の減少に成功して成績を伸ばしていることを紹介しました。今季のエンゼルスも劇的に四死球を減らしています(BB/9が昨年の4.04から2.91へ)。
 
つまり1試合当たりで1個以上の四死球を減らしていることになります。この四死球減の効果は既に一定程度出ており、ブルペン全体のxFIPは過去5年で最高の水準です。しかもこの成績は14連敗直後のものですから、今後の伸びしろにも期待が持てます。

 
また四死球を少なくして成績が改善しただけでなく、今季のエンゼルスは昨年までと比較してリリーフの選手層が厚くなりました。その最たる理由はこのオフに獲得したアーロン・ループ、ライアン・テペラ、アーチー・ブラッドリーのブルペン3人衆です。そこに昨年から引き続きクローザーを務めるライセル・イグレシアスがいるという構成になっています。
 
このうちループ、テペラ、イグレシアスはいわゆる勝ちパターン的な使われ方をすることが多く、全員が同じ試合に投げることも頻繁にあります。一方でブラッドリーは開幕直後に打たれたことや故障の影響もあるのか、彼らとは別の場面で起用されることも多いのが特徴です(15試合に登板して勝ちパターン3人がいずれも登板していない試合が7試合あります)。
 

キープレイヤー:アーチー・ブラッドリー


今季は防御率5.65と一見不振のブラッドリーですが、実績は他のベテラン3人にも全く引けを取りません。またクローザー経験もあり、今季のFIPも3.48と防御率が示すほど実態は悪くありません。そんな頼りになるベテランが控えていることで、勝ちパターンでの試合で一部の選手に頼り切りになる状態を回避できます。また負けている試合でもリードを広げられないことで逆転勝利につなげることも出てくるでしょう。
 
実際にイグレシアスとループに関しては連投した場合の方が打たれており、なるべく連投は避けたいところです。そのためにもブラッドリーの活躍は不可欠になると思います。

ループとイグレシアスの連投時とそれ以外の防御率比較


 
最後に
今回はエンゼルスの今後を予想する記事となりました。もともと打撃陣には優れた選手が多く、今季も得点力自体は例年と大差がない水準です。逆に好調時は失点を抑えることに成功していたのが今季のエンゼルスの特徴です。そこで今回は失点をどのように抑えるかの視点で記事を書いてきました。
 
要約すると今季のエンゼルスの勝ちパターンは下記のような感じでしょうか。先発投手がゴロを量産しながら長いイニングを投げて、バックの守備陣がそれを支える。そして先発投手の後には四死球が少ないリリーフが失点を最小限にして勝利に繋げる。また投手陣は健康を維持するために先発は中5日以上空け、リリーフは連投を減らす。なかなかこの勝ちパターンを続けるのは簡単ではないかもしれませんが、夏のトレード市場で先発やリリーフの底上げを図ればプレーオフ出場は現実的なゴールになるだろうと思います。

Photo BY:Dinur