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東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みた…

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東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みたいな毎日を生きる(のが希望の)M.K.です。海外文学・SF・文化人類学・山岳小説といったジャンルを好んでいます。好きな作家はテッド・チャン、宝樹、カズオ・イシグロなど。

最近の記事

【書籍紹介/韓国文学】韓国フェミニズム文学の金字塔(ショートバージョン)

こんにちは。 今回は初めてフェミニズム文学を紹介しようと思います。 はじめに私自身の立場を表明した方がフェアかなと思うので、ちょっとだけ書かせてください。 私は女性ですが、女性が世界を主導すればそのまま世界平和が訪れるなんてことは全然思わないし、むしろ”女性性”をことさら特別視するのは疑問です。自分から意識しなければ、性別の事なんか全然気にせず生きていける世の中が理想かなと思っています。 それでもフェミニズムには共感を抱いています。 私の祖母も母も性別を起因とする問題にぶち

    • 【書籍紹介/旅行記】「和平解放」後の知られざるチベットの姿(ショートバージョン)

      こんにちは。 今回は初めて旅行記を取り上げたいと思います。 舞台はチベット、それも漢民族である著者の目から見たチベットです。 個人的なことですが、一人で中国内陸部を気ままに旅行するのが長年の夢で、コロナ前には前哨戦として上海とハルビンを一人旅しました。 特にハルビンにはロシア文化の気配を期待して行ったのですが、有名な中央大街などは完全に観光地として”キッチュ”化していたし、日常生活が感じられるかもと期待して行った中洋折衷建築の街は、そのほとんどが再開発地区に指定され、バリケ

      • 【書籍紹介/日本文学】未完が悔やまれる織田信長論(ショートバージョン)

        最近アサクリ界隈が炎上していてタイミング的に何だかな、という感じですが、今回は初めて日本文学を取り上げてみようと思います。 私自身ゲームはあんまりしませんが、映画鑑賞代わりにゲーム実況を見ることがあって、しかも歴史好きなのでアサクリは結構期待していました。 というのも Rise of Ronin が思ったより時系列が混乱していてファンタジーだったので、アサクリの方に時代考証を期待していたからですが、そもそもゲームに史実のリアリティを求めるな、という話ですかね。 でもハリスの

        • 【書籍紹介/中国SF】中国SFの火付け人、ケン・リュウのエンタメ電脳世界!(ショートバージョン)

          こんにちは。 突然ですが「間テクスト性」という言葉があります。全ての作品は相互に影響しあっていて、一つの作品を読むときに別の作品を連想したり、著者同士の影響関係を確認したり、そういった性質のことを指す言葉ですが、読書をより豊かにするためには「間テクスト性」が欠かせないと私は考えています。 この性質を最大限楽しむためには読者の側にリテラシーが必要ですが、これを獲得するための近道は、古典文学や著名な作家の文学作品をたくさん読むこと。なので今まで海外文学を中心に読んできたわけですが

        【書籍紹介/韓国文学】韓国フェミニズム文学の金字塔(ショートバージョン)

        • 【書籍紹介/旅行記】「和平解放」後の知られざるチベットの姿(ショートバージョン)

        • 【書籍紹介/日本文学】未完が悔やまれる織田信長論(ショートバージョン)

        • 【書籍紹介/中国SF】中国SFの火付け人、ケン・リュウのエンタメ電脳世界!(ショートバージョン)

          【書籍紹介/海外文学】『外套』――世界三大虚無文学(ショートバージョン)

          こんにちは。 思いのほかショートバージョンが気楽で取り組みやすくて、なるほど、こういう感じでnoteを続けていけばいいのかと一人勝手に了解しています。 そのうちきちんとした分量の記事を書くつもりではいますが、しばらくはこの形で行こうと思います。 というわけで、今回もショートバージョンです。 『外套』 ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ いわずと知れたロシア文学の傑作短編です。 有難いことに青空文庫に入っているのでタダで読めますよ。 以前noteでメルヴィルの『バート

          【書籍紹介/海外文学】『外套』――世界三大虚無文学(ショートバージョン)

          【書籍紹介/海外文学】"香り"によって操られる群集心理(ショートバージョン)

          こんにちは。 朝晩の寒暖差が激しすぎて東北が嫌になってきたM.K.です。 さて今回の作品なのですが、いつも贔屓にしているポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」で、この著者の別の作品が取り上げられていて、 パーソナリティの干場さんが「『香水』は掛け値なしに面白かったです。皆さん読まれるといいと思いますよ。」と絶賛されていたので、さっそく手に入れたのでした。 今回もショートバージョンになります。 『香水――ある人殺しの物語』 パトリック・ジュースキント なんというか……物語

          【書籍紹介/海外文学】"香り"によって操られる群集心理(ショートバージョン)

          【書籍紹介/エッセイ】『テルマエ・ロマエ』ヒットの裏側で起こっていたこと(ショートバージョン)

          こんにちは。 なんだか最近寒いんだか暑いんだか、訳わからない気候になっていますが、皆さん体調いかがでしょうか?私はすっかりやられています。 体調が思わしくない日に濃厚な文学は胃がもたれるので、そういう時は軽めのエッセイにかぎります ということで、今回は初めてのエッセイの紹介になります。 今回もショートバージョンでお届けします。 『仕事にしばられない生き方』 ヤマザキマリ 某漫画の原作者が、実写化の問題を巡って自殺してしまった悲しい事件がありましたよね。 その漫画の読者

          【書籍紹介/エッセイ】『テルマエ・ロマエ』ヒットの裏側で起こっていたこと(ショートバージョン)

          【書籍紹介/文化人類学】「ヒップホップの起源ってモンゴルなんだよ」ショートバージョン

          最近本を読んでも記事を書く時間が無くてどんどんたまってきているので、思い切っていつもより文字数をガッツリ削って、ショートバージョンとして紹介していきたいと思います。 良く考えたら読む人も長すぎるとキツイですもんね。 今後ショートバージョンでは1500字は超えないように、気軽に書いていきたいと思います。 今回紹介するのはこれです。 『ヒップホップ・モンゴリア:韻がつむぐ人類学』 島村一平 文化人類学本です。新潟の本屋で偶然見つけました。 帯に「ヒップホップの起源ってモン

          【書籍紹介/文化人類学】「ヒップホップの起源ってモンゴルなんだよ」ショートバージョン

          【書籍紹介/海外文学】宦官の村から生まれた、独裁者の顔をした男

          しばらく映画レビューが続きましたが、書籍紹介に戻したいと思います。 すっかり季節も春めいて、桜も終わり、若葉が芽吹いて本当に気持ちいい気候になってきました。 そんな気持ちいい季節に読みたい、さわやかな作品を紹介したい……そう思っていたのですが、 思いがけず衝撃的な作品と出会ってしまったので、もうさわやかとか言ってられなくなりました。 今回紹介するのはこれです。 イーユン・リー 『千年の祈り』 イーユン・リーは中国系アメリカ人の女性作家で、作品は全て英語で書いているよう

          【書籍紹介/海外文学】宦官の村から生まれた、独裁者の顔をした男

          【映画レビュー】『ミスト』――映画と原作小説の比較、そこに描かれる善性

          こんにちは。 おいお前、スティーヴン・キングの映画しか観てなくない?と思われそうですが、一応いろいろ観てます。この前は『パシフィック・リム』観ましたよ。でも残念ながらNot For Meでした……。 それでなんかキング映画に戻ってきてしまったんです。 今回は前2作『ランゴリアーズ』『ザ・スタンド』に比べると知名度もそこそこある、パニック映画の金字塔のような作品です。 スティーヴン・キング 『ミスト』 今回初めて原作を読んでから映画を観たので、両者の違いなんかも記していけ

          【映画レビュー】『ミスト』――映画と原作小説の比較、そこに描かれる善性

          【映画レビュー】『ザ・スタンド』――ポストアポカリプト×聖書の物語

          またも映画レビュー、またもスティーヴン・キング原作です……。 この前観た『ランゴリアーズ』が面白くてキング映画の沼にハマりつつあります。 今回の『ザ・スタンド』も会社の人にDVDお借りしたんですが、後日映画の感想を伝えたところ、なんかその内容が物珍しかったようで、その場で似たような感想を発信している人がいないか検索しだしたりして……。 なんかそんな反応初めてだったんで、noteの記事にしてみようかなって気持ちになったんです。 とはいえ、おそらく大多数の人が見たこともない映

          【映画レビュー】『ザ・スタンド』――ポストアポカリプト×聖書の物語

          【書籍紹介/海外文学】何故みんな"バートルビー"で哲学するのか

          いよいよ春めいてきましたね。 いつの間にか山菜が終わりかけてて、ふきのとうを食べ損ねたM.K.です。 だんだん暖かくなってきて、夜の時間も石油ストーブの前で震えなくても済むようになりました。 ガウンを羽織ってソファに寝そべって、照明をちょっと落として、読書をしたり映画を観たりといった日々を過ごしています。 そんな早春の夜にぴったりな、ペーソスに満ちた純文学と、その評論はいかがでしょうか? ジョルジョ・アガンベン『バートルビー 偶然性について』 この本は、ハーマン・メルヴ

          【書籍紹介/海外文学】何故みんな"バートルビー"で哲学するのか

          【映画レビュー】古さも低予算も気にならない至高のパニック映画!

          人生初めての映画レビューです。 先日お昼休みに会社の先輩とスティーヴン・キングで盛り上がったんですが、 後日その方がおすすめ映画のDVDがたくさん入ったケースを貸してくれました。 1990〜2000年代の古めの映画が中心なのですが、これが意外と面白くて。 それで居ても立っても居られず、記事を書こうと思い立ったのです。 今回語りたいのが、『スティーヴン・キングのランゴリアーズ』です。 スティーヴン・キングの記事が続いちゃいますがご容赦ください。 以下、概要です。 あらすじ

          【映画レビュー】古さも低予算も気にならない至高のパニック映画!

          【書籍紹介/海外文学】スティーヴン・キングが授ける創作手法

          noteを始めてから、ここで創作活動されている方が意外と多くて驚きました。それも、例えば「エブリスタ」や「小説家になろう」といったプラットフォームよりも、ハードで純文学に近い作品を創作されている方を多くお見受けします。なんかブログや近況報告に交じってひっそりと創作小説があるの、ちょっといいですよね。好きです。 私もゆくゆくはそんな風に短編や連載をnoteに載せてみたいのですが、まだ修行中というか、完全にジャンル小説でいっていいのか、いくとしたらSFか、時代小説か……みたいな

          【書籍紹介/海外文学】スティーヴン・キングが授ける創作手法

          音楽遍歴

          こんにちは。一足早く春が来たと思ったら、また雪が積もって調子が狂いっぱなしのM.K.です。 最近よく聴く音楽の話をしたいだけなんです、それだけのために記事を書こうとしています。人の音楽の趣味とかマジでどうでもいいと思うのですが、でも改めて考えてみると、好きな音楽のジャンルがガラッと変わる瞬間、なかったですか? あの瞬間って、やっぱり不思議だなと思うのです。 それまで好きだった音楽がなんか色あせて聴こえて、新しい音楽がめちゃくちゃクレバーで良く考えられていてオシャレに聴こえる瞬

          音楽遍歴

          【選書】ノンフィクション山岳小説ベスト5

          誰にだって何にだって「初めて」の体験はあって、忘れ難いものだと思うが、私にとって山岳小説の「初めて」は、ジョン・クラカワーの『空へ』だった。 これは1996年のエベレスト大量遭難事故を扱ったノンフィクション小説で、のちに映画化もされたベストセラーだ。 当時、世界最高峰エベレストの登攀を、複数の登山隊が狙っていた。アドベンチャー・コンサルタンツ遠征隊、マウンテン・マッドネス遠征隊、IMAX/IWERKS遠征隊、台湾隊、ヨハネスバーグ『サンデー・タイムズ』遠征隊、アルパイン・ア

          【選書】ノンフィクション山岳小説ベスト5